春からの会計系資格スタートガイド:USCPA・前編

USCPA

【編集部より】
新年度がスタートし、勉強意欲が高まっている人も多いのではないでしょうか。ビジネス雑誌などでも「資格」のテーマはよく取り上げられており、会計系資格も根強い人気があります。
そこで、「この春から会計系資格の取得を目指して本格的に勉強を始めたい!」という人のために、会計人コースWeb版スタートガイドとして、各検定・資格に詳しい方にアドバイスをいただきました。
USCPA(米国公認会計士)については、立命館大学経営学部教授の西谷順平先生にナビゲートをお願いしました。2024年1月から新しい試験制度が開始することもあって、ますます注目度が高まっている資格なので、この記事を参考にしてよいスタートダッシュを切りましょう!

こんにちは、立命館大学経営学部のPepe先生こと、西谷順平です。

西谷ゼミでは、国際人材の育成という教育目標を掲げ、アメリカの公認会計士(アメリカでは単にCPAと呼ばれますが、日本ではUSCPAや米国公認会計士と呼ばれたりしています)資格試験を通した会計と監査およびその周辺知識の教育を行なっています。アメリカの資格試験予備校(アメリカではReview Courseと呼ばれています)の教材を利用して、大学内で本格的にUSCPA教育を行なっているのはまだ日本では珍しいスタイルかもしれません。

しかし、アメリカではもちろん一般的なことですし、日本の大学でも今後、新しい会計教育、国際教育の形として普及していくことになるでしょう。

立命館大学経営学部教授・西谷順平先生

シンガポールで働くUSCPAの先輩を見て、モチベUP↑

実は、この記事を書いている数日前にシンガポールへのゼミ旅行から帰ってきたところです。シンガポールゼミ旅行は(コロナで3年間実施できませんでしたが)毎年の恒例行事です。

今回のメインイベントは、日系グローバル企業においてUSCPAの資格をもって国際的な財務や経理の現場で活躍するゼミの先輩ならびにその同僚の方々を訪問することでした。

「アフリカから(日本を除く)韓国までが守備範囲」などと(英語で)語る先輩を間近に見て、現役ゼミ生たちの勉強と就活へのモチベーションはグッと上がったように感じました。

USCPAの勉強そのものが高評価&就活が有利になるケースも

USCPA教育を受けた学生は、合格して日本の監査法人に就職する学生が一部いるものの、基本的にはグローバル企業やコンサルティング会社を目指します。もっとも、USCPAの受験勉強はそれなりにハードですので、勉強半ばで卒業して社会人となっていく学生も多く、また、就活せずに浪人(?)し、合格してから(あっという間に内定をとって!)就職する人もいるのが実情です。

とはいえ、USCPAの資格そのものはもちろん、その教育を本格的に受けたという経験自体が、企業から高く評価されているようで、学生たちは世間一般でいう優良企業にみな就職できています。

逆に、勉強半ばで高く評価され優良企業に就職できてしまうために、内定をもらってから受験勉強へのモチベーションが落ちてしまうのがゼミの課題となっているほどです(もっとも、就職して数年経つと、USCPA資格の重要性に改めて気づき、再び勉強をする人も多いようです)。

USCPAが企業に評価されるのはなぜ?

なぜこんなにUSCPAが高く評価されるのかというと、それはもちろん、高度に発達した金融市場を抱える資本主義の本場、アメリカのプロフェッション(専門職)、公認会計士の資格だからです。その資格を取得した(勉強した)ということは、最先端の実務や制度についての知識を広く理解している人材であることの証明になるわけです。

例えば、日本の公認会計士試験と異なり、ITについての知識が複数の科目をまたいで出題される点が象徴的でしょう。また、受験資格がまったく問われない日本の公認会計士試験とは異なり、大学における会計を含むビジネス系単位の取得が受験資格として求められ、合格後もライセンスを取得するためには(通常なら)大学院教育まで想定される150単位が求められるなど、高等教育機関でビジネス教育をしっかり受けた証明が必要になるのも特徴的です。

さらに、日本においては、一般教養的な英語力を示す英検(実用英語技能検定)やTOEIC®とは一線を画す、専門性をもった英語能力を示す資格としても評価されているようです。

ビジネス界では広く知られる「能力証明」の資格

もっとも、「海外で働くならともかく、日本で働くのにアメリカの公認会計士資格だけをとっても意味がないのでは?」と批判されることもあるようです。

しかし、独占業務がないという点では、ビジネス系の資格でいうと中小企業診断士や日商簿記検定1級も同じですし、逆に日本の公認会計士資格を取得しても独占業務である監査をやらずに一般企業やコンサルティング会社で活躍している人もたくさんいます。

その点、USCPAもこれらの資格と同様に日本において広く認知された「能力証明資格」として考えれば良いのではないでしょうか。実際、すでに紹介した通り、私のゼミ生たちも優良企業に就職していますし、転職する際もかなり有利だと聞いています。

USCPAはスーパーカーのようなもの

ドイツのアウトバーンにいけば、フェラーリなどの外国製のスーパーカーが時速300km以上でかっ飛ばしています。でも日本では、スーパーカーも法定速度を守って走っていますよね。USCPAの資格としての魅力、あるいは、USCPAを取得した人材の魅力は、スーパーカーのように秘められた海外での潜在能力にこそあると私は思っています。

実際、「日本でスーパーカーに乗っても意味がない」と批判する人たちはいますよね。でも、その性能は否定しようがなく、気になる存在であることは確かでしょう。もしかしたら、お金(英語力)がなくてスーパーカー(USCPA)に手が出ないのをやっかんでいるだけなのかもしれません。
もちろん、外車が日本の公道を走るためには、日本仕様にしなければならない部分があるように、USCPAをもって日本で働こうとするなら、日本の会計実務や制度についての知識や経験が必要とされることは確かです。

しかし、だからこそ、日本の大学で教育を受けた人や日本の企業で働いた人が就活や転職をする際には、「日本で走れる外国製スーパーカー」としてのUSCPAの魅力が、海外よりも一層、引き立つのではないでしょうか。


今回は、USCPAを日本で取得する意味とその魅力についてお伝えしました。
次回は、試験制度や受験をめぐる環境についてお伝えしようと思っています。

USCPAの先輩の話を聞きに、シンガポールへ行った西谷ゼミ

【この記事を書いた人】
西谷順平(にしたに・じゅんぺい)
立命館大学経営学部教授。防衛調達審議会委員(防衛装備庁)、株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス社外取締役などを兼任。立命館大学の公認会計士教育プログラムを開発し、合格者ランキング上位常連校に導いた。現在は、大学カリキュラムとしてのUSCPA教育プログラムを開発中。主な著書に『新版 財務会計の理論と実証』(共訳、中央経済社)、『保守主義のジレンマ』(単著、中央経済社)など。


関連記事

ページ上部へ戻る