並岡 雅人
(資格の大原 税理士講座 講師)
【編集部】
税理士試験の税法科目には、学習ボリュームが比較的少ない、いわゆる「ミニ税法」とよばれる科目があります。
その特徴から「すぐに合格できるのではないか」といった声もあれば、逆に「いやいや、難しいって聞くよ」という声も聞きます。
そんなウワサが飛び交う「ミニ税法」ですが、一部の科目は受験者数が増加傾向に。
また、1月から学習をスタートできる科目としてミニ税法への興味も高まるタイミング。
そこで今回、資格の大原 税理士講座で国税徴収法を担当されている並岡 雅人先生に、よく受験生から寄せられる質問に答えていただきました!
12月17日(金)は、令和3年度税理士試験の合格発表日。
この合格発表を受け、来年1月からミニ税法の学習を検討される方、また、新たに税理士試験へのチャレンジを決心して科目選択に迷われる方などがおり、まさにミニ税法への関心が高まるタイミングを迎えようとしています。
そこで、科目選択にまつわる不安を解消し、自信をもって税理士試験に挑戦できるように、よく寄せられるミニ税法に関する疑問について、Q&A形式でお答えします。
ミニ税法は合格しやすい?
合格しやすい科目、勉強がラクな科目はどれでしょうか?
この質問は大変多く、誤解も多くありますので、詳しく説明いたします。
ミニ税法というと、主要科目に比べて少ない勉強量で合格レベルまで達することができるという性格から、とかく合格しやすい、勉強がラクといったイメージをもたれがちです。
しかし、少ない勉強量で合格レベルまで達することができるということは、受験生のほとんどが合格レベルまで達しているということになります。
ここで、科目選択にあたって確認していただきたいのは、各科目の合格率です。
税理士試験の受験科目は、簿記論・財務諸表論による「会計科目」のグループと、その他の「税法科目」のグループに分かれます。
会計科目は、毎年の合格率を平均すると各科目で20%台の合格率となりますが、各税法科目は高くても13%台の合格率です。
合格率は、毎年それぞれの科目で増減がありますが、だいたいの平均値としてご理解いただければと思います。
税理士試験は競争試験であり、税法科目であれば上位13%しか合格できないということになります。
「何点以上を取れば、全員合格」という試験ではないことをご確認ください。
つまりは、各科目とも、合格するために必要となる知識の習得は当然こなさなければいけませんし、さらにそこから上位13%に食い込むための勉強も必要になります。
次回の記事でミニ税法の勉強法について説明いたしますが、ここで一番必要となるのが「ケアレスミスを減らす」ということです。
このようにミニ税法では、合格レベルまで達する勉強以外に、他の受験生に差をつけるための地道な勉強が必要となります。
合格レベルまでの勉強量が少なくて済むということは、けっして合格しやすい、勉強がラクということではありません。
特にミニ税法では、上位13%台に食い込むためのさらなる努力が必要になるということをご理解ください。
それでも主要科目に比べれば、各段に少ない勉強量で合格を狙えるのがミニ税法です。
ミニ税法は1つのミスが命取りになる?
ミニ税法は1つのミスで不合格になる可能性が高く、合格しにくいのでしょうか?
税理士試験の受験科目であれば、どの科目であってもこのようなリスクは存在します。
本試験で出題された問題が基本的な内容であれば、当然に合格点は上がります。
しかし前述したように、ケアレスミスを少なくする練習を行ってきた方は、そのなかでちゃんと上位13%に食い込んでいきます。
合格するための勉強量が少ないミニ税法では、主要科目から比べると、このような状況が起こる可能性が若干高いかもしれませんが、出題傾向によります。
「稀にそのようなこともある」といった程度にご理解いただければと思います。
毎年、ハイレベルな戦いが繰り広げられているわけではありませんので、ご安心ください。
ミニ税法は実務で役に立つ?
ミニ税法は実務で活用できず、役に立たないのでしょうか?
特に固定資産税、国税徴収法について、このようなイメージをおもちの方も多いのではないでしょうか。
たしかに所得税、法人税、相続税、消費税と比べると、そのような傾向が強く出てしまいますが、けっして使わない知識ではありません。
固定資産税であれば「償却資産の申告代行」や、国税徴収法であれば「災害等を受けて税金が払えない納税者の救済措置」なども学びます。
実務重視型の科目選択を行うのであれば、主要科目から選択することになると思われますが、受験生の皆さまの多くは働きながら勉強されています。
「1年でも早く資格を取得したい」という目的のために、主要科目よりも少ない勉強量で合格レベルまで達することができるミニ税法を選択される方が多くいらっしゃることも事実です。
皆さまの目的に応じて、ご自分が納得する科目選択をご検討いただければと思います。
<執筆者紹介>
並岡 雅人(なみおか・まさと)
平成10年より資格の大原で、国税徴収法の教鞭をとる。
新型コロナウイルスの影響を受ける前は、通学コースだけで200人程度の受講生を担当し、多くの合格者を輩出する。今期は通信教育も担当し、さらなる活躍が期待されている。