【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。
セカンドキャリアは独立開業の道へ
はじめまして。東京都立川市で2020年7月1日に独立した公認会計士・税理士の金森俊亮と申します。
2009年の公認会計士試験に合格し、2010年から大手監査法人で働き始めました。
監査法人では、上場企業の監査の他に、国立大学や独立行政法人等の非営利な法人の会計監査、会計相談や内部統制構築のアドバイザリーを実施していました。
その他にも、監査法人での部署異動で上場企業向けの会計アドバイザリー部門に異動し、IFRS導入の支援や「収益認識に関する会計基準」の導入支援も経験しました。
そして、2020年7月1日に立川市で独立開業しました。 まだ今年で独立3年目ですが、独立開業日誌を書かせてもらいます。将来は独立を考えている受験生や実務家のご参考になれば幸いです。
独立開業がしたくて公認会計士を目指す
幼少期の頃から、「社長になりたい」という漠然とした夢を持っていました。しかし、中学校・高校・大学と進学していくにつれ、その気持ちは次第に薄れていきました。
そして、大学受験の際に「簿記」と出会います。簿記の問題は、「“疑似社長体験”みたいで面白い」と勉強にハマり、気付いたら、大学3年生の時には日商簿記1級の勉強をしていました。
大学卒業を見据え、一般的な就職活動も少し取り組んだのですが、「自分には会社員として勤務する資質がないのではないか」と思い始めます。
思い悩んだ末に、企業に就職するのではなく、簿記を極めることができ、さらに独立開業することで、事務所経営をすることもできるということで、「公認会計士」を目指すことにしました。
この決断は、大学4年生の5月でした。
そこから、すべてを公認会計士試験に捧げ、運よく卒業した年に合格することができました。
合格後は、「ある程度の経験を積んだら独立開業しよう」と考えていました。そこで、まずは公認会計士として汎用的なスキルが身につくと思い、監査法人に入ります。
監査法人での仕事は、刺激的で楽しく、気がついたら10年が経っていました。
10年というのは、一つの節目でもあり、自身のキャリアを考える時期にもなります。「一般企業への転職」も選択肢としてはありましたが、「最初の夢」を思い出し、独立をすることにしました。
幸い、私が入所した監査法人の同期には、独立開業している人も多く、みんな元気でそれぞれに活躍していたことも後押しになりました。
独立開業にあたっての準備
独立することは、開業する1年前の2019年には心の中で決めていました。そのため、いろいろな人に会いに行きました。
具体的には、出身大学の士業の会に参加して名刺を配ったり、すでに独立している人に連絡をとって積極的に会いに行ったりしていました。
独立開業においては、「人との繋がり」が大事だと思っていたので、そこについて準備をしていました。
また、実際にオフィスを借りたり、物を買ったりというのは、開業する4ヵ月前の3月頃から動き始めました。しかし、2020年4月は新型コロナウィルス感染拡大により第1回目の緊急事態宣言が出され、社会活動が停止していた時期で、思うように準備が進みませんでした。
実際、オフィスの契約は5月になったり、オフィス家具も6月に中古屋で注文したりといった具合でした。その経験から考えると、開業の2ヵ月前くらいから動き始めても準備時間は足りるのかもしれません。
ただ、オフィスを借りる場合はめぐり合わせなので、早めに動いて、実際に見て回るのがいいかもしれませんね。
独立開業にあたってかけた費用
事務所の開業にあたって、私はわりとお金をかけたほうで、大体120万円ほどかけました。
一番高かったのは、パソコンです。1台25万円ほどしましたが、予備のために同じものをもう1台買ったので、合わせて50万円ほどしました。
パソコンは会計士・税理士業務を行う上で、一番大事な仕事道具なので、高スペックで納得のいくものを選びました。おかげで、今も不満はありませんし、この投資はすぐに回収できます。
その他にも、オフィスを借りたので、オフィス入居のための初期費用として、大体家賃の3ヵ月分かかりました。さらには、オフィス家具も一式揃え、これには30万円弱かけました。
私の場合、居住もできるビルのため保証金等はかからず敷金だけ必要でしたが、オフィスビルを借りる場合には、家賃の3~10ヵ月程度、保証金が必要になることが一般的です。オフィスビルを借りようと考えている方は、資金面を考える必要があります。
しかし、私の周りの話を聞くと、開業時に100万円以上かける人はあまりいないようです。
オフィスを借りなければ、パソコン代くらいで独立開業できるのも、会計士・税理士の魅力ではないでしょうか。
はじめにぶつかった壁〜時間管理
会計事務所の仕事は「労働集約型」なので、自分自身が時間を割かないといけません。しかし、自分自身の時間は1日24時間で、それ以上増やすことはできません。
そのため、「自分がその時間の中で何をやるのか」が重要になっていきます。
ありがたいことに、2021年は下半期になるにつれ、忙しくなっていったのですが、それと同時に時間が全然足りなくなってきました。ひとり事務所では、何でも自分でやらないといけないからです。
開業3年目になる今年は、従業員の方にも手伝ってもらうことで、「自分が使う時間の内容」を見直して、ここの壁を解消していきたいと思っています。
独立後の仕事術〜モチベーションが上がるモノを使う
ガジェット好きな私は、いろいろなガジェット(小型電子機器)を買っては試しています。お気に入りのガジェットを使うことで、仕事への意欲になりますし、仕事に繋がったりもします。
たとえば、独立してから事務所ホームページのブログを週4回程度の頻度で更新していて(繁忙期はストップしてしまうことも多いですが…)、その際には「HHKB(Happy Hacking Keyboard)」という高級キーボードで文字入力をしています。
この「HHKB」は打ち心地が本当に良くて、叩いていて楽しくなります。そのおかげで、ブログ更新は苦ではないですし、ブログを見ていただいて、ウェブ記事の依頼をいただくこともありました。
監査法人や会計事務所では、セキュリティの都合上、ガジェットの選択幅は狭くなりがちですが、独立開業することで、自分自身に合ったガジェットが使えるのが楽しくもあり、仕事につながります。
もちろん、セキュリティはしっかり施したうえで使っています。
独立開業してから感じる楽しさ
独立開業してから、毎週日曜日の夕方が楽しみになりました。「月曜日から、どのように仕事を組み立てていこうか」と考えるのが楽しいのです。
監査法人時代からも、日曜日の夕方に憂鬱になるというのはあまりなかったのですが、独立してからはむしろワクワクしています。独立してからの仕事では、目新しいことがまだまだ多いからかもしれません。
独立してからは自分の行動で収入が決まります。その中で「どのようにやっていくか」を考えるのが楽しいのだと思います。
一歩踏み出す
独立開業する前は不安になることも多いかと思いますが、最後は一歩踏み出してみることでしかわからない世界も多いです。
私の監査法人時代の同期には独立開業した人も多く、環境に恵まれていたおかげで、私も経験者からいろいろと話を聞いていました。
しかし、百聞は一見にしかずで、独立して初めてわかること、勉強になることが多いです。
この記事を読んでくださった受験生の方々も、いろいろな情報が耳に入ってくると思います。
しかし、その情報の真贋を見極めるのは、自分自身で体験しないとわかりません。
合格後の世界は明るい世界です。ぜひ、受験勉強を頑張ってください!
【執筆者紹介】
金森俊亮(かなもり しゅんすけ)
2009年、大学を卒業した年に公認会計士試験に合格。2010年に大手監査法人に入所してキャリアをスタートさせる。監査法人時代は、6年目頃までは監査一筋でやっていたが、その後、監査もやりつつ非営利法人向けに会計に関するアドバイザリー業務も実施するようになる。会計アドバイザリーでは内部統制構築や会計基準導入支援を主に実施。2019年には、監査法人内でアドバイザリー事業部に異動し、上場企業向けにも会計基準導入支援等を経験。2020年7月より独立開業し、税理士登録も行い、税務顧問や確定申告書作成を行いながら、上場企業向けの会計コンサルティングや会計監査等の公認会計士業務を実施している。
Twitter(@Goldforest_CPA)
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