𠮷田 延史(公認会計士)
11/18の会計士試験合格発表、11/30の税理士試験合格発表を受けて、就職してこれからはじめて会計の実務に携わる方も多いと思われます。
また、年明けから春にかけての就職・転職シーズンではじめて実務に携わるという方もいるでしょう。
そうした中、自分が果たしてやっていけるのか不安を感じている方もいると思います。
そこで、先日弊社より『フローチャートでわかる経理・財務現場の教科書』を刊行いただいた𠮷田延史先生(仰星監査法人パートナー・公認会計士)に、はじめて会計実務をする際に身につけておきたい知識や心構えについてお話を伺いました。
主に実務初心者を対象にしていますが、経験5年目ぐらいの方にも十分有益な内容です!(編集部)
実務初心者の心構え
―これからはじめて実務につくという方が、心がけておくべき点はどんなことでしょうか?
𠮷田 まずは、皆さんとおなじ会計業界で働けることをうれしく思います。
会計業界は非常にやりがいのある仕事ですので、ぜひともに発展させていければよいですね。
さて、会計士試験・税理士試験を受験されてきた方は、一人で勉強して知識を身につけるという能力は十分についていると思います。
しかし、実務は当然ですが机上の勉強だけではできるようにはなりません。
ですので、はじめて実務につく際には、ファーストステップとして以下のことを心がけましょう。
- 先輩の話をよく聞く
- 先輩とクライアントの会話をよく聞く
このように「話をよく聞く」ことを心がけると、業務への理解が進み、またスピードも早いと思います。
この点は、特に受験勉強をしてきた方は意識の切り替えが必要な点ですね。
―コロナ禍の影響でリモートワークも多かったりしますが、その場合はどうすればよいでしょうか?
𠮷田 私の所属する法人もコロナ禍当初は完全にリモートでした。
リモートは、ある程度経験を積んだ人には非常に便利ではありますが、経験のない人は上記のように先輩やクライアントの話を聞く機会が大きく減少してしまい、成長の機会が失われるのではないかということになり、現在では特に1年目は一人で仕事をしない環境になるような体制を整えています。
つまり事務所に来て先輩と一緒に仕事をする、またはクライアントに同行するようにして、極力一人で仕事をすることがないようにしています。
ですので、リモートワークが多い場合も、意識して先輩方と一緒に仕事をするようにしたいところです。
これから就活をするという方は、自分の実力をUPさせるという視点からは、この点は選択のポイントにするとよいかもしれませんね。
実務を行う際身につけておきたい知識とは?
―知識面でこれから身につけていくべきことは何でしょうか?
𠮷田 実は受験勉強は実務に直結しています。私自身、たとえば受験時代に身につけた分配可能額の計算などは入所2-3年目でとても役立った記憶がありますね。
とはいえ、実務を行ううえでは必要とされる知識は多く、当然私も苦労しましたが、振り返ってみるとある程度パターン化していることに気づきました。
たとえば、単体の実務は、「販売プロセス」、「原価・購買プロセス」、「固定資産管理プロセス」・・・・・・など各プロセスに分かれて行うことが多いですが、その大枠は多少企業によって差はあるものの、決まっています。
連結についても、スケジュールを決めて、財務諸表の単純合算→相殺消去→連結金額の確定という大枠のプロセスはどこも共通ですね。
ですので、まずはプロセスの大枠を理解するとよいと思います。
今回出版した書籍では、どの企業にも共通し、かつ私が「もっと早くこのことを知っていれば・・・・・・」、「こういう方法もあったのか」と苦労した知識を1つでも多く思い起こして書いていますので、ぜひ参考にしてください。
本書『フローチャートでわかる経理・財務現場の教科書』の具体的な活用法は?
―本書は具体的にどのように活用するとよいでしょうか?
𠮷田 本書は全体の流れを重視して、そして細かい論点の数値例を含む詳細な解説はあえて割愛してボリュームを抑えているので、まずは半日~1日でざっと読んでいただければと思います。
その後、実務で直面した問題について、その都度振り返って復習するとよいでしょう。
自社と異なる点もあるかもしれませんが、一般論を押さえることは非常に重要です。
たとえば、「販売プロセス」については、実際の売上や入金の会計処理に至るまで、さまざまなプロセスを経る必要があります。
自分の担当部分だけでなく、他部署とのかかわりなど一連の業務フローを正確に把握することで適切な実務が行えるようになるでしょう。
たとえば会計士試験合格者の方は、監査法人等に入所し、はじめて携わるのは資金管理、給与計算、経費等が多いと思いますので、まずは本書の第4章~第6章をしっかり理解するとよいのではないでしょうか。