3つの「ミス分析」で”計算力”を高めよう!


平林 黎(TAC会計士講座講師)

【編集部より】
令和5年合格を目指す会計士受験生にとって第一関門となる第Ⅰ回短答式が12月11日(日)に行われます。直前期に入り、実戦的な悩みが増えているかもしれません。
また、税理士受験生や令和6年合格を目指す会計士受験生にとっては、「どうすれば”計算力”を高められるのか」は基礎期の今だからこそ考えたいテーマ。そこで、TAC講師で多くの受験生から相談を受ける平林先生にアドバイスを頂きました。
短答式本番を目前に控える会計士受験生はもちろん、税理士受験生や簿記検定受験生にも計算力向上のヒントが見つかるはずです!

問題を解いたら「分析モード」へ頭を切り替えよう!

12月短答を受験される方は、各種答練が始まり、不安や焦りが強くなってきている時期かと思います。
計算科目については、まだまだ定着不足の論点があったり、制限時間の厳しさもあいまって、思うように点数が伸びないという受験生が多いはずです。

周りと比べて気分が沈むこともあるかもしれませんが、合格者のほとんどは、本試験までに「山ほど」間違えて、その都度なんとか食らいつき、諦めずに分析・修正をし続けた方達です。
答練等での点数は、あくまで途中段階でのフィードバックにしか過ぎません。

本試験での得点最大化のため、問題を解いたら頭を「分析モード」に切り替えて、試験前・試験中の行動を振り返りましょう。

計算のミス分析について、学習相談・ホームルームなどで私がお伝えしている主なポイントは以下のとおりです。学習をスタートされたばかりの方も、参考にしていただければと思います。

以下、主な原因についてそれぞれ解説していきます。

1.インプット不足(覚えていない、メンテナンス不足)

普段テキストにあまり戻らず、間違えた箇所だけピンポイントで確認している場合、得意な論点ほど、実は基礎知識が抜けていることがあります。

問題を解いたら、「周辺知識が想起できるか?」を試して、テキスト等でざっと確認してみましょう。

例えば、満期保有目的の債券・利息法に関する問題を解いたら、
・定額法の場合に異なるポイント
・売買目的有価証券/その他有価証券/子会社株式及び関連会社株式に関する期中・期末処理(減損含む)
・P/L・B/S区分
さらに、
・外貨建の場合の処理
・外貨建その他有価証券に属する債券に関する換算差額の容認規定、まで想起してみましょう。

もし詰まるところがあれば、仮にその問題が正解できていたとしても、まだ論点を体系的におさえられておらず、少しひねられると解けなくなる状態かもしれません。

テキスト目次を見てどんな論点があるか思い出したり、理論のテキストと一緒に復習するのも効果的です。

2.時間切れ(時間配分ミス、スピード不足)

問題用紙を全体的に2周する

基本的に、会計士試験の短答式・論文式ともに、計算問題を解き切れることはほとんどありません。
本試験での得点最大化のためには、試験中の時間配分・立ち回り方が重要です。
特に、短答式の管理会計論は時間の制約が厳しく、臨機応変な対応が必要となります。

短答式試験でのポイントは、計算部分について「問題用紙を全体的に2周はしよう」という意識です。「問1から順に着手して、急いで1周解き終わる」のではなく、「一旦飛ばす」「粘り過ぎない」「全問を解き切らなくていい」と考えて取り組んでみてください。少し気が楽になると思います。

状況整理に数十秒かける

問題を解き進めるかどうかは、「パッと見」による判断ではなく、数十秒掛けて、状況を整理してみましょう。
「なんだか難しそうな指示があるけれど…選択肢で絞れる!」という意外と簡単な問題もあります。

解答プロセスに不明点がない問題であっても、作業量が多ければ、「これはキープ問題だな」と一旦飛ばして、2周目で取り組みましょう。

自習時から、解答所要時間の見積りを試してみてください。
最初はなかなか上手くいかなくても、徐々にできるようになってきます。

慌てない・執着しない・熱中しない

ごく簡単かつ作業量も少ないものは、正確性を意識しつつ、1周目で仕留めていきましょう。
ただし、「簡単なはずなのに、数字が合わない…!」という問題が、おそらく本試験当日も1問はあるはずです。
慌てず、執着せず、次へ進みましょう。

集中力がある受験生の方ほど、時間を忘れて熱中してしまいがちです。
解き始める前に毎回時計を見るのもよいですね。

計算処理を即座に思い出す

私も経験がありますが、電卓の打つスピードを無闇に速めると、計算ミスで手戻りが生じ、かえって時間を失います。
物理的な素早さよりも、問題文から論点を把握したら計算処理が「即座に」思い浮かび、自信を持って解き進められる状態を目指しましょう。

下書きについても、先を急いで省略し過ぎると、やらかしミスに繋がります。
答練等を通じて、《正確性》と《スピード》のちょうど良い塩梅を徐々に掴んでいきましょう。

3.やらかしミス

解く際の行動・作業プロセスを淡々と整備

「なぜこんなしょうもないミスを…」
「ついこの間も同じミスしたのに…」と、
自分を責めたくなるかもしれませんが、本試験当日は極度の緊張状態にあるため、「次こそは注意しよう」という意識付けだけでミスを防ぐことは難しいです。

「なるほど、焦るとこういうミスが起きるのか」
「途中でこの作業プロセスを入れてみよう」
「これでも足りなかったか、そしたら次は…」と、
自分の傾向を分析して、対応する内部統制を淡々と整備していきましょう。

やらかしミスの具体的な対策

「自分はミスが多過ぎて、会計士に向いていないのでしょうか…」と意気消沈していた受講生の方が、後日笑顔で「一つ一つ対策を試してみたら、最近なくなってきたんです!」と報告に来てくださるのは、講師として嬉しい瞬間の一つです。
しばらくはもぐら叩きのように際限なく感じるかもしれませんが、合否に直結するような大きなミスは起きなくなってきます。

下記の「やらかしミス 原因と対策例」一覧も参考にどうぞ。

以上、計算ミス分析の主なポイント3つをご紹介しました。

本試験1ヶ月前までずっと総合点数4~5割だったけれど、答練後の分析と最後の詰め・ピーク合わせを行って逆転合格、という方が毎年多くいらっしゃいます。

現時点ではまだ合格レベルに達していない場合であっても、気持ちを切らすことなく、インプット面・アウトプット面(時間配分/やらかし)の強化に取り組んでいきましょう。徐々に手応えが変わってくるはずです。

比較的点数が取れている場合、油断せず、試験中の行動の振り返りや定期的なメンテナンスを行って、守りを盤石に固めていきましょう。

12月短答を受験される方は、これから精神的にも体力的にもハードな時期に入ります。

体に気を付けて、周囲にも頼りつつ、対策を進めていただければと思います。健闘を祈っています!

<執筆者プロフィール>

平林 黎(ひらばやし れい)
TAC会計士講座講師(財務会計論-理論、個別成績/学習方法相談、質問対応、各種ホームルーム担当)。
1986年生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。体調を崩し、会計士受験を一度撤退。
2014年独学で保育士資格取得。
2016年公認会計士2次試験に合格し、現職。
2020年以降、オンラインでの相談対応・セミナーを開始。
Twitter(@hirabayashi_tac)やLINEで受講生向けの情報発信を行っている。


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