税理士試験や公認会計士試験の受験生の皆さんは、専門学校で学習をされている方も多いと思います。
このように、専門学校といえば「受験のため」というイメージがありますが、もしかすると、それだけではないのかもしれません。
というのも、公認会計士・税理士・不動産鑑定士とマルチに資格をもつ石川 浩之先生が、専門学校の税理士講座で「相続税法」を学ばれると耳にしたので、その動機や目的についてお話を伺いました。
公認会計士試験に合格し、税理士登録後、都内で相続に強い税理士法人勤務を経験し、現在は沖縄で相続に特化した事務所を開業されている石川先生。
そんな石川先生が、専門学校で改めて学ぼうと思われたのはなぜなのでしょうか?
「実務家が専門学校へ?」という編集部の興味から実現したインタビュー。
限られた時間で理解を深める学習法、専門学校を選ぶときのポイントなども、たっぷりお話しいただきました。
実務で触れない論点を学びなおすために専門学校へ
――実務家として活躍しながら、専門学校の税理士講座を受講したきっかけを教えてください。
石川先生 相続税法に限った話ではないのですが、受験勉強には「広く浅く知識を吸収できる」というメリットがあると思っています。
私は沖縄で税理士業をしているのですが、地方だと同じような案件が多く、意識しないと必要に迫られた部分だけを勉強しがちなんです。
実務に関する本を読むといっても、1人で勉強しようとすると、私だけかもしれませんが、自分の興味のある範囲ばかりに偏ってしまいます。
また、ただ本を読むだけでは「自分はこう思う」で終わってしまうので、どこかで勘違いをしていても、それに気づけない可能性もあります。
そのため、合格して実務に携わっている今だからこそ、「税法を網羅的に勉強したい」と考えています。
この点、専門学校は、言ってしまえば強制的に、そして満遍なく勉強することが可能な場所なので、定期的に講座を受けるようにしています。
――なるほど。ということは、今回がはじめてではないのですね?
石川先生 そうですね。数年おきに受講していて、相続税法は税理士登録をしてから3回目です。
改正論点は実務でも追うのですが、普段あまり触れない論点だと忘れてしまいます。
たとえば、私の場合は「上場有価証券の評価」などですね。世間一般ではメジャーな論点だと思いますが、沖縄だと上場有価証券を持っている方はめったにいません。
そのようななかで目の前の実務だけをしていると、いつのまにか他の論点を忘れてしまうので、定期的に専門学校の講座を受けるようにしています。
相続税法だけでなく、消費税法や法人税法にも2回ずつ申し込んでいますよ。
――今回、クレアールの初学者コースを受講したと伺いました。こちらを選んだ理由はありますか?
石川先生 理由といった理由は特にありません。というのも、私が公認会計士試験に合格したのは10年以上前なのですが、クレアールはそのときから利用しています。
また、実務に携わっている今、専門学校の講座を受ける目的としては「普段の実務であまり触れない論点を見直す」ということなので、最初から網羅的に勉強するという意味でも、今回に限らず毎回「初学者コース」を選んでいます。
私は、実務で一番怖いのは「論点に気づかないこと」だと考えています。うっかりミスなどもたしかに怖いですが、自分でしっかりチェックすれば、そこまでミスが生じることはありません。
それよりも怖いのは、なにかミスをしていても、「あれ、おかしいかも」と気づかないことです。
「これってどういうことだっけ?」と取っ掛かりがあれば調べることもできますが、それにさえ気づかなければ、間違った申告をしてしまう可能性もありますよね。
そのようなことがないように、専門学校で1から知識を復習しようという思いはあります。
専門学校選びのポイントは「自分の軸とマッチしているか」
――多くの専門学校があるなか、利用校を選択する際に重視したポイントはありますか?
石川先生 「限られた時間で効率よくレベルアップできるか(受験のときは合格レベルに到達できるか)」を重視しました。
その結果、公認会計士試験の受験生時代から今までクレアールを利用しています。
また、沖縄に開業した今だと、そもそも通学できる専門学校がないので、通信講座であることも大事なポイントですね。
ちなみに、不動産鑑定士試験の勉強をしていたときは、クレアールには講座がなかったので、そこでも「いかに効率よくレベルアップするか」を考え、LECに申し込みました。
もちろん人それぞれに好みがありますので、他の専門学校がダメだとはまったく思っていないです。
ただ、専門学校それぞれに特色があるなかで、自分が重視するポイントが何なのかをはっきりさせ、それとマッチしているかという視点で専門学校を選ぶことが大切なのかなと感じています。
――当時は、口コミなども重視されましたか?
石川先生 見るには見たのですが、気にしませんでした。
基本的には、事前に過去問を見たうえで専門学校の教材を見せてもらい、「どこが一番早く合格に近づけるかな」と自分の目で判断しました。
個人的には、難関試験であるほど口コミは気にしなくていいと考えています。
というのも、口コミのなかには「たまたま合格しました」といったものもあり、努力して合格した人と運よく合格できた人が一緒くたになっていることがあります。
そのような場合、全部の口コミを鵜呑みにしてもいいのだろうかとは感じます。
私としては、あくまで口コミは参考にとどめ、最終的には過去問分析をもとに自分自身で判断するほうがいいのかなと思いますね。
勉強は、最初に「登る山を決めること」が大事
――社会人受験生には、専門学校と仕事の両立に悩まれる方も多いです。オススメの両立方法があれば教えてください。
石川先生 勉強も仕事も「気合い」を大切にしています。限られた時間で成果を上げられるよう、優先順位を考え、1秒でも早く仕事や勉強を終わらせようという意識でどちらも乗り切ってきました。
特に難関試験の場合は、100点を目指しても仕方がありません。時間がもったいないです。
私も受験生時代は、大事なところを完璧に、そうでないところを思いきって捨てるつもりで勉強していました。
今は、試験に合格することではなく網羅的に勉強することが目的なので、「受験ではどうでもいいかもしれないなあ」と思う論点も、きっちり勉強しています(笑)。
ただ、受験生のときは「合格すること」を第一に考えていたので、強弱をつけて勉強していました。
――今はどれくらい勉強されているのでしょう?
石川先生 今は、1日30分~1時間程度です。もともと勉強が好きなタイプではないので、そんなに何時間も勉強するようなことはないですね。
――積み重ねが大切ですよね。短い時間でも理解を深めるために重視しているポイントはありますか?
石川先生 まずは前提として、限られた時間で効果を得るための「集中力」は必要だと思います。
そのうえで、私が受験生時代から重視しているのは、インプットとアウトプットの割合を「2:8」くらいにするということです。
「アウトプットするためのインプット」という意識をもって、集中して講義を聞くようにしています。
――先ほど、専門学校を選ぶ際に過去問と教材を見比べたというお話もありました。事前にどのような問題を解くのかをリサーチされるのですね。
石川先生 そうですね。“そもそも論”として、受験生時代はまず過去問を見るようにしていました。
どのような問題が出て、どれくらいのボリュームの答案を書けばよいのか? どのような配点になっていて、合格するためにはどこで点を取ればよいのか? とっいたことを学習初期に分析していました。
講義は、それを踏まえて、「合格するためのアウトプットをするには、どういった知識をインプットすればいいのかな」と落とし込んでいくイメージです。
――過去問を最後まで見ないという受験生もいますが、たしかに先を見据えた勉強は大切だと思います。
石川先生 そうですよね。ちょっと脱線してしまうのですが、この前「ドラゴン桜2」というドラマがありましたよね。あのドラマで言っていることと僕が考えていることは、結構似ているのかなと思って観ていました。
たとえば、阿部寛さんが演じる主人公の桜木建二が生徒に「東大だったら入れる」「けれど早稲田や慶応は無理かもしれない」といったことを言うんですね。
これはどういうことかというと、東大に合格できる人が全員、早稲田や慶応に合格できるわけではない、ということだと思うんです。要は、違う山を登っていたら、目指す場所にそもそも到達できないよ、と。
目指すものをはっきりしておかないと、勉強しているうちにどこに向かっているのかわからなくなります。
「インプットが終わったからアウトプットしよう」ではなく、「合格するためにはどのようにアウトプットしなければいけないのかな」→「そのためにはどのようなインプットが必要なのだろう」と考えていかなければいけないと思います。
登る山を間違えたら、合格はできません。
――この秋から新しく学習を始めた受験生にとっては、ちょうどインプットの時期でもありますので、とても参考になるお話ですね。最後に、専門学校を利用している現役受験生へのメッセージをお願いいたします。
石川先生 大変だと思いますが、まずは「効率よく」を意識して勉強してください。
また、成果を出して優秀な税理士や公認会計士になるという観点で、私が受験生時代から大事にしていることが4つあります。
1つめが、最後まであきらめずに取り組み、絶対に結果を出すという覚悟を決めること。
2つめが、自己流にこだわらず、講師の言うことを素直に聞いて必ず実践すること。
3つめが、周りに感謝すること。
4つめが、お客様スタンスをやめて、自発的に勉強すること。
この4つが、受験生の皆さんの参考や励みになれば嬉しいです。ぜひ優秀な税理士や公認会計士を目指してほしいと思います。頑張ってください!
――受験生にとって、今後の指針となるメッセージですね! 貴重なお話、ありがとうございました!
【お話を聞いた人】
石川 浩之(いしかわ・ひろゆき)
公認会計士・税理士・不動産鑑定士
北海道札幌市出身。小中高と勉強が嫌いすぎて大学時代にボクシングの世界チャンピオンを目指すも、プロテスト目前に交通事故に遭い断念(背筋力MAX300kg)。その後、公務員を経て公認会計士になり、家族で沖縄へ移住。監査業務や税務業務に携わる。不動産鑑定士試験に合格後は、都内の相続税専門の大手税理士法人勤務を経て、2019年7月に那覇市にて独立開業。相続税専門で開業した理由は、お客様から涙ながらに喜んでもらえることにやりがいを感じたため。