税理士 鳴瀬奈央
【編集部から】
7月も半ばになると、受験生にとってはラストスパートをかける時期!
しかし、とりわけボリュームの多い税法科目の理論については、「まだ覚えきれていない」と悩む受験生も少なくないと思われます。
そこで今回は、働きながら、育児をしながら官報合格を果たされた税理士の鳴瀬奈央先生に、試験直前~当日の理論学習についてアドバイスをいただきました。
時間の制約があるなかで、合格するために本当に重視すべきポイントは何なのか? 励みになるヒントが満載です!
はじめに
税理士の鳴瀬奈央です。
本試験をいよいよ間近に控える今、「税法科目の理論暗記が追いついていない!」という方も多いと思います。私もその1人で、一言一句すべて完璧に記述できる理論なんて1つも持たないまま、試験当日を迎えるような受験生でした。
今回は、そんな私が直前期の理論学習や当日の試験で意識していたことをお伝えしたいと思います。私のように試験直前で理論学習の精度が足りていない方、理論暗記の時間がない方の励みになれば幸いです。
一言一句覚えるのではなく、キーワードを押さえる!
暗記の苦手な私が理論学習で重視したポイントは「キーワードのみ覚える」ということです。キーワードとは、その理論に使用されている用語や期限、独特の言い回し(「〜することができる」、「〜しなければならない」など)をいいます。
それを覚えるだけで限界だった、というのが正直なところですが、税法理論は長くて読みづらいので、まず主語や述語が何なのか、文章の大枠を理解して、その後にキーワードを押さえるようにしていました。
そのため、私の解答は“理論テキストを基礎にした作文”のようなもので、答練の講師からの返信欄にも「理論学習の精度を上げましょう」というコメントばかり。そう言われても、能力的に覚えられないものは覚えられない!(笑)
結局、本試験もこのスタンスで臨むしかなかったのですが、それでもキーワードを押さえたことで、応用事例形式の問題に対応することができました。
キーワードを定着させるには?
一言一句覚えなくても合格できたとはいえ、キーワードは押さえる必要があります。私はキーワードを覚えるために、とにかく「頭で考える」ことを重視していました。
そのステップとして、まずは、ある理論について、「何も見ないで思い出せるか」を考えます。
ある程度思い出すことができたら、理論問題集に載っている問題を見て、「課税価格」について聞かれたら、どの個別理論があたるか? その個別理論を思い出せるか? 「手続」について聞かれたら、あの理論のどこを回答すべきか? と次々に頭を働かせます。
そうすると、その思考過程において、自信のないポイントが出てくるので、そのつどテキストを開いて確認します。
これはどこでもできるので、本試験まであらゆる場所・場面で思考を繰り広げ、キーワードを定着させていました。
計算のような達成感もない作業でつらかったですが、考えたり思い出したりする「アウトプット」が一番効果的だったと思います。
試験当日、もしも理論でつまずいたら?
試験当日は、問題が配布される直前まで、各専門学校の出題予測の上位理論について、理論テキストで確認し、まずは「短期記憶」を発動させました。
そして、いざ理論を解く際は、「何が問われているのか」に注意して、慎重に問題を読みます。本試験はスピード重視ですが、この点だけは絶対に意識していました。
問題の趣旨が理解できたら、瞬間的に思いつくかぎりの文章を猛スピードで書き、次の問題へ進みます。
問い方が独特で何を書くべきかよくわからない問題が出たときは、計算や実務の知識を使って、簡単に概要だけでも書いておきます。そして、計算を解き終えた後に理論に戻り、全体を確認していました。
計算を解くと、本試験特有の緊張感がほぐれ、解答の間違いに気づいたり、追加で理論を思い出したりすることができます。
もし、理論でつまずいたときは、時間をかけずにさらっと解答し、いったん計算に十分な時間を使ってみることもオススメです。
試験本番を迎える受験生へのメッセージ
いよいよ来月は本試験ですね!
受験生の皆さんは、色んな環境で勉強されていると思いますが、ぜひ試験当日までは“自己中心的に”試験のことだけを考えて生活してください。
そして、今日はこのへんでスマホをしまって、勉強しましょう!
応援しています。頑張ってください。
<執筆者紹介>
鳴瀬 奈央(なるせ・なお)
税理士
平成2年高知県高知市生まれ。同志社大学社会学部メディア学科卒業。奈良市内の税理士事務所で修業後、高知市内で父親が営む税理士事務所へUターン。令和2年官報合格(簿財所消相)、令和3年税理士登録。