髙木 昭宏(株式会社M-Cass取締役)
【編集部から】 理解したつもりだったのに問題を解くことができない、覚えたつもりだったのに思い出すことができない、そんなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。 学習が進めば進むほど、このような“わかったつもり”に陥ってしまいがち。 そこで、そんな“わかったつもり”をなくす学習法について、簿記検定や税理士試験などの指導キャリアがあり、実務にも詳しい髙木昭宏先生(株式会社M-Cass取締役)にご紹介いただきます。 |
前回は、“わかったつもり”をなくす方法として「反転授業」方式の学習法をご紹介しました。
反転授業とは、簡単に言うと、講師と受講生の立場が入れ替わり、受講生自身がテーマについて説明したり、質問に答えたりする形式の授業をいいます。
「自分の言葉で説明する」という視点をもって勉強することで、より理解を深めることができるのです。
今回は、そんな反転授業の効果を体験してもらうべく、実際に私たち株式会社M-Cassが受講生に与えている課題例をご紹介します。皆さんも、ぜひチャレンジして、反転授業の世界に触れてみてください。
なお、参考までに解答例も示しますが、あくまで一例です。
反転授業方式の学習では、自分で調べて、考えて、説明することが大切です。自分ならどう調べて、どう説明するか、じっくり考えてみてください。
【テーマ1】現金預金について
1.現金及び預金(当座預金や定期預金など)で、それぞれどのような処理があるのか、自分なりに調べてみて列挙してみてください。
⑴ 期首の仕訳:
⑵ 期中仕訳:
⑶ 期末の決算整理仕訳:
2.上記仕訳の意味を説明してください。
3.現金及び預金について、過去の本試験問題を調べ、①出題頻度、②出題形式、③難易度、④対策といったことを自分なりに研究し、研究したことをまとめてみてください。
【テーマ2】引当金について
1.引当金の計上要件(4つ)を示してください。
(1)
(2)
(3)
(4)
2.引当金には、どのような種類があるのか、自分なりに調べて、列挙してみてください。
3.引当金について、過去の本試験問題を調べ、①出題頻度、②出題形式、③難易度、④対策といったことを自分なりに研究し、研究したことをまとめてみてください。
【テーマ3】有価証券について
1.有価証券の分類について、各有価証券の定義を会計基準に従い、示してください。
(1) 売買目的有価証券
(2) 満期保有目的の債券
(3) 子会社株式・関連会社株式
(4) その他有価証券
2.「基準」における有価証券(売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式・関連会社株式、その他有価証券)の評価とその論拠について説明してください。
(1) 売買目的有価証券
評価:
論拠:
(2) 満期保有目的の債券
評価:
論拠:
(3) 子会社株式・関連会社株式
評価:
論拠:
(4) その他有価証券
評価:
論拠:
3.有価証券について、過去の本試験問題を調べ、①出題頻度、②出題形式、③難易度、④対策といったことを自分なりに研究し、研究したことをまとめてみてください。
【テーマ4】減損会計について
1.減損会計の計算について、3つの段階で手順を示してください。
⑴ 第1段階:
⑵ 第2段階:
⑶ 第3段階:
2.減損会計について下記の点を説明してください。
⑴ 減損会計の処理の論拠について
⑵ 減損処理と減価償却は何が違うのか
⑶ 減損処理と時価評価とは何が違うのか
3.減損会計に関する会計基準について調べてください。
・減損処理に関する規定の「本文」
・上記処理に関する規定の「基本的な考え方」
4.減損会計の論点について、過去の本試験問題を調べ、①出題頻度、②出題形式、③難易度、④対策といったことを自分なりに研究し、研究したことをまとめてみてください。
【テーマ1】現金預金(解答例)
1.現金及び預金(当座預金や定期預金など)で、それぞれどのような処理があるのか、自分なりに調べてみて列挙してみてください。
⑴ 期首の仕訳:
現金及び預金×××/開始残高×××
⑵ 期中仕訳:
現金及び預金×××/資本金×××
現金及び預金×××/借入金×××
仕 入×××/現金及び預金×××
現金及び預金×××/売 上×××
建 物×××/現金及び預金×××
現金及び預金×××/現金過不足×××
現金過不足×××/現金及び預金×××
⑶ 期末の決算整理仕訳:
現金及び預金×××/雑 益×××
雑 損×××/現金及び預金×××
閉鎖残高×××/現金及び預金×××
2.上記仕訳の意味を説明してください。
開始仕訳を行う理由:前期の取引の結果である残高を当期の取引に反映させるため。
現金過不足の処理:現金の実際残高と帳簿残高の不一致の原因を調査し、原因が判明するまでの一時的な処理のこと。
決算時における現金過不足の処理:現金過不足の原因が決算時になっても不明の場合、収益又は損失として処理をする。
締切仕訳を行う理由:当期の取引の結果である残高を振替、資産・負債・純資産を集計するため。
3.現金及び預金について、過去の本試験問題を調べ、①出題頻度、②出題形式、③難易度、④対策といったことを自分なりに研究し、研究したことをまとめてみてください。
① 出題頻度:過去10回中8回出題
② 出題形式:現金預金の未処理、誤記帳、現金過不足の処理など
③ 難易度:易しい
④ 対策:現金過不足に関しては、期中処理なのか、それとも決算時の処理なのかを考える。
【テーマ2】引当金について(解答例)
1.引当金の計上要件(4つ)を示してください。
(1) 将来の特定の費用または損失であること
(2) 当期以前の事象に起因すること
(3) 発生の可能性が高いこと
(4) 金額を合理的に見積もることができること
2.引当金には、どのような種類があるのか、自分なりに調べて、列挙してみてください。
貸倒引当金・修繕引当金・賞与引当金・返品調整引当金・売上割戻引当金・特別修繕引当金・退職給付引当金など
3.引当金について、過去の本試験問題を調べ、①出題頻度、②出題形式、③難易度、④対策といったことを自分なりに研究し、研究したことをまとめてみてください。
① 出題頻度:過去10回中5回出題
② 出題形式:貸倒引当金の設定、退職給付引当金の設定・取り崩しなど
③ 難易度:易しい
④ 対策:貸倒引当金の設定と表示場所についてまとめる。
【テーマ3】有価証券について(解答例)
1.有価証券の分類について、各有価証券の定義を会計基準に従い、示してください。
(1) 売買目的有価証券
時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券のこと
(2) 満期保有目的の債券
満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券のこと
(3) 子会社株式・関連会社株式
子会社株式及び関連会社株式のこと
(4) その他有価証券
売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券のこと
2.「基準」における有価証券(売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式・関連会社株式、その他有価証券)の評価とその論拠について説明してください。
(1) 売買目的有価証券
評価:時価
論拠:投資者にとって有用な情報及び企業にとっての財務活動の時価によって求められることから、時価をもって貸借対照表価額とする。
(2) 満期保有目的の債券
評価:原則=償却原価、例外=取得原価
論拠:保有目的を考慮すると価格変動リスクを認める必要はないことから、取得原価もしくは差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法により評価する。
(3) 子会社株式・関連会社株式
評価:取得原価(個別の場合)
論拠:事実上の事業投資と同様に評価し、時価の変動を財務活動の成果でないと考え、取得原価により評価する。
(4) その他有価証券
評価:時価
論拠:売却される可能性があり、投資者にとって有用な情報及び企業にとっての財務活動の時価によって求められることから、時価にもって貸借対照表価額とする。
3.有価証券について、過去の本試験問題を調べ、①出題頻度、②出題形式、③難易度、④対策といったことを自分なりに研究し、研究したことをまとめてみてください。
① 出題頻度:過去10回中7回出題
② 出題形式:売買目的有価証券、その他有価証券の決算時の処理、満期保有目的の債券の償却原価法の適用(利息法・定額法)など
③ 難易度:難しい
④ 対策:必ず図式化して考える。
【テーマ4】減損会計について(解答例)
1.減損会計の計算について、3つの段階で手順を示してください。
⑴ 第1段階:減損の兆候
⑵ 第2段階:減損の認識
⑶ 第3段階:減損損失の測定
2.減損会計について下記の点を説明してください。
⑴ 減損会計の処理の論拠について
当初の期待とは違い、収益性が低下して、投下資金額の一部しか回収できなくなった場合、回収不能部分を損失処理することは、損益計算書により投資の成果を明らかにすることに役立つ。
⑵ 減損処理と減価償却は何が違うのか
減損処理:収益性の低下に伴う回収可能額の減額処理(資産負債アプローチ)
臨時償却:固定資産を取得する対価として支払った支出額を、各期に配分し、帳簿価額から減額させていく処理(収益費用アプローチ)
⑶ 減損処理と時価評価とは何が違うのか
減損処理:取得原価基準の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額である。
時価評価:決算時における資産価値を貸借対照表に表示することを目的とする。
3.減損会計に関する会計基準について調べてください。
・減損処理に関する規定の「本文」
固定資産の減損に係る会計基準
一 対象資産
二 減損損失の認識と測定1.減損の兆候 2.減損損失の認識 3.減損損失の測定等参照
・上記処理に関する規定の「基本的な考え方」
固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書
三 基本的な考え方1.~3.まで参照
4.減損会計の論点について、過去の本試験問題を調べ、①出題頻度、②出題形式、③難易度、④対策といったことを自分なりに研究し、研究したことをまとめてみてください。
① 出題頻度:過去10回中6回出題
② 出題形式:減損の兆候あり。各固定資産ごとに減損損失を測定するなど
③ 難易度:難しい
④ 対策:減損の認識に関しての比較と減損損失の測定に関しての比較の違いをまとめる。
【執筆者紹介】
髙木 昭宏(たかき・あきひろ)
株式会社M-Cass取締役
熊本大学大学院修了。専門学校や大学・企業にて、簿記検定講座やファイナンシャルプランニング講座で講師を15年以上担当。知りたい知識を覚えるのではなく、スッと体にしみこむような指導法で多くの資格試験合格者を輩出。税理士試験会計科目、日商簿記1級、建設業経理士1級などに合格。株式投資における幅広い知識と鋭い分析力にも定評がある。
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