第2回「「勘定合って銭足らず」はなぜおこる?」はこちら
資金繰り表とはどのようなものなのでしょうか?
やはり作成したほうがよいのでしょうか?
資金は事業活動を維持するのに必要不可欠です。
資金の動きが今後どのように変化するかを確認するために資金繰り表を必ず作成しましょう。
資金繰り表とは?
一定期間、すべての現金収入と現金支出を一定の区分・科目に部類・集計したものが「資金繰り表」です。
資金繰り表は決算書のように決められた様式はないので、会社にとって役立つレベルのものを自由に作成しましょう。
資金繰り表は、下の図のように
① 通常の営業活動から得られる「経常収支」
② 資産の売却や設備投資、税金の支払いによる「経常外収支」
③ 借入金の調達や返済の「財務収支」
に分かれます。
これを作成することで、それぞれの活動で現金が「入る・出る」の動きと過不足、繰越額がわかります。
その他にも、日本政策金融公庫HP等に簡易なものから詳細なものまで様式と記入例が掲載されているので、参考にするとよいでしょう。
会社の「転ばぬ先の杖」
「資金不足になりそうだ」と間近になって大慌てしている経営者がよくいます。
日頃の資金繰り管理を怠っていると、こうした事態になることも多いのです。
重要なのは、資金が不足する事態を招かないことです。
そのためには資金繰り予定表を作成し、資金残高を予測する必要があります。
もし資金不足になりそうなら、どう対策を打つかを検討し、実行しなければなりません。
会社にとって資金繰り表は「転ばぬ先の杖」です。
この先、安心して経営できるように、早期の予測・発見・対策・行動を心がけましょう。
資金不足は命取り―「黒字倒産」をしないためには?
仕入代金や給与支払、借入金返済が遅れる、遅れるならまだしも支払いができない、ともなれば信用はなくなり、事業の継続に大きな支障が生じます。
利益は出ていても資金が枯渇すれば会社は倒産してしまいます。
いわゆる「黒字倒産」です。
かつての高度成長期には損益のみの管理で十分でした。
しかし時代は激変し、この先何が起こるかわかりません。今までのような勢いだけで売上は上がりません。
その一方で固定費はなかなか削減できないのが現状です。
先行き不透明、暗中模索の時代だからこそ資金繰り表を作成し、少しでも先を見通して資金繰りの安定化を図る経営努力が必要です。
資金繰り表を作ろう!
上記の図表のように資金繰り予定表を作成するには、まず「利益計画」を策定することから始めます。
これは「損益計画」となります。
次に、この計画を進めるとどう資金に動きが生じるか、これが「収支計画」となります。
損益と収支のズレをしっかり押さえることがポイントです。
売上計画に基づく売上代金がいつ回収されるか、一方、仕入計画によりいつ支払うのか、経費はどのくらいの支払を予定するのか。これらは通常の営業活動に基づく収支である「経常収支」となります。
そして、営業外の取引である雑収入や設備投資、支払利息の「経常外収支」、最後は資金調達として借入し返済する「財務収支」、と進めば「資金繰り予定表」の完成です。
以下、みなさんにイメージをもっていただくため、サンプルを掲載します。
次回は、この資金繰り表を分析してみます。
→第4回「資金繰り表を分析してみよう!」(6月10日掲載)に続きます。
〈執筆者紹介〉
増山 英和(ますやま・ひでかず)
税理士・CFP
1988年、中央大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。現在、増山会計事務所、増山総研、相続・事業承継支援センター代表、NPO法人相続支援協会理事長、茨城県中小企業家同友会代表理事、TKC全国会中小企業支援委員会委員長。常磐大学短期大学部非常勤講師を歴任。認定経営革新等支援機関として徹底した財務・経営指導や、ファイナンシャルプランナーとして事業承継・相続対策には定評がある。わかりやすくためになる著書・講演やラジオ番組が好評。
(主要著書)
『中小企業金融における会計の役割』共著、中央経済社、2017年
『中小企業BANTO認定試験 公式テキスト』共著、中央経済社、2019年
『実践!経営助言』共著、TKC出版、2012年
『中小企業の事業承継戦略(第3版)』共著、TKC出版、2017年 他
◆本特集は、増山 英和著『4つのステップで社長の悩み解消!資金繰りなるほどQ&A』(中央経済社刊)の一部を要約したものです。
増山 英和 著
定価:1,980円(税込)
発行日:2021/04/30
A5判 / 160頁
ISBN:978-4-502-38491-2
ご購入はこちらから