平井 孝道
(株式会社M-Cass 代表取締役)
【税理士試験】タイプ別に見直そう! 合格発表日までの過ごし方もご覧いただくと、より効果的に本記事をお読みいただけます。
なぜゴールまでの見通しが重要なの?
税理士試験の学習範囲は膨大です。あなたの手元にある教材もテキスト、問題集、答練などかなりの分量になってることかと思います。
ここで注意すべき点は、「やるべきことが整理されていない」という状態です。頭の中だけで、あれもこれもと、何をやればいいのか明確に分からない状況で学習を進めることは、暗闇の中をライトも点けずに進むのに等しく、これでは本当に最短距離でゴールに向かっているのか判断できません。何より先が見えないため、大きなストレスを感じます。
そのため、ゴールを定め、そこまでの道を見えるように、来年度の試験までの学習スケジュールを立てることが重要です。
学習計画を立てるための4つのステップ
ゴールまで最短距離で進むにはどうすればよいのでしょうか? それは「ゴールからスタートを結ぶ」ことです。
ゴールまでの見通しをつける学習計画の立て方としては、以下のような方法が考えられます。
STEP1 あなたの最終目標を書きましょう → 最終ゴールをまずは確認します。 STEP2 過去問集から頻出の論点をピックアップしましょう → 合格のために必要なことを確認します。 STEP3 論点表を作り、月間スケジュールに入れましょう → 月単位に論点を入れてゴールまでの見通しを立てます。 STEP4 月間スケジュールから週間スケジュールに落とし込む → 目の前のやるべきことを確認します。 |
STEP1について
税理士試験もゴールではありますが、ここでは、その先の「税理士試験に合格したら何がしたいのか」ということを考えてください。
合格のその先を見据えることで、税理士試験は、あくまでも最終目標の通過点に過ぎなくなります。
そうなることで、「税理士試験はただの中間目標」という意識が生まれ、税理士試験に対する心理的ハードルが下がります。
STEP2について
ゴールである税理士試験の問題をまずはしっかりと見てみましょう。
そして、過去数年分の問題から頻出の論点をピックアップしてみてください。そのことで、合格のために何が必要なのかが肌感覚でわかり、合格に直結した学習が可能となります。
STEP3・4について
マスターすべき論点を月間や週間スケジュールに落とし込むことで、ゴールまでの見通しを立てることができます。
このとき、論点1回目を「理解度重視期」、2回目を「記憶定着」といったかたちでテーマを設定してもよいでしょう。
本試験までに絶対にマスターすべき論点を月単位や週単位のスケジュールに入れてみることで、本試験までに何を、どのくらいのペースで学習していけばよいのかということが客観的に明らかになり、頭の中だけで考えていたことがかなり整理できます。
実際に学習計画を作ってみよう
STEP1 あなたの最終目標を書きましょう
あなたの真に望む理想像やライフプランなど、好きなように書いてみましょう。
例:平屋の一軒家に住む ・理想の上司がいる税理士法人で仕事をする
STEP2 過去問集から頻出の論点をピックアップしましょう
過去の出題から、典型的で得点源となる論点を列挙し、その数も数えてみます。
例:
①現金預金 ②棚卸資産の評価 ③投資有価証券 ④減価償却 ⑤リース会計 ⑥減損会計 ⑦資産除去債務 ⑧賞与引当金 ⑨退職給付引当金
STEP3 論点表を作り、月間スケジュールに入れましょう
仮にSTEP2で挙げた9個の論点をピックアップしたとし、それを月間スケジュールに入れ込むと、次のように1ヵ月に2個程度の学習をしていけばよいことわ分かります。
10月:①現金預金 (理解度重視)
11月:②棚卸資産(理解度重視)、①現金預金(記憶定着)
12月:③投資有価証券(理解度重視)、②棚卸資産(記憶定着)
1月:④減価償却(理解度重視)、③投資有価証券(記憶定着)
2月:⑤リース会計(理解度重視)、④減価償却(記憶定着)
3月:⑥減損会計(理解度重視)、②・③・④(記憶定着)
4月:⑦資産除去債務(理解度重視)、⑤・⑥(記憶定着)
5月:⑧賞与引当金(理解度重視)、⑦資産除去債務(記憶定着)
6月:⑨退職給付引当金(理解度重視)、⑧賞与引当金(記憶定着)
7月:①~⑨(記憶定着)
8月:本試験
論点1回目の理解度重視の勉強としては、1ヵ月に1個学習していけば、ゴールである本試験までに十分間に合うという見通しを立てることができます。
そして、記憶定着のための復習を1個~数個入れてみることで、大まかではありますが、やることが明確になります。
STEP4 月間スケジュールから週間スケジュールに落とし込む
さらに、月間スケジュールの内容を週間スケジュールに落とし込むことで、よりやるべきことが明確になります。なお、この学習計画はあくまでも、現時点からゴールまでの見通しをつけるものですので、厳密に守る必要はないかと思います。ですが、この「ゴールまでの見通し」を立てることで、暗闇を走る感覚から抜け出ることができます。
月曜日:①現金預金のテキストを使ったインプット
火曜日:①現金預金の問題集によるアウトプット
水曜日:①現金預金の問題集によるアウトプット
木曜日:①現金預金の答練によるアウトプット
金曜日:①現金預金の過去問によるアウトプット
土曜日:①現金預金の論点についてまとめる
日曜日:お休み
1つの論点をマスターする際のポイントとして、「一点集中学習」は非常に効果的です。
つまり、1つの論点につき、「テキスト」→「問題集」→「答練」→「過去問」と集中学習をすることで、問題の資料の与え方から、問われ方、解法パターンまで、その論点の「キモ」が見えてきます。ここまでくると、その論点のプロとなり、理解度が非常に増します。理解度が増すと記憶の定着率があがります。
しかし、時の経過とともに忘却していきますので、その見えた「キモ」を忘れないうちに、手持ちのテキストやノートにまとめておくとよいでしょう。なお、このとき「自分の言葉」でまとめることを忘れないでください。これは、合格者の共通点でもあります。
人生の見通しがつかないとストレスに
国家試験の受験勉強は非常にストレスがかかると感じている方も多いのではないでしょうか?
その理由として、勉強内容のレベルの高もありますが、もう1つ、いつ合格できるのか保証がない、人生の見通しがつかないという不安も一因として挙げられると思います。
出口が見えない暗闇の中を歩くのはものすごく怖いですよね。ですが、学習計画を何も立てずに、学習の見通しがつかないまま勉強を進めるというのは、実はこれと同じことをしているのに等しいのです。そうであるならば、多少面倒でもこの時期に一度、学習計画を立ててみて、ゴールまでの見通しを自分なりにつけてみてください。このことで、本試験までに何をやればよいのか、とありえず明確になります。一見、面倒くさくて何気ないことではありますが、ゴールまでの見通しがつくというのは非常に精神衛生上よい効果をもたらします。
ぜひ、ご自身の学習に取り入れてみてこのことを感じていただけたらと思います。
【執筆者紹介】
平井 孝道(ひらい・たかみち)
株式会社M-Cass 代表取締役
日商簿記検定1級合格、税理士試験2科目合格、公認会計士試験合格。専門学校や大学で、簿記検定講座(3級~1級)や税理士講座(簿記論)、公認会計士講座(財務会計論・管理会計論)などの15年を超える指導キャリアをもつ。
※ 本記事は、会計人コース2018年11月号「実力チェック! 怒涛の仕訳28本【秋の陣】」の一部を編集部で再構成したものです。該当号はこちらからお買い求めいただけます。