【会計士試験】CPA講師・植田先生に聞く! <習熟度別>12月短答合格を目指す受験生が今すべきこと


今年12月に行われる短答式試験まで残り約3カ月となりました。受験生によって、仕上がり具合などに差がつきはじめ、さまざまな悩みが出てくる時期なのではないでしょうか。
そこで、CPA会計学院講師の植田先生に、12月短答を目指す受験生が、今すべきことを受験生の習熟度別にアドバイスいただきました。
順調に進んでいる人、やや遅れ気味の人、逆にハイペースな人、それぞれの受験生に向けた本試験までの道標を示します。

本番まであと3ヵ月! 現時点での仕上がり具合とは

ーー12月短答まであと3カ月ほど、受験生は今どういった学習状況でしょうか?

植田先生 学習が順調に進んでいる人であっても、まだ「テキストの例題や問題集は解けるけど、過去問レベルはちょっと…」という感じの人が多いような気がします。
でも、今の時期はそれでいいと思いますよ。それぐらいで順調だと思います。
いきなりスルスルと過去問が解けるというレベルまで達していなくても、ここからの3カ月でなんとかなります。だから、焦らずにアウトプットを意識しながら頑張ってね、と受講生にも伝えていますね。

逆に、この時期にテキストの例題レベルをまだ解けていなかったら、ちょっとまずいなと思ったほうがいいですね。でも、まだ諦めるのは早い。
だから、間に合っていない人は、まずは講義の消化からですかね。カリキュラムの消化を優先すること。
この時期は、そのカリキュラムの消化に差がついてくる時期なので、それで焦ってしまう時期でもありますね。

ーー受験生の習熟度別に、どういった対策をとるとよいでしょうか?

遅れ気味…の人へ

植田先生 全然間に合ってないという人に対しては、まずは計算科目ですね。
その財務会計の計算と管理会計から優先的にカリキュラムを終わらしていくことです。
この財務と管理が、やはり他の科目を勉強するにしても、すべての科目において「精神的な根幹」になると思っています。

というのも、会計士試験の勉強は、間違えては反復してといった繰り返しで、いかに自分のミスに向き合っていくかということが、精神面でも大事なんですよね。
覚えては忘れて、それでまた思い出してということを繰り返すことで、記憶に定着していくんです。

会計士試験の範囲は膨大なので、「一度見ただけで忘れない」なんていうことは無理です。
覚えては忘れて、「なんやったかな?」って思い出すことで、だんだんと知識が固まっていくという姿勢やマインドを作り上げていくこと。

財務や管理でその姿勢やマインドを作れたら、それと同じ勉強や反復の仕方を、他の科目でも実践すれば、基本的にはちゃんと時間に比例して、実力は伸びていくはずですよ。

あと残り3ヵ月なので、スケジュール的に焦るかもしれませんが、どれだけ遅くても、10月半ば頃までには講義やカリキュラムの消化をするようにしましょう。
そして、残り2ヵ月で、復習や答練に取り組んでギリギリ。なんとかそこがデッドラインという感じで間に合わせていくように進めてほしいです。

ぼちぼち順調な人へ

植田先生 順調な人は、過去問レベルに進んでもらっていいと思いますが、ここは意外とフットワークの重い人が結構多いんですよ。

テキストの例題とか、問題集とかももう5回ぐらい解いたけど、ちょっと過去問はビビッてしまって、
「テキストとか問題集を10回ぐらい回してから過去問解いたほうがいいんじゃないか」
「完璧にしてからでないと過去問を解いたらダメなんじゃないか」
と思って、手をつけない人がいるんですよね。

でもそのマインドではいつまでたっても進めません。
僕はそうではなくて、テキストとか問題集が2~3回転できれば、たとえ忘れているところとか、ミスするところがあっても、もう過去問に挑んでいい、と思っているんです。

正直なところ、テキストとか問題集を、ほんまに完璧にしてから、過去問を解こうと思っても、やっぱり忘れていくし、ミスもどうしても起きるのでなかなかできません。
だから、僕は基本的には2~3回転したら過去問に進もうって受講生にも伝えています。

過去問にビビらず、どんどん挑戦してもらって、もしわからなかったら、またテキストに戻ればいい。
そういう気持ちでチャレンジしていってほしいな、と思います。
過去問を解く時に、時間を計ったほうがいいのかと聞かれることもありますが、今はまだ時間は計らなくていいです。

今の時期であれば、正確性のほうが大事なので、スピードよりも手をつけた問題を正答することに重きを置きましょう。
合格ラインとしては、全体の7割を取ればいいので、残り3割は手をつけなくてもいいんです。
だから、スピードよりも正確性を重視して、じっくり過去問と向き合って、地に足をつけながら、時にはテキストに戻りながら、過去問を解くといいでしょう。

ハイペースな人へ

植田先生 ハイペースな人は、盤石に合格できることを目指すという意味で、最近よく出題されている「理論と計算の融合」への対策を進めるとよいでしょう。
財務会計では、見た目は計算問題のようで、実は理論問題みたいな問題が出題される傾向にあります。
なので、たとえばリースの計算を勉強したら、同じ日か次の日に同じ分野の理論のテキストも確認する、そういう勉強が絶対大事になってきますね。

計算のテキストを勉強した後に、近いタイミングで同じ論点の理論を勉強すると、応用も効くようになります。
本試験で見たことのない問題が出ても、理論がちゃんと頭に入ってる人は、応用力や現場対応力で解くことができるんですね。
いわば、理論で幹が作れていれば、別にその細かい規定まで覚えていなくても解けるけど、幹が作れていないと、少しひねられた問題が出ただけで解けない、答えにたどり着けません。
だから、学習が進んでいる人は、理論と計算の融合を意識して、その力をもっと伸ばしていくといいでしょう。これは8月論文式でも必要な力になります。

あとは、過去問を時間を測って、どんどん解いていってもいいと思いますね。
当然に正確性を重視すべきなんですけど、このレベルの人はもう時間を計って、スピードも意識するようなトレーニングをしていくといいですね。

ここから巻き返すためのヒント

ーー5月短答からの再受験で、まだエンジンがかからない人はどう巻き返すとよいでしょうか?

植田先生 まずは、まだまだ諦めるのは早い!ということですね。
あとは、スイッチが必要だと思うんですよ。

僕は家では本当に勉強できない人で、予備校に行かないと勉強できなかったんですね。
予備校でも街中の自習室とか、カフェとかでもいいんですけど、「ここに行ったら集中できるよ」といったような、場所のスイッチを作ることですね。

多分まだ気持ちが乗ってないんだと思うので、まずはそこからじゃないですかね。
勉強って、実は乗ったもん勝ち、極端に言えば酔っぱらったもん勝ちみたいなところがあるんです。
いきなり楽しくはならないんですけど、まず「無理やり楽しい」と思い込むところから始めて、「あ、楽しい!」みたいに、無理やり、嘘でもいいから自分を騙して、楽しいと思うところから始まったら、勉強って続くんですよ。
そうすると、気づいたら成績もちょっとずつ伸びてきて、するとほんとに楽しくなってくるので、そしたら「もっともっと勉強しよう!」ってなるじゃないですか。

6時間でも8時間でも勉強しようってなってくるので、そしたらもっと成績も伸びるし、またもっと楽しくなるし、よい循環を回していければ、絶対に合格に近づくんですよね。
だから、このサイクルの最初の出発点は、嘘でもいいから、自分を騙して「楽しい」って思うこと。

僕も苦手科目があって、計算科目は好きだったんですけど、理論科目、特に企業法が結構苦手だったんですよ。
「覚えるばっかりやし、あんまり面白くないな~」と思ってたんですよね。
成績も全然伸びなかったんですよ。
だから、「じゃあ、その苦手な企業法と友達になろう」と思ったんです。

「ちょっと苦手なやつと仲良くなってみようか」みたいな感覚で、嘘でもいいからとにかく楽しいって思うようにしたら、なんかだんだんと楽しくなってきたんです。
まあ、2週間ぐらいリハビリみたいにして頑張りましたけど、そこを超えたら、リズムもできて、好循環になったんですよね。
そのリズムさえつかめたら、遅くとも10月半ばぐらいまでには、講義を見終えて、カリキュラムの消化に努めてほしいですね。

ーーどの習熟度においても共通する勉強法はありますか?

植田先生 元メジャーリーガーのイチローさんが「僕は天才ではありません。」って言っていたそうなんです。
それはなぜかというと、「なぜヒットを打てるかを説明できるからです」って。

どうやって体を動かして、こういう角度でバットが出れば、こうボールが飛ぶからヒットが打てるって、説明できるらしいんですよ、あのイチローさんが。
だから、僕は天才ではありません、って。

その話聞いてすごいなって思ったんです。
確かに、天才の人って説明できないじゃないですか。生まれ持った才能で感覚的にできるでしょうから、人に言えないですよね。
でも、イチローさんはそうじゃないらしいっていうのを知って、それでいくと僕も全然天才じゃないですよ。
なぜなら僕は、「なぜ会計士試験に合格したか」を説明できるからです。

1つは、とにかく財務会計の計算、管理会計、租税法、これら計算科目を毎日勉強したということ。
もう1つは、それ以外の理論科目の全ての論点を、人に説明できるようにしたということ。
これが、僕が受かった理由なんです。同じことをすれば、皆さんも必ず受かります。

はじめから、正しい勉強法ができる人って少ないと思うんですよね。
いろんな勉強の仕方を試行錯誤して、自分に合ってる勉強方法を探しながら、

「このやり方、あかんわ」とか、
「あ、このやり方、自分に合ってて、記憶の持ちもいいわ」とか、
だんだんと自分のバッティングフォームに近づいていくんじゃないかなと思っています。
おそらく、その正しい勉強法に試行錯誤せずにたどり着いても、僕は深みが出ないんじゃないかなと思っているんですよ。

要は、「こんなやり方してたらあかんわ」とか、「これやってもミス減らへんわ」とか、「じゃあ、こういう勉強法にしよう」っていうのを自分で試行錯誤してたどり着くことで、たとえゴールが同じでも、そこにまっすぐたどり着くより、試行錯誤してたどり着くほうが、深みが出ると思っています。

僕も、受講生にいろいろと勉強方法をアドバイスするんですけど、「自分には何があってるか」というのは、やはり試行錯誤してほしいなと思いますね。

ーー植田先生はどのような勉強をされていましたか?

植田先生 たとえば、僕の場合は、「まとめノートを作る」っていうのが、鉄板の勉強方法だったんです。
でも、まとめノートを作らずに受かる人も当然いるんですよね。
テキストの余白に書き込んでまとめる人もいるんですけど、僕の場合は、テキストを読んでても全然頭に入らなかったから、「時間がかかるけど、論点ごとにまとめノート作ろう」と思ったんです。

そしたら、僕はその勉強方法が自分にはすごい合ってて、ノートにまとめたところは、すごい得意になったんですね。
「じゃあ、全分野のまとめノートさえ作れれば、もう受かるやん」っていうような意識になって、時間はかかったんですけど、僕はそれが自分にあってたんです。
合格した受講生を見てても、まとめノートを作っている人もいるし、講師が授業中に話したことをテキストに全部書きこんでいる人もいるし、それはその人のスタンスだと思います。

共通していることは、その論点と向き合うということ。
それは共通して絶対に合格者がみんなやってることなんですよ。
その向き合い方が違うだけです。

ある天才の人はテキスト眺めてるだけで習得できるでしょうし、僕は丸1日かけてまとめノートを作らないと頭に入らなかったし、他にも、テキストの余白にびっちりと書き込まないと頭に入らないし人もいるし、というように、人それぞれのスタイルがあると思うんです。
だから、焦らず、一論点ごとに完璧にしていってほしいというのが共通点で、その方法はぜひいろいろ試していってほしいなと思います。

どうすれば合格に近づくか

ーーいよいよ「23年合格」に向けた戦いが始まります。これから本試験まで、どんなことを意識するとよいでしょうか?

植田先生 今は、受験者数も増えているし、試験範囲も年々広がっている気もするけれども、結局は「できる分野をどれくらい持っているか」が勝負です。
幅広く、満遍なく、ふわっとした知識があるという状態ではなくて、たとえば、リースは絶対できるとか、研究開発費は絶対できるとかいうように、絶対ここは解けるという分野を何個持っているか、です。
ふわっとした知識はいくらあっても意味がないので、一論点ごとにどう完璧にしていくかということを意識して、試行錯誤してほしいです。

何度も言いますが、完璧にする方法は人それぞれです。

あと忘れてはならないのが、受かる人って、実はちゃんと理解しているんですよね。
会計士試験っていうのは、条文や基準の文章を丸覚えしてますみたいな人が受かるような試験ではなくて、その条文とか基準がコンコンパクトに頭に入っている、「要はこういうことでしょ」ということが、一言で話せるような人が基本的には受かります。
だから、普段からそういうことを意識して勉強をしないといけないですね。

逆に言うと、覚えなくていいんで楽なんですよ。
自分の言葉にして、友達と説明し合ってもいいでしょうし、自分で簡単な文章にしてみてもいいでしょう。
そういう勉強を日々、意識的に取り組めば、合格には確実に近づきますよ!

――ありがとうございました!

<お話を伺った人>
植田 有祐(うえだ ゆうすけ)

公認会計士・税理士。CPA会計学院講師。
同志社大学経済学部卒業。公認会計士試験合格後、新日本監査法人にて、主に金融商品取引法監査、会社法監査、アニュアルレポート作成業務に従事。その後、植田有祐公認会計士事務所を設立し、決算早期化コンサルティング業務(棚卸規定の整備、引当金見積の精緻化)や、原価計算導入コンサルティング業務(原価要素の集計、標準の設定、現金収支予算、労務規定の整備など)を行う。
・野原監査法人パートナー
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