<編集部より>
会計人コースWebでは、会計士・税理士・簿記検定を中心に勉強法を取り上げていますが、「どんなやり方が自分に合っているの?」とまだまだ模索中の人も多いハズ。
そこで、今回は「他資格から勉強法のヒントを学ぼう」ということで、宅建試験の超人気講師・吉野哲慎先生(吉野塾代表・写真)と令和4年度宅建士試験になんと公立中学に在学中の14歳(中学2年生)で合格したりおさんに対談をしていただきました。りおさんは、吉野塾のパーフェクト合格コースや直前必勝講座等を受講し、42点で合格されました。
前編では、中学生で宅建試験にチャレンジした理由と実践したアクティブ・リコールについてお話いただきます(吉野塾のインタビューの様子はこちら)。
中学生で宅建を受験した理由
吉野先生 中学生で宅建を受験したきっかけは?
りおさん お母さんが法律系の資格の勉強をしていて、それを見て興味を持ちました。小学生の頃、お母さんが通っていたスクールで「子ども法律」という形で教えてもらっていたのですが、中学生になってから形になるものが欲しくて宅建受験を決めました。
吉野先生 お母さんが真剣に勉強している姿がかっこよく見えたのでしょうね。実は、私の母も私が小学生時代に司法試験を受験していました。
傍目に見て「大変そうだな」と思っていたので、私の場合、逆に法律資格への挑戦に消極的になりましたが…。その点はどうでしたか?
りおさん そもそも「法律が難しい」ということを知らなかったので抵抗はありませんでした。小2のころ、お母さんが講座に欠席分の代替DVDを家で見ていて、「お母さんと一緒にテレビを見よう」という感覚でした。その時見たのは、たしか民法だったのですが、「ちょっと面白いかも?」と思いました。
検索エンジンとお友達になるくらい調べながら勉強
吉野先生 大人でも法律用語は難しいと思うけれども…。宅建試験に違和感はなかったのでしょうか?
りおさん 小学校の時の「子ども法律」で、かみ砕いて教えてもらっていたので違和感自体は少なかったです。ただ、「子ども法律」は憲法や民法が主で内容もあっさり目でした。
宅建業法など宅建独自の法律や、踏み込んだところは検索エンジンがお友達といっていいほど調べました。人生経験がないから「登記」とかわからなくて。
吉野先生 たしかに、中学生で「登記」と言われても、ピンとこないですよね。そういう時には「グーグル先生」ですね。
「わからなければ調べる」というのは大事だと思いますが、意識してやっていましたか? それとも、はじめから習慣がありましたか?
りおさん はじめからですね。わからないことを放置しておくのが嫌なんです。
わからないときは、いつも調べたり、人に聞いたりしています。ただ、宅建に出てくる法律や不動産のことを知っている人が周りにいなかったので、「グーグル先生」頼りでした。
吉野先生 そういった、能動的に学習するアクティブラーニングは、吉野塾でもおすすめしています。りおさんはその姿勢がもともと身についていたんですね。
理解するまで調べたり聞いたりするのは時間がかかって大変だから「暗記しちゃえ!」ということにはなりませんでしたか?
りおさん 登記法や宅建業法35条、37条など項目が多いものは大枠を暗記しました。細かいところは数が多すぎるので暗記ではなく問題を解いて理解をするようにしていました。
項目が多くて何がどこにあるかつかめないときは暗記に頼るのがいいのかなと。
吉野先生 それはよい勉強法ですね。宅建試験では、暗記しないとどうにもならない部分があります。その暗記するかどうかの判断はどう身に付けましたか?
りおさん 宅建試験を受けた1年目は、民法も宅建業法もわからず、試験をカンで解いていました。ちゃんと暗記しないと駄目なんだなと思いました。
吉野先生 暗記はどうやってしていましたか? 中学校で流行している暗記グッズとかはありますか?
りおさん 今も昔もあまり鉄板の勉強道具は変わっていないと思います。赤下敷きとか、単語帳とかを皆使っていますね。
アクティブリコール
吉野先生 りおさんは色々勉強法を工夫されていたと聞きました。具体的にはどんな勉強をされていたのでしょうか。
りおさん 「アクティブリコール」を意識して勉強しました。早稲田に首席で入ったブレイクスルー佐々木さんという方が、YouTubeで紹介されていて知りました。まずは定期テストに使っていて、その後宅建試験の勉強に活用しました。
勉強法を試行錯誤するのは好きで、河野玄斗さんのYouTubeとかもよく見ます。
吉野先生 具体的にはどのように使いましたか?
りおさん 能動的に思い出すという勉強法です。テキストを見ているだけでは「受け取る側」なので、あまり身につきません。
そこで、問題を解くことを繰り返します。テキストをざっと見て、問題を解く。そして、問題で理由付けができないところに「できない」と書いておいて、テキストを読みます。
テキストに書いてあれば、その部分に線を引きます。書いていない内容であれば、テキストに書き込みます。これを間違える問題がなくなるまでやります。
吉野先生 「出るとこ」テキストはどう使ってくれた?
りおさん アクティブリコールとして間違えたところに線を引きました。3回間違ったら弱点ノートに書くようにしていました。そして、できる限り目に入るところに置いておき、気になるたびに見ました。
吉野先生 過去問は何週くらいやりましたか?
りおさん うーん、私は追い込まれないとやらないところがあって、宅建試験日のある10月に入って漸くスイッチが入りました。なので、1番多くても5回ですね。
真面目に解いたのが10月になってからでしたが、3回以内で身についているのでそんなに間違えませんでした。2回目では半分以上正解できました。
吉野先生 それは、1回目の学びをとても丁寧にやっているからだと思います。一般の受験生はもっと周回していますね。
りおさん 宅建試験1年目の失敗として「テキストを読まなかった」ことがあります。過去問の正誤にとらわれてしまって、本質を理解できていなかったと思います。
吉野先生 択一試験で、正誤判断だけに意識が集中してしまい、本質的な理解が疎かになってしまうのは、受験生「あるある」ですね。
合格した時の周囲の反応など
吉野先生 宅建試験に合格して、周りの反応はどうでしたか?
りおさん 学校の先生方からほめていただきました。担任の先生や私が受験していることを知っていた去年の担任の先生も喜んでくださいました。本が好きで、図書室の先生にいつもオススメの本を伺ったりしているのですが、今度私が合格体験記を書いた本が出版されると言ったら、「図書室に置く!」と言っていました。
友達は…全然知らないですね(笑)。「宅建=不動産屋で長い話をしている人」くらいの感じでしょうか。
吉野先生 『宅建士出るとこ集中プログラム』を置いていただけるのは嬉しいですね(笑)。りおさんは読書家と聞きましたが普段はどんな本を読みますか?
りおさん うーん、私よりいっぱい読んでいる人はたくさんいるので、そんな読書家というわけではないです。短編集やミステリーを借りて読んでいます。東野圭吾さんとか、恩田陸さんとか、辻村深月さん、中山七里さんとか…。図書室の先生におすすめされた「和菓子のアン」も面白いです!
最近は将来の就職や生き方の本、大人になるまでに知っておきたいことなどの本も読みます。趣味に関係するものももちろん読みますね(笑)。
吉野先生 学校生活との両立は大変でしたね。
りおさん 宅建試験前は正直学校の勉強が疎かになっていました。幸い宿題もあまりなくて…。また、学校の勉強自体は通信教育のz会で先取りしていたのであまり問題ありませんでした。部活は1年生の頃から宅建を受けると決めていたので入っていません。
吉野先生 合格した時の気持ちはどうでしたか?
りおさん 試験が終わったとき、絶対落ちたと思いました。採点して「落ちてないじゃん!」とほっとしましたが、今も実感がありません。未成年なので宅建士の登録もできないですし(笑)。大人だったら転職とか起業とかに生かせるのかもしれませんが…。
吉野先生 大人になるのが楽しみですね!
後編に続く
【略 歴】
吉野哲慎(よしの・てつのり)
「吉野塾」塾長。株式会社アリード代表取締役,中央法務事務所司法書士,日建学院講師。宅建ストアーズ吉野塾のご利用者数は毎年1万名超。大手金融機関や大手企業,大学等での研修講義・セミナーも数多く経験。年間の研修講義・セミナーは500時間を超える。著書の『宅建士出るとこ集中プログラム』『宅建士出るとこ10分ドリル』(中央経済社)は、シリーズ累計3万部超。