よく「自分に合った勉強法を見つけることが大事」といわれますが、そのなかには「年齢やライフステージに合った勉強法」もあると思われます。
特に、幅広い年代が受験する税理士試験はなおさらそうかもしれません。
そこで、20代・30代・40代・50代と税理士試験を受験し、2020年度に官報合格を果たされた、うだ(@udamajiuda)さんに、各年代の勉強法を振り返っていただきました。
「年齢」や「ライフステージ」という観点で、自分に合った勉強法を考えるヒントが見つかるはずです。
うだ
税理士。
資格を武器に独立できる仕事がしたく、商業高校を卒業後すぐに税理士事務所に就職。
人生上のイベントや仕事を通じて数々の社会人経験を積みながら、毎年税理士受験を続け、33回目となる2020年度(第70回試験)、夢にまで見た官報合格。
2022年1月、独立。現在「ひとり税理士」として、日々楽しく奮闘中。
【20代】気力体力ともに十分! とにかく勉強に集中する
合格科目 ※カッコ内は総受験回数・合格年 消費税法(2回・1990年) 法人税法(4回・1991年) |
「20代は勉強の時期」と決めていたので、仕事と勉強のこと以外は、ほぼ何も考えていませんでした。
仕事では紙に書く、紙を綴じるなどの手作業が多く、法人決算では膨大な量の筆記やコピー、製本に追われる日々。
平日は帰宅後に、食事と入浴を除くほとんどの時間を勉強にあてましたが、学校の課題をこなすことで精いっぱいでした。
一方で、どんなに課題のボリュームが多くても23時には勉強をやめ、日付が変わる前に必ず就寝するよう心がけました。
理論は、以前書いた「合格体験記」のとおり、書いてみる→読み上げて録音する→音声に合わせて言ってみる→書いてみる、の流れで暗記しました。
計算は、通信講座(当時はカセットテープ)の講義を最低2回は聴き、理論と関連させながら、そのつど、完全消化を目指しました。
ちなみに、筆記には軸の細いサインペンを使っていました。どうしても手に力が入るので、当時はペンだこ・腱鞘炎に苦しんだ記憶があります。
【30代】まだまだ全力投球! ただし、難問への“こだわり”を捨てる
合格科目 所得税法(6回・1998年) |
30歳になった年の12月に結婚。両親と別居し、アパート暮らしを始めました。
生活は変わりましたが、アパートがたまたま職場の近所だったので、勉強の時間を増やすことができ、まだ気力体力ともに余裕もあったので、20代の勉強法で、所得税法合格までそのまま走り続けました。
この頃から、本試験間際に学校から追加される、難しい課題に対するこだわりを捨てることを心がけました。実際、所得税法に合格した年は、一部の直前予想模試には手をつけなかったと記憶しています。
最後の所得税法受験で合格を確信したので、すぐに、何も考えずに簿記論の通信講座を受講しました。
そこで簿記論の難しさに衝撃を受けたのと、講師の方の説明がさっぱりわからなかったこともあって、それ以来、簿記論がどうしても好きになれず、大スランプ期間に入っていきます。
【40代】間違いノートで弱点を把握! ひたすら練習を重ねる
合格科目 なし |
両親が高齢になったため、住んでいたアパートの近所に住宅を新築し、同居を始めます。
家庭内のことや町内会のこと、冬には家の周りの除雪など、時間、体力、そして精神的にも負担となることが増え、家でまとまった勉強ができない時期もありました。
時をほぼ同じくして、勤め先の事業承継、引っ越し、法人化、大先輩スタッフの引退と、たて続けに起こる変化に戸惑う日々。
担当の仕事をこなすだけではなく、職場内のことを心配する立場になり、見たことのないような特殊な案件を任されるようになったときは、勉強するうえで、かなりの足かせとなりました。
相変わらず簿記論は苦手なままで、今でいうC判定あたりをさまよっており、一進一退どころか、先が見えなくなってきていました。
そうやって悶々としていたところに、通学可能圏内で「出張講座」開講の知らせが。藁にもすがる思いで受講を決意しました。
今から10年ほど前、40代後半のことです。私よりもずっと若い人たちに混じっての受講は、新鮮そのものでした。
若い人は、とにかく挙動が速いです。問題用紙をめくるとき、項目にマーカーを引くときをはじめ、すべてにおいて、異次元の速さに驚くばかりでした。
こういうことは若い人にかないません。速さで上回ろうとしても無理です。
あいにく試験では年齢によるハンデは与えられませんので、なんらかの方法で、手の遅さをカバーしなければなりません。
そのためには、自分の弱点を的確に把握して、それを克服し、目の前の問題を“一発で”正答できるまで練習を積み重ねる必要があります。
40代は簿記論しか勉強していなかったので簿記論の話になりますが、私の場合、弱点の認識には「間違いノート」が有効でした。
詳しくは「ケアレスミス撃退!『間違いノート』を使った“得点力”アップ術」で紹介しています。
出張講座に通うようになってから、書き味のなめらかなボールペンを使うようになり、計算問題の余白にメモするときなど、やや細字のものを重宝しました。
【50代】できることは何でもする! 筆記具で年齢の壁をカバー
合格科目 財務諸表論(3回・2016年) 簿記論(22回・2020年) |
年齢とともに、手の遅さも頭の回転の遅さも、ますます重症化。
精神を安定させる目的もあって、簿記論と並行して財務諸表論を追加しました。
財務諸表論は税法科目と異なり、理論が抽象的で覚えにくいと感じました。
そこで、20代で実践した理論暗記の流れに加えて、『はじめての会計基準』や「理論ソングブック」など、学校以外の書籍やウェブ媒体など、活用できそうなものは、なんでも積極的に使うようにしました。
また、手が遅いだけではなく、もはや指先から肩までが長い時間の筆記に耐えられなくなってきたため、万年筆を導入しました。
私が買ってよかったと思うものは、セーラー万年筆の「プロフィット ブラックラスター」(細字)です。高価ですが、筆圧をかける必要がなくなったことで、腕や肩の張りから解放されました。
ちなみにこの万年筆、今ではお客様に渡す税務申告書控えのサイン用としても活躍しています。
最後の最後まで残った簿記論。
コロナ禍前は毎夕の「カフェ勉」を習慣としていましたが、年齢のせいもあるのか、しだいに夜遅くまで起きていられなくなり、また簿記論の試験が朝9時開始ということもあり、合格した年は朝4時に起きて2時間問題を解く生活パターンに切り替えるなど、できることは、なんでもやりました。
簿記論で使った筆記具は、三菱鉛筆の「ジェットストリーム」(0.5mm)です。
合格した2020年は「七赤金星」の運勢。ラッキーカラーが赤色だったので、赤色にこだわりました。
さいごに
20代を勉強の時期と決めたつもりが、気がつけば50代後半。
人生の重大な局面で、周りを気にしすぎるのではなく、もう少し自分を優先していれば、もっと早く合格できたのではないか、と振り返るときもありました。
しかし今となっては、時間がかかったぶん、それだけ成長の糧を得ることができたのではないかと、ありがたく思っています。
この記事を読まれている皆さまは、ご自身が主役です。
まずは、自分の勉強を最優先できるよう、生活パターンと環境を見直してみましょう。
環境整備に勝る勉強法はない、といっても過言ではありません。
皆さまが毎日一歩ずつ、合格に近づいていくことをお祈りします。
なせばなる!