税理士受験生のバイブル『会計法規集』とは? 並木秀明先生が読みドコロ、重要性を伝授!


並木秀明
(千葉経済大学短期大学部教授)

【編集部から】

国税庁が公表する税理士試験の財務諸表論「出題のポイント」を見ると、試験委員は理論を「どれだけ暗記しているか」ではなく、「どれだけ理解しているか」を受験生に求めていることがわかります。

苦手な方も多い理論ですが、そんな理論を「理解する」のに役立つのが『会計法規集』。

ただ、名前は聞くけれど、どのような本? 受験勉強に必要なところは? 疑問もたくさんあると思います。

そこで、会計人コースWebでもおなじみ、多くの合格者を輩出してきた並木秀明先生に、『会計法規集』の受験勉強における読みドコロや重要性を教えていただきました。

『会計法規集』の歴史

『会計法規集』は、東京ではじめてオリンピックが開催された昭和39年、中央経済社から初版が刊行された。初版は224ページで企業会計基準の収録はもちろんない。

昭和52年の『会計法規集』は、企業会計原則の大改正(昭和49年改正)直後の版である。初版と比較すると554ページもあり、会計の進歩と新規定が多くなったことが想像できる。

この『会計法規集』は、筆者の思い出の会計法規集であり、捨てられずに本棚の隅に収まっている。税理士、公認会計士ならびに会計学者の方々は、わたくし同様に『会計法規集』のお世話になったことと思う。

そこから40年ほど。令和3年7月に発行された『新版 会計法規集(第12版)』は、企業会計基準の1号から31号まで収録され、1474ページというボリュームとなっている。

『会計法規集』の収録内容

会計諸基準編

企業会計原則・同注解
負債性引当金等に係る企業会計原則注解の修正に関する解釈指針
引当金の部を存置しないことを可とする企業会計審議会意見の理由について
外貨建取引等会計処理基準
連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準
研究開発費等に係る会計基準
税効果会計に係る会計基準
固定資産の減損に係る会計基準
国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針

自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準
1株当たり当期純利益に関する会計基準
役員賞与に関する会計基準
貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準
株主資本等変動計算書に関する会計基準
事業分離等に関する会計基準
ストック・オプション等に関する会計基準
棚卸資産の評価に関する会計基準
金融商品に関する会計基準
関連当事者の開示に関する会計基準
四半期財務諸表に関する会計基準
リース取引に関する会計基準
持分法に関する会計基準
セグメント情報等の開示に関する会計基準
資産除去債務に関する会計基準
賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準
企業結合に関する会計基準
連結財務諸表に関する会計基準
「研究開発費等に係る会計基準」の一部改正
会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準
包括利益の表示に関する会計基準
退職給付に関する会計基準
法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準
「税効果会計に係る会計基準」の一部改正
収益認識に関する会計基準
時価の算定に関する会計基準
会計上の見積りの開示に関する会計基準

連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い
繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い

原価計算基準
監査基準

商法と企業会計原則との調整に関する意見書
企業会計原則と関係諸法令との調整に関する意見書
商法と企業会計の調整に関する研究会報告書

会社法編

会社法(抄)
会社法施行令
会社法施行規則(抄)
会社計算規則

金融商品取引法編

金融商品取引法(抄)
金融商品取引法施行令(抄)
企業内容等の開示に関する内閣府令(抄)
財務諸表等規則・同ガイドライン
連結財務諸表規則・同ガイドライン
連結財務諸表規則に規定する金融府長官が定める企業会計の基準を指定する件
財務諸表等規則に規定する金融府長官が定める企業会計の基準を指定する件

関連法規編

税理士法
減価償却資産の償却率、改定償却率及び保証率の表
討議資料 財務会計の概念フレームワーク
〈資料〉「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」の公表にあたって

受験勉強に必要な読みドコロは?

(1)企業会計審議会の設定した会計基準等

① 企業会計原則

昭和24年に設定された原則であり、一般に公正妥当と認められた会計処理等が規定されている。近年の税理士試験では、連続して出題されている。

② 外貨建取引等会計処理基準

固定相場制から変動相場制に変更されたことを機に規定された基準である。いわゆる新会計基準ではないが取り上げている。

③ 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

④ 研究開発費等に係る会計基準

⑤ 税効果会計に係る会計基準

⑥ 固定資産の減損に係る会計基準

④~⑥は、いわゆる新会計基準である。大きな改正があると、現在の会計基準の設定団体である企業会計基準委員会が「・・・に関する会計基準」として公表する。

(2)企業会計基準委員会が設定した企業会計基準

現在、企業会計基準は、第1号から第31号(第3号、第14号、第15号、第19号は削除されている)まで公表されている。

企業会計基準委員会の設定した企業会計基準であれば、企業会計基準委員会のホームページからダウンロードも印刷もできる。「そんなことは知っている」という読者のためにアドバイスをしておこう。

筆者は、すべての企業会計基準をダウンロードし、印刷しようとしたことがある。しかし、途中で断念した。笑い話のようなホントの話である。

企業会計基準をすべて印刷した場合、A4サイズの紙の厚さは10cm程度。途中でやめたので推定である。

途中で印刷をやめた理由は、インク代である。これまた推定で最低5,000円くらいか。

ケチな話で申し訳ないが、『会計法規集』(2,640円)は、相当に格安である。

『会計法規集』は、当たり前であるが紙である。紙であることを大いに活用するべきである。何回も何回も同じ箇所を開き、下線を引く。そのうち絵画のようになる。また、紙である書籍は、使い込むほど下の部分が厚く膨らんでくる。その膨らんだ紙の厚さは、愛着と自信の大きさでもある。

(3)会社法関係

① 会社法(抄:一部の条文を省略しているという意味)

税理士試験に関係する「第2編 株式会社」と「第5章 計算等」が収録されている。

② 会社計算規則

従来、「商法計算書類規則」といわれ、財務諸表論の第三問において7年連続で穴埋め問題が出題されたことがある。この規則は、すべての株式会社が貸借対照表、損益計算書などの計算書類を作成するときに準拠すべき内容が規定されている。

(4)金融商品取引法関係

① 金融商品取引法(抄)

税理士試験に関係する「第1章 総則」と「第2章 企業内容等」が収録されている。

② 財務諸表等の用語、様式及び作成に関する規則

「財務諸表等規則」と略すのが一般的である。財務諸表等規則は、上場会社等が貸借対照表、損益計算書などの財務諸表を作成するときに準拠すべき内容が規定されている。また、会社計算規則に規定がない表示科目名は、この規則に準拠することになる。

『会計法規集』の重要性と使用法

(1)重要性

『会計法規集』の重要性について、結論を先に言おう。

仕訳、財務諸表の作成、会計理論の理由などについて疑問があれば、すぐに調べることができる。

『会計法規集』は、最初から読むような小説ではない。語学学習の辞書のようなものである。

私的になるが「会計法規集がなければ仕事にならない」くらいに重要なものである。

受験生にとっての『会計法規集』の重要性としては、次の2つを強調しておこう。

① 企業会計原則・企業会計基準の原文の穴埋めが定番問題である。

会計用語が解答となる。完璧な解答はできなくとも、正答可能性を高めることができる。

② 企業会計基準に即した仕訳問題が高頻度で出題される。

仕訳は覚えればできる。当たり前であるが、仕訳を覚えていられるか、多くの企業会計基準に対応できるか、それが問題である。解決法としては、仕訳の根底にある理由・根拠を理解すること。そのために、企業会計基準の原文を読むことが大切である。

(2)使用法

『新版 会計法規集(第12版)』の厚さは、およそ4cm強である。はじめは、知りたいことがどこに書いてあるのかわからないであろう。

『新版 会計法規集(第12版)』には、インデックスシールが付録としてある。インデックスシールを付けることで、個々の会計基準等がどの辺りにあるかが一目瞭然となる。

とはいえ、筆者は、インデックスシールを付けていない。何十年と連れ添った会計法規集である。知りたいことは「さっ」と開けるのである。

受験生は、そんな達人(?)になる前に合格し、実務で達人を目指すのもよいであろう。

<執筆者紹介>
並木 秀明
(なみき・ひであき)
千葉経済大学短期大学部教授
中央大学商学部会計学科卒業。千葉経済大学短期大学部教授。LEC東京リーガルマインド講師。企業研修講師((株)伊勢丹、(株)JTB、経済産業省など)。青山学院大学専門職大学院会計プロフェッション研究科元助手。主な著書に『はじめての会計基準〈第2版〉』『日商簿記3級をゆっくりていねいに学ぶ本〈第2版〉』『簿記論の集中講義30』『財務諸表論の集中講義30』(いずれも中央経済社)、『世界一わかりやすい財務諸表の授業』(サンマーク出版) などがある。

『新版 会計法規集〈第12版〉』

中央経済社編
定価:2,640円(税込)
発行日:2021/07/20
A5判 / 1474頁
ISBN:978-4-502-39301-3
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『税理士・会計士・簿記検定はじめての会計基準〈第2版〉』

『会計法規集』を読む前に、または副読本として! 会計基準がコンパクトに理解できます。

並木秀明著
定価:1,870円(税込)
発行日:2020/07/08
A5判 / 168頁
ISBN:978-4-502-35021-4
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