<編集部より>
会計人コースWebでは、会計士・税理士・簿記検定を中心に勉強法を取り上げていますが、「どんなやり方が自分に合っているの?」とまだまだ模索中の人も多いハズ。
そこで、今回は「他資格から勉強法のヒントを学ぼう」ということで、行政書士受験のレジェンド講師・横溝慎一郎先生(LEC専任講師・写真左)と令和3年度行政書士試験に一発合格した山本絢香先生(行政書士・写真右)に対談をしていただきました(全3回)。
今年の行政書士試験は11月13日(日)に実施される予定で、今はまさに超直前期。第2回の今回はスマホやSNSの活用、試験直前期の過ごし方についてのお話です。
暗記とスマホの活用
横溝先生 前回、「細かいところを覚えるのは直前期」と言っていましたけど、普段の理解する勉強の時と、色々な細かい知識を暗記する時とでは、勉強の仕方で何か工夫していましたか。
山本先生 私は、A4用紙などに大事なところだけを書き出して、それをスマホで写真に撮って「暗記フォルダ」という名前を付けたフォルダに入れて、空いている時間に見るようにしていました。
テキストや本ってどこでも持ち歩けるわけではないですし、何冊にも渡ってしまうと普段のちょっとした空き時間でなかなか見られないので、テキストに書いてある大事な数字や用語だけを写真に撮っていました。
スマホだと、寝ながらでも見られますし、移動時間でもチェックできるので、とにかく空き時間を有効活用することを心がけていました。
横溝先生 スマホを使うのはいいですよね。少しなら書き込みもできるもんね。
受験勉強とSNSの活用
横溝先生 山本さんはSNSでも発信をしていますが、受験勉強の時にSNSの使い方で気を付けていたことや役立ったことは何かありますか。
山本先生 2つありまして、1つ目は、私はまず、行政書士試験に合格したら、Twitterアカウントを「行政書士としてのアカウント」として使っていきたいと考えていました。
なので、日々ツイートする内容も気をつけて、ただ「勉強した」と文字だけで書くよりも、勉強した量がわかるようにテキストの写真を撮って一緒に載せたほうが、インパクトがあるので、どうせつぶやく時間があるのであれば、一手間加えて色々な方から見てもらえるるようにということは意識していました。
あとは、模試や答練の点数も公表していたんですよ。
それで自分にプレッシャーをかけて、「次もこれは落とせないぞ」みたいな感じで原動力になっていました。
横溝先生 フォロワーからの反応はありましたか。
山本先生 はい、開業する前にはかなりのフォロワー数になっていたので、今はそのまま自分の事務所のアカウントとして使うことができています。
横溝先生 受験勉強の話題を発信していたSNSはTwitterになるのですか。
山本先生 そうですね。私は全SNSをやっているんですけど、それぞれを使い分けていまして、中でも士業が多いのがTwitterだったので、それを士業アカウントとして特化して使っています。
横溝先生 なるほどね。なんだかんだ言っても、中には好意的なものもあれば悪意を感じられるリプライも来るんだろうと思いますが、そんな時の対処法って何かありますか。
山本先生 私の場合は、元々インフルエンサーをやっていたのもあって、やっぱりそういうものが昔から来ていたので慣れているというか、一切反応もせず相手にしないで、完全にスルーですね。
とりあえず何を書き込まれても、何も言わずに一切答えないです。ブロックもしないですし、何の返事もしないです。
横溝先生 それが一番いいのかな。他の受験生も、Twitterで模試の点数をつぶやいたりすると、色々なコメントが来てしまって、それで途中で嫌になったという感じの話をよく聞くので。
山本先生 そうなんですね。私の場合、受験勉強については悪いコメントはあまり来なくて、逆に「どうしたらそういう点数が取れますか」という質問のほうが多かったんですよ。
横溝先生 そしたら、もしSNSの運用で悩んでいる受験生がいたら、とりあえずスルーするのが一番いいんですね。
山本先生 そうですね。そういうことを書く方って、相手の反応を楽しんでいる部分もあると思うので、反応をしてしまうとまた来る可能性がありますから、完全にスルーが一番いいと思います。
横溝先生 今の時代、それは勉強になりますね。
山本先生 私は、その点をポジティブに考えていまして、「羨ましいから書かれているのだな」と捉えて、イヤな感じで捉えていないので落ち込むことはないです。
それよりも、「多くの人に知ってもらえるといいな」というところはありますよね。
「勉強ができる・できない」より「やり方」が大事
横溝先生 合格後、同じ年に合格した人と知り合う機会もありましたか。
山本先生 はい、開業して1~2ヵ月目の頃は、集まりにも積極的に参加していたので、すごくたくさんの同業の開業者にお会いしました。
横溝先生 行政書士試験に1回で受かった人や何回もかかった人がいるのでしょうけど、1回で合格した人の共通点や、逆に何回目かで受かった人の共通点はありますか。
山本先生 そうですね。色々と受験勉強のお話を聞いて、いわゆる「勉強ができる・できない」というよりかは、「勉強の仕方」が大事なのかなと、私は思います。
横溝先生 それは、さっき言っていたような「戦略を練ってから始める」などですか。
山本先生 それもありますし、「手を広げ過ぎてしまう方」と「ノートを綺麗に取っている方」が多いなとも思います。
私は綺麗なノートは不要だと思っていて、テキストというものすごく綺麗にまとめられた教材があるので、そこに書き足せばいいと思っているんですよ。
なので、ノートづくりに時間を取られている方も多いなという印象は受けました。
「超」直前期の過ごし方
横溝先生 では、ちょっと1年前を思い出してもらって、例えば本試験の「1週間前」はどう過ごしていましたか。
山本先生 1週間前は、「数字」や「過失・重過失」というような細かい要件をひたすら頭に入れていました。
あとは、一般知識の文章理解は毎日、毎日、試験前日まで解いていましたね。
横溝先生 苦手なところや覚えていなければならない細かいところを一生懸命に覚える、ということですね。
逆に、試験の「1ヵ月前」まで戻るとどうですか。
山本先生 1ヵ月前は全科目、インプットとアウトプットの繰り返しで、初めの頃から変わらない感じで勉強していました。ただ、1日に勉強する科目は増やしましたね。
横溝先生 模試は何回ぐらい受けましたか。
山本先生 予備校の模試は何校か受けましたね。
実は、受講していたLEC以外の模試を受けた理由というのが、一般知識の部分だけを解きたかったからなんです。
「自分が苦手な部分だけ使う」という模試の受け方もあるのかなと思っていて、なので、他校の模試では一般知識以外の科目はあまり解いていないんですよね。
横溝先生 なるほど。問題を解く順番は何か工夫されていましたか。
山本先生 はい、それは模試でも、普段の答練でも、解く順番は決めていました。
初めに「行政法」から解いて、次に「民法」。
その次に「基礎法学・憲法」を解いて、「多肢選択式」。
ここまで1時間半使うと決めていました。なので、本試験時間の13時~14時半までに多肢選択式問題まで解く計算です。
その後、私は「文章理解」が苦手だったので、ここに40分ほど使いたかったんですよ。
かなり時間を使いすぎだと思うんですけど、ここを落としてしまたら致命的なので、丁寧に時間をかけて「文章理解」の3問を解くようにしていました。
その後は今度、「記述式」の問題を1回ざっと見て、「どんな問題で何が聞かれているのか」を確認し、解答の大枠だけメモしておきます。
その状態で、すぐに解答欄に書き出さずに、「一般知識」の問題に進んですよ。
そして、「会社法」を解いてから、最後に、「記述式」の問題に戻って、ざっと見た大枠のところを完璧に仕上げるように清書していました。
この流れで初めの頃からずっと解いていました。
横溝先生 「記述式」の問題を少し見てから「一般知識」に行って、また戻ってくるというのは、何か理由はあるのですか。
山本先生 まず、「記述式」の問題は時間をかけて考えたかったので、まず、今回はどんな問題が出ているのかを3問とも見て、キーワードだけ最初に書き出しておくんです。
解答の組み立ては後でやればいいと思っていたので、今度はすぐに自分の苦手な「一般知識」に移って、「会社法」の問題は5問だけで少ないので、最後の残り時間を全部「記述式」の問題で使えるようにして、解答を組み立てて完成という流れでした。
横溝先生 なるほどね。少し離れると頭の中が整理されたりもするんですかね。
山本先生 はい。後からもう1回見た時に、ひらめくんですよ。
なので、キーワードだけ、初めに書き出しておきます。
横溝先生 そうなんですよね。多肢選択式の問題とかももそうだけど、ずっと同じ問題を考えていると気がつかないけど、ちょっと離れてから、また戻ってくると「なんでこれわからなかったんだろう」ということはありますよね。
山本先生 そうなんです。なので、わからない問題には星マークをつけて、私はどんどん飛ばして解きます。最後に時間が余ったら、そこに戻って解くと、「こういうことだったのか!」と気づくことが多いので。
実務の勉強真っ最中!
横溝先生 今年4月に行政書士事務所を開業したということですが、何をメインの業務にされているのですか。
山本先生 受験当時は実家の山梨に住んでいたのですが、地方だとやっぱり幅広く扱うイメージがあって、私は業務を専門特化したかったので上京して東京都で開業しました
私の場合、メイン業務は初めから3つに絞っていまして、1つは宅建業の免許申請サポートですね。宅建士資格も持っているので、行政書士という形でサポートしていけたらなと思っています。
もう1つが、外国人のビザ申請、いわゆる入管業務ですね。
横溝先生 すると、いわゆる”ピンクカード(届出済証明書)”も取得したんですね。
山本先生 はい、取得して、申請取次行政書士になりました。
3つ目は、少しマニアックなものなんですけど、ドローン飛行許可ですね。
私の事務所では、この3つを主軸に置いています。
横溝先生 比率的にはどうですか。
山本先生 まだ開業してから間もないので、すごくたくさん案件をこなしているというわけではありませんが、一番多いのは実は法人設立ですね。
あとは、宅建業の免許申請を主にやっています。
横溝先生 行政書士の受験をしていた頃から、開業するつもりで勉強をされていたのかもしれないけど、今年4月に開業してからどのくらいで最初の仕事を受けたのですか。
山本先生 これは有難いことに、開業初日から仕事をしていました。
というのも、知り合いの弁護士さんから、共同受任という形で法人設立の仕事をいただくことができたので。
ただ、どちらかというと、今は実務の勉強をする時間のほうが多いですね。
やっぱり、まだ1つ1つ調べながら進めるところもあるので、時間がかかっている部分はあります。
横溝先生 今は実務の勉強中ということだけど、受験勉強の内容ややり方で役に立っていることはありますか。
山本先生 私が今やっている業務が行政書士試験の内容とはかけ離れてしまっている部分があるんですけど、ただ、たとえば「許認可」の仕事でも、法令を読み込んだり、要件をちゃんと見たりするところはあるので、そういった分野は読んでいても、スムーズに理解できるようにはなりました。
(第3回に続く)
<対談者紹介>