12月17日に第71回(令和3年度)税理士試験結果が公表されました。
相続税法は、受験者数2,548人、合格者数325人、合格率は12.8%(昨年は10.6%)。合格率は少々上がりましたが、依然として低い傾向に。
税法科目の経験者が受験することが多く、ハイレベルな戦いとなる相続税法ですが、来年度の試験にチャレンジされる方も多いと思われます。
そこで、資格の学校TACで講師もしていらっしゃる税理士の梨井 俊先生に、当面の勉強のヒントを伺いました。
第71回(令和3年度)の合格率をみて
――今年の合格率について、先生はどのような印象をもたれていますか?
「合格率」自体は上がりました。ここ数年「鬼門」扱いで、勉強はしても受験自体は回避する方もいる相続税法に、ようやく明るい話題ができたのは、講師としても嬉しいです。
合格者としても受験者2,548人に対して325人。前回が受験者2,499人に対して264人です。前回の合格率が低かったというのも1つありますが、数字を見た率直な感想としては「今年の合格率は高い!」です。
とはいえ、実際に受験した方々にとっては本当に苦しい2時間だったと思います。問題の難易度は本当に高かったです。
1つこぼれ話があって、専門学校講師は毎年、本試験当日に集まって解答速報の概案を作成するのですが、今回の問題は本当に難しかったので、解散時間が例年より2時間近く遅かったです(笑)。
われわれ専門学校側としても、あの分量の計算問題を解くのは非常に骨が折れ、あの理論を限られた答案用紙(4枚)にまとめるのは大変でした。
当日、あの問題に直面した皆様は本当に頑張ったと思います!
次に向けて、どのように勉強すべき?
――相続税法の勉強の一番のポイントは何でしょうか?
平成27年施行の基礎控除と税率の改正以降、税理士試験の勉強をしていない方も「相続」や「相続税」に興味関心を持つようになりました。
これに併せて、専門家として「知っている≒申告書が作成できる」だけではなく、「話せる≒課税の有無や仕組みの説明ができる」力が税理士にも求められており、試験にもその傾向が表れているように感じます。
事実、税理士会の所属支部や関係各所での相談業務に参加すると、相続税に関する質問が多いです。
とはいえ、合格を目指す方にまずしっかり伝えたいのは、「専門学校の教科書や問題集、演習、答練をしっかり勉強してほしい」ということ。
経験を重ねるほど忘れがちですが、税理士試験は相対試験。「誰もがやっていることを誰よりも速く正確にできる」ことが合格への近道です。ここは間違いありません。
――そのうえで、これから当面どのように過ごしていけばよいでしょうか? まずは「理論」から教えてください。
国税庁ホームページから制度、パンフレットやQ&A、あらましを。あとは、税務大学校の税大講本に目を通してみてください。
いまひとつ理解していないと感じる論点だけではなく、得意だと思っていた部分も、専門学校の教科書以外の視点から説明してもらうことで、本質や具体例の理解が抜けていることに気づくかもしれません。
私は受験生時代、他の科目ですが、直前期に昼ご飯と散歩がてら、当時通学していた校舎最寄りの税務署に一般納税者向けのチラシをもらいにいき、それを使って要点の確認もしていました。
個人的に、事例形式の理論問題の解答形式としては、下記をおすすめしているのですが、この①や③も、国税庁ホームページのQ&Aのような簡潔な表現を参考にしています。
① 結論を端的に述べる ↓ ② 関連条文を挙げる ↓ ③ 本件事例に条文の表現をあてはめる |
――「計算」はいかがでしょうか?
これも国税庁ホームページの話になるのですが、「質疑応答事例」は運がよければ本試験でそのまま同じ論点が出てくることもあります。
ただ、この話には気をつけなければいけないことがあって…。質疑応答事例で見た論点がそのまま本試験に出てきたとしても、「その問題が解けるか」や「その問題を解くべきか」は別の話です。
質疑応答事例には専門学校の教科書の例題にあるような解説がないときもありますし、たとえ最終値まで合わせることができるレベルであったとしても時間がかかり、他の問題を解く時間がなくなっては、むしろ合格から遠ざかってしまいます。
私のように専門学校の教材以外を参考にして合格した人もいれば、専門学校の教材を何度も回すことで理解を深めて合格している人もいます。
最初の話に戻りますが、一番大切なのは「誰もがやっていることを誰よりも速く正確にできる」ことです。
令和4年(第72回)の本試験は8月の第一週。気を抜いていると周りに追いつくための時間も必要になるので、結構あっという間です。頑張ってください!!
――参考となるお話をありがとうございました!
【お話を聞いた人】
梨井 俊(なしい・しゅん)
税理士
資格の学校TACで相続税法の講師を務めるかたわら、月次顧問を主な業務とする開業税理士。大学受験の学習塾で英語講師を8年間務めた経験から、学習法や覚える仕組みを資格試験の勉強にもあてはめ、活用法や座学と実務の違いなど、積極的に情報発信も行っている。
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