簿記検定から会計士試験へ! ステップアップする人の「計算力」強化法


【編集部より】
この春から公認会計士試験の受験勉強を始めた方の中には、まずは簿記3級から勉強中という受験生も多いのではないでしょうか。知識ゼロから簿記3級の勉強を始めると、はじめは雲をつかむようですが、だんだん全体像が見えてくると勉強が楽しくなってきます。その一方で、簿記3級の学習範囲であれば、丸暗記で乗り切ってしまうという人もいるでしょう。
では、そんな簿記3級から公認会計士試験にステップアップする場合、学習方法に違いはあるのでしょうか。最終ゴールである公認会計士試験を見据えて、はじめのうちから知っておきたい学習の心構えをTAC講師の槇 和樹先生(公認会計士)に教えていただきました。
公認会計士試験だけでなく、より上位級を目指す人や税理士試験を目指す人にもヒントが満載です。

簿記3級と公認会計士試験の学習に違いはある?

結論から言えば、簿記3級と公認会計士試験で求められている学習は「同じ」だと考えています。

それは、「繰り返し問題演習をして基礎を身につけること」、「自らの言葉で説明できるように理解をすること」の2つのポイントです。ただし、難易度や範囲に大きな違いがありますから、これらのポイントがクリアできていなかったとしても、簿記3級には合格可能な場合もあるでしょう。

難易度が上がるにつれて、誤魔化しはだんだんきかなくなっていきますので、講義の受け流しやなんとなくの理解では、いつか限界を迎えてしまいます。そのため、簿記3級の学習を終えた後、公認会計士試験などへの挑戦を考えている方は、上記2つのポイントにこだわるようにしてください。

計算が得意になった私の実践方法

「簿記3級はとても簡単で、覚えてしまえば誰にでもできる」といった話は、私も簿記の学習を始めた頃から聞くことがありました。事実、簿記1級や公認会計士試験に比べれば、そういう面もあるかもしれません。しかし、簿記の学習を行う上で大切なことを「意識」することはスタート時から可能です。

実際に私自身が実践していた方法は、以下のとおりです。

①ステータス管理を実施する

基礎を身につけるために繰り返し問題演習を行いますが、その際に「ステータス管理」の実施を忘れないようにしていました。

たとえば、各例題やトレーニングのあいているスペースに、「解いた日付」とその際の「解答の出来具合」をA・B・Cでメモします(下記の画像参照)。

これによって、最後にいつ解いたのか、繰り返し解き直す必要があるかなどを瞬時に確認することができるようになります。

②スキマ時間に自分ができていない箇所を洗い出す

電車の移動中には理論科目の勉強をする方が多いですが、私自身は計算科目を勉強することが多かったです。理論の学習は苦手だったため、周りに人がいる環境では集中力が続かなかったことと、単純に眠くなって寝てしまうこともあったからです。そのため、得意な計算科目をスキマ時間で実施し、自分が出来ていない箇所を洗い出す作業の場にしていました。

また、自らの言葉で説明できるよう理解するために、意識していたことがいくつかあります。具体的には、「例題を見た瞬間に下書きが頭に浮かび、本問からどのような箇所が本試験では問われるかを説明できること」、「過去に自分がミスしてしまった箇所を含めて、この問題の注意すべき点を頭に浮かべられるようにすること」などです。

移動中の学習では電卓を使用したり、下書きを書いたりといったことは難しいですが、「頭に浮かべること」であればどこでも実施できます。そして、気になった点や悩ましい箇所がある場合にはスマホ等にメモを入れておけば、机に向かって学習する際に、気になる箇所の問題演習にピンポイントで取り組むことができます。

もし移動中のスキマ時間の活用に迷っている方は、一度、理論ではなく計算学習に切り替えてみるのもいいかもしれません。

私が公認会計士を目指したきっかけ

「公認会計士になりたい!」

私がそう思ったのは、高校3年生の頃でした。高校のOB講演で、「年収が高い」「モテる大人になれる」「いい家に住める」といった話を聞き、単純に目指してみたいと思ったのです。

ただ、公認会計士がどのような仕事をするのか、そもそもどのような勉強をすればよいかなどは何も知りませんでした。当時はまだ将来やりたいことが明確ではなかったので、少しでも惹かれる仕事であれば何でもよかったのかもしれません。

幸い、私の高校では3年生になると選択科目として自分で授業を選ぶことができる時間があり、そこで簿記3級を学ぶ機会がありました。数学や英語のような授業と異なり、ビジネスに直結する勉強ははじめてだったので、非常に楽しく簿記の基礎を学ぶことができました。

こうして簿記3級を楽しく、しっかりと学ぶことができたことは、私自身、公認会計士試験の受験時代に財務会計論がもっとも得意になるきっかけになっていると思います。そして、それが現在、財務会計論(計算)の講師としての活動にもつながっています。そういった意味で、高校の先生には感謝しかありません。

少し余談を交えましたが、それほど簿記3級はいろいろな意味で土台となる大切なスタートラインなのです。

試行錯誤しながらたどり着く方法

公認会計士試験の勉強開始時から、効率的かつ効果的な勉強を行うことができる受験生は、本当に一握りでしょう。多くの受験生は、試行錯誤しながら自分にとって最適な学習を探していきます。

勉強方法を失敗したりしながら、効率的かつ効果的な勉強にたどり着くと思います。資格のステップアップにより量の多さに圧倒される方も少なくありません。

ただし、量が増えて難易度が上がったとしても、「繰り返し問題演習を行って基礎を身につけること」、「自らの言葉で説明できるように理解をすること」が大切であることは変わりません。試行錯誤しながらも、これらのポイントを計算学習の際には意識して取り組んでみてください!

<執筆者紹介>

槇 和樹(まき・かずき)

公認会計士
2014年の公認会計士試験に合格後、TAC公認会計士講座で講師をしつつ、様々な実務を経験。監査業務や上場企業の経理業務を行う中で、よりお客様に近い立場で知識を活かしていきたいと考え、税理士法人の立ち上げに参画。現在は講師業を中心に税務業務を行う。 趣味はお酒、洋服、旅行、サッカー、ゴルフ。


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