税理士 矢野 太久(やの もとひさ)
みなさん、はじめまして。高知県で税理士をしております矢野太久です。
いよいよ税理士試験の合格発表が間近となりました。結果を受けて、現在の学習スタイルを継続する方、または、学習スタイルの変更を検討する方もいることでしょう。
そこで今回は、前編・後編の2つに分けて、「税理士試験の学習スタイル」についてお話しします。
私は受験生時代、独学に専門学校、専門学校では通信講座も通学講座も利用するなど、さまざまな学習スタイルを経験しました。
これからお話しする内容は、あくまでも私自身の経験から、私自身が感じたことです。実際は人それぞれに個人差があるので、1つの意見として参考にしていただければ幸いです。
前編では、「独学」か「専門学校」か、私の経験に基づいて、それぞれの特徴をご紹介しました。
後編は、同じ専門学校でも、「通学」か「通信」かという視点でお話しします。
通学のメリット・デメリットは?
通学講座には主に2つの学習スタイルがあり、1つは教室でライブ講義を受講する「教室講座」、もう1つはあらかじめ収録された講義を視聴する「オンデマンド講座」です。
私は簿記論に合格後、資格の大栄の「教室講座」で財務諸表論を学習しました。
ここで簿記論からの学習スタイル(独学→資料通信→答案練習のみ参加)を変更したわけですが、その理由の1つは、簿記論の合格までの道のりが長かったからです。
結果的に、財務諸表論には1年で合格できたため、1人で勉強することしか知らなかった私にとって、ライブ講義は画期的なものであったかもしれません。
通学講座のメリットは、疑問点をその場で講師に相談できることや、すぐに自習室を使用できることです。
1人で学習することが苦手な方や自宅で集中して学習することができない方は、通学講座の利用をおすすめします。
なによりも、同じ志をもつ受験仲間と出会えるので、自分自身も触発されることでしょう。
逆に、通学講座のデメリットとして、時間に制約がある方は、通学することが困難になり、カリキュラムを遂行できなくなる可能性があります。ただし、オンデマンド講座を併用することで、そのようなデメリットを補うことができます。
通信のメリット・デメリットは?
通信講座のメリットは、いつでもどこでも講義を視聴することができ、通学講座で要する通学時間を学習に充てられることです。仕事が忙しい方や子育て中の方など、夜にしかまとまった時間を確保できない場合は「通信講座一択」となるでしょう。
専門学校によりますが、通信講座にはWeb講座、DVD講座、資料講座が用意されています。
Web講座は、スマートフォンでも講義を視聴することができるため、どこでも勉強ができます。また、配信期間が定められていることから、視聴しなければいけない状況に置かれることも、欠点でありながら利点であるといえます。
DVD講座は、Web講座と比較して受講料が高いこと、テレビやDVDプレーヤーなどがない環境では視聴できないことが欠点でしょう。また、Web講座のように配信期間に縛られることがないため、自己管理を徹底しないと視聴する機会を先延ばしにしてしまう可能性もあります。
資料講座については、私も簿記論で利用しており、前回も紹介しました。独学をしつつも専門学校の水準で学習をしたい方には、低コストでおすすめの方法です。
現在は、通学講座と通信講座(Web、DVD)の水準は同様であると思います。
なぜなら、通信講座でも質問事項が生じた場合は講師にメールすることができますし、通信講座の講義はいわゆる「人気講師の講義」であったりします。
また、わかりにくいテーマは繰り返し講義を視聴することで理解できます。
通学講座と同様に、専門学校がしっかりとしたカリキュラムのもと合格へ導いてくれるでしょう。
専門学校をチェンジすることも1つの方法
専門学校の選び方についてもお話ししたいと思います。
私は、どの専門学校でも、苦手な論点を残さずに学習すれば合格することができると考えています。
しかし、受験生は周りの声が聞こえてくる環境に置かれているため、「税法を勉強するなら○○専門学校のほうがよい」などと聞くと、気になってしまいがちです。
その場合は、○○専門学校に変えてみてもいいと思います。
税理士試験はメンタル管理も大切であり、○○専門学校に変えたことでモチベーションを上げることができるかもしれません。
ただ、学校によって理論の言い回しや計算方法が異なっている場合があります。そのようなギャップに戸惑って調子を崩してしまうようでしたら、今の専門学校で引き続き学習すべきです。
また、今回は紹介しませんでしたが、大学院で修士学位を取得するなど、税理士受験生の学習スタイルは多様です。
自分自身の生活スタイルをしっかり分析し、自分に合った学習方法を確立することが合格のきっかけとなるでしょう。
メッセージ
最後に、AI技術が発達するなかで、税理士業務がAIに奪われてしまうのでは、ということを見聞きした方は少なくないと思います。
そして、このまま受験を続けていいのか悩んでいる方もいるでしょう。
たしかに、領収書やインターネットバンキングのデータから仕訳を自動で作成することが可能となりました。
しかしながら、事業計画書の策定支援や税務相談、事業承継などface to faceで行うべき業務はたくさんあります。そして、face to faceの業務であるからこそ、税理士自身が経営者から学ぶことも多々あります。
税理士試験は難しい試験であることから、学習で行き詰まったとき諦めたくなることがあります。
そこで諦めてしまうと、税理士になりたいという夢が「夢」で終わります。そのようなときは、なぜ税理士になりたいか考え、みなさんの合格体験記を読み、モチベーションを上げて引き続き学習を続けてください。
税理士試験に合格した人は必ずこう言います。
「諦めなければ必ず合格することができる」と。
この内容が皆さんの一助となれば幸いです。
〈執筆者紹介〉
矢野 太久(やの もとひさ)
税理士/矢野税理士事務所 副所長
1983年生まれ。普通高校を卒業後、専門学校へ進学し簿記を学ぶ。専門学校を卒業後、税理士事務所の仕事と試験勉強を両立し税理士資格を取得。2018年税理士登録。
従来の税理士業務のほか、経営計画策定支援、黒字化支援、事業承継支援などを行う。また、クラウド会計を利用した経理の効率化など、時代に即した会計・税務をモットーとする。
●矢野税理士事務所ホームページ
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