将来は税理士 or 会計士? タイプ別に考える、自分に合った進路選択のススメ


渡邉 圭
(千葉商科大学基盤教育機構准教授)

本記事では、大学生が日商簿記検定の受験後に、その学びを活かした職業を目指す場合、どのような判断基準で進路を選択すればよいか、私が指導している千葉商科大学 会計教育研究所「瑞穂会」(以下、瑞穂会)を事例に紹介します。

瑞穂会では、①公認会計士、②税理士、③教職(高校商業)、④公務員(国税専門官など)、⑤民間企業、という5つの進路のいずれかを選択する学生が多いです。

特に、日商簿記2級までを取得した時点で、最終的に公認会計士を目指すか、税理士を目指すか、迷う学生が多くいます。

そこで、私が進路指導をするときに、学生に毎回質問している項目や、伝えている心構えなどをお話します。

本記事が、大学生の皆さんにとって、進路形成のための判断材料の1つになれば幸いです。

自分に合う、将来のポジションはどこか?

私たちは、人生のほとんどの時間を仕事に費やします。そのため、多くの人は「好きなことを仕事にしたい」と考えます。しかし、この「好きなこと」が見つからない場合がほとんどです。

テレビなどでもよく見る東進ハイスクールの林 修先生から、働き方について考えるときは、「好きなこと」・「イヤなこと」という基準に加えて、自分に「できること」・「できないこと」という基準を取り入れるとよい、というお話を聞いたことがあります(林修『林修の仕事原論』、青春出版社、2016年)。

以下の図は、この考え方を私なりにアレンジしたものです。進路指導の際には、これを学生に見せ、現在の自分のポジション(①・②)と将来どのポジションにいたいか(③・④)を質問しています。

皆さんは、図に書かれている①~④のうち、どのポジションが合うと考えるでしょうか? ①・②のいずれか、③・④のいずれかを選択してください。③・④でいう「経験」とは、目指すべき資格の取得や実務という意味です。

瑞穂会では、公認会計士・税理士に興味関心があるものの、まだ勉強中で目指すべき資格が取得できていないため、現在のポジションとしては①を選択する学生が多いです。ただ、このように何らかの目標がある学生は、いずれは①から③にシフトしたいと回答する傾向にあります。

また、将来のポジションを③と回答するのは、公認会計士・税理士に興味がある学生だけではなく、公務員・民間企業を目指す学生も同じです。一方で、将来のポジションを④と回答する、公務員や民間企業を目指す学生も多くいます。同じ公務員・民間企業というカテゴリなのに、自分に合う将来のポジションが③と④で別れるのは面白いところかもしれません。

これは一概には言えませんが、「仕事とプライベートを分けたいか、分けなくてもいいか」という判断基準がはたらいているのではないかと思います。

私がこのように考えているのは、自分に合うと思っている働き方が③だからです。私は、教員として働いていますが、あまり勤務時間を意識したことがありません。試験の直前期には、勤務時間外も学生たちと一緒に模試を解き、Microsoft Teamsを利用し、質疑応答もしています。

ときには深夜まで教材をまとめることもありますが、よりよい授業を学生たちに提供するためには必須の作業です。また、瑞穂会全体の学習スケジュールから個々の学生に合った学習プランに調整することも考えなくてはいけません。長期間、一緒に勉強してきた学生たちなので、休日中も学習プランをいろいろと考えてしまいます。

しかし、一度も苦痛に感じたことはありません。その意味で、私の働き方は③が合っているのだと思います。

公認会計士・税理士になった場合、企業は人よりも寿命が長く、税は人生の終わりまで課されるので、家族よりも長い時間を過ごす顧客がでてくるかもしれません。また、新しい専門的な知識を勤務時間外に学習することも、公認会計士・税理士には求められます。最近では、2021年10月1日から登録が開始された消費税のインボイス制度がありますね。

そのため、個人的な見解ではありますが、③を選択した学生に対しては、公認会計士・税理士を勧めています

また、④を選択した学生には、自分の生き方の原則、その原則を守るルール(基準)について考えさせます。

たとえば、自分の生き方が原則、「仕事とプライベートを分けたい」だとします。原則が決まったら、それを守るために、「家庭に仕事を持ち込まない」「休日は家族と過ごす」などのルールを決める必要があります。

たとえば、自分の生き方として原則、「仕事とプライベートを分けたい」だとします。原則が決まったら、それを守るために、「家庭に仕事を持ち込まない」「休日は家族と過ごす」などのルールを決める必要があります。

これは財務会計も同じで、日本には「概念フレームワーク」・「企業会計原則」という会計諸原則があります。その会計原則を守るため、また具体化するために多くの会計基準が整備され、財務会計の基盤が構築されています。

このように、進路指導の際にちゃっかりと、「会計原則」と「会計基準」構造について教えたりしています。

自分が学んだ経験を、どの場面で活かしたいか?

公認会計士・税理士に興味のある大学生の皆さんに向け、それぞれの業務の特徴を簡単にお話します。

主たる業務として、公認会計士は監査業務、税理士は税務・経営コンサルティング(助言)・納税手続き代行業務です。

監査業務を通して、適正な財務情報を投資家や財務諸表利用者に提供し、健全な資本市場の形成を図る、というマクロな社会貢献に興味がある方は、公認会計士に向いています。

また、税務・経営コンサルティング業務などを通じて、顧客が企業経営に集中できる環境を整える、というミクロな社会貢献に興味がある方は、税理士に向いています。

税理士の場合は、顧客の企業規模にもよりますが、日本全体の企業のうち99%は中小企業なので(総務省「平成26年経済ネンサスー基礎調査(参考表5)」2015年)、地域に密着した社会貢献を行うことが求められます。

また、上記の調査では、都心と地方を比較すると地方のほうが中小企業の割合が多いとされています。そのため、税理士は全国で需要がある職業であるといえます。

次回は、公認会計士・税理士を目指す方に向け、試験合格のための心構えや学習プランを紹介します。今回とあわせて参考にしてみてください。

<執筆者紹介>
渡邉 圭(わたなべ・けい)
千葉商科大学基盤教育機構で准教授を務める傍ら、会計教育研究所「瑞穂会」で税理士試験講座(簿記論・財務諸表論)と日商簿記検定1級~3級講座を開講し、ともに多数の合格者を輩出している。

千葉商科大学 会計教育研究所「瑞穂会」
会計教育の実践の場として、千葉商科大学の学生を対象に、日商簿記検定、税理士試験科目(簿記論・財務諸表論)の講座を開講し、無料で受験指導を行っている。専用の教室を有し、専任教員が常駐して学生の受験指導にあたる。現在、多くの合格者を輩出しており、毎回の合格率は全国平均を大きく上回る。また、大学の授業と資格試験の両立に悩む学生に効率的な学習方法をアドバイスするなど、個々の学生の状況に応じた細やかな指導を行っている。
HP:https://www.cuc.ac.jp/iaer/mizuho/index.html


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