井上 修
(福岡大学准教授・公認会計士)
前回は、令和4年公認会計士試験(第Ⅰ回短答式試験)に向けて、超直前期(2~1週間前)の過ごし方についてお話ししましたが、今回は試験当日の持ち物や心構えについてお伝えします。
1.試験当日の持ち物は?
受験生時代に私が会場に持っていった教材は、ケアレスミスノート(計算)、原価計算基準、超直前に暗記した論点のまとめメモ、ウォーミングアップ用の計算問題でした。
ウォーミングアップ用計算問題は、直前期になると理論を中心に勉強していたため、休憩時間に数問解いて感覚を確認するために持っていきました。特に、解く流れ(問題文の読み込み→落とし穴のチェック→下書き→電卓入れ)を確認します。
直前期に理論学習が中心になっている方は、このような計算問題を用意しておくとよいでしょう。
原価計算基準については言うまでもありません。絶対に2~3問は出題されると決まっているので、確実に仕留めるためにも入念にチェックしていました。
2.“ナニコレ問題”が出たらチャンス!
試験当日は、見たことも聞いたこともないような“ナニコレ問題”が出ることもあります。あらかじめ、そのことを想定しておいてください。
ただし、そのような問題が出れば出るほど、合格する可能性がより高くなります。なぜなら、周りが焦るからです。
そして、“ナニコレ問題”に直面したときこそ、次のことを思い出してください。
・合格に必要な知識は基本的な論点だけ ・自分に解けない問題は他の人も解けない ・難しければ合格ラインは下がる ・時間配分を適切に、ケアレスミスをしない |
さて、ナニコレ問題ついでに、いわゆる「捨て問」をどうするかも話しておきましょう。
まずは、その問題が果たして「捨て問」であるかどうかの判断は慎重にしてください。
そのうえで「捨て問」と判断した場合は、1つだけでも選択肢を切ることができないかを検討してみてください。
6分の1の確率で当てるのと、5分の1の確率で当てるのとでは、だいぶ変わってきます。
運に頼るしかない場面であっても、最大限のパフォーマンスを目指すことを忘れないでください。
3.自己採点をする前提で受験しよう
人にもよりますが、私は学生たちに、試験が終わった後は自己採点をするように指導しています。
なぜなら、すぐに新たな気持ちで勉強に取り組むことができるからです。
もちろん、思わしくない点数だった場合は不安が生じるかもしれませんが、それならば「今すぐやるべきこと」が決まってきます。
合格発表までに無駄な時間を過ごさないようにするためにも、なるべく自己採点は行うようにしましょう。
4.本試験はいつも簡単!?
最後に、今回の試験も難しい問題が多く出題されるかもしれません。
ただし、もう一度思い出してほしいのは、公認会計士試験は「相対試験」だということです。
満点や一定の合格点をとらなければいけない「絶対試験」なら、難易度によって、合格できるかどうかが変わってきます。
しかし、相対試験の場合は、難易度によって合格者数が変動することはありません。
高得点をとることが難しい場合は、そのぶん合格ラインが下がるだけです。なにか特別に高度な知識が必要とされるわけではありません。
合格に必要なことは、基本的な論点と重要な論点をしっかりとれるかどうか。なんだか物足りないと感じても、合格ラインに達しさえすれば合格できるのです。
このように、要求されるのが基本的な論点と重要な論点だけである以上、本試験は「簡単」ともいえるかもしれません。
合格できないような場合は、絶対にとるべき基本的な論点や重要な論点を落としたからです。決して、他の受験生も解けないような難問を解けなかったからではありません。
どんなに難しい問題が出される試験であっても、合格に必要なレベルは変わりません。むしろ、タイムマネジメントやケアレスミス対策のほうが、よっぽど合格を左右します。
「とるべき問題をとれば合格できる! 自分の今の力を発揮すれば合格できる!」と自信をもって本試験に臨んでください!
〈執筆者紹介〉
井上 修(いのうえ・しゅう)
福岡大学准教授・公認会計士
慶應義塾大学経済学部卒業。東北大学大学院経済学研究科専門職学位課程会計専門職専攻、同大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。研究分野は、IFRSと日本基準の比較研究、特別損益項目に関する実証研究。福岡大学では「会計専門職プログラム」の指導を一任されている。当プログラムでは、現役の大学生が多数、公認会計士試験や税理士試験 簿記論・財務諸表論に在学中に合格を果たしている。本プログラムから2018年は10名、2019年は5名、2020年は6名が公認会計士試験に合格。