【会計人が語るウィズコロナ時代】観光地・沖縄の税理士として気づいた「日頃の積み重ね」の大切さ


税理士 糸数弘和

【編集部から】
2021年4月7日、第1回目の緊急事態宣言から1年。
社会全体で、身の回りで、さまざまな変化がありました。
税理士試験・公認会計士試験・簿記検定試験の受験生のなかには、学習環境がガラリと変わり、モチベーションが下がってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、「会計人としてどんなことができるのだろう」と、キャリアに対して疑問や不安をもたれた方もいるかもしれません。
そこで、そんな皆さんの夢を少しでも応援することができればと思い、第一線で活躍する会計人の方々にメッセージをいただきました。

※4月7日から13日まで、5人の実務家にご登場いただきます。

コロナで一変した沖縄

私は沖縄で税理士業をしています。観光が主な産業であるこの地にとって、コロナウイルスがもたらした影響は、まさに「天国から地獄」でした。

2020年の初めまでは街の人出も観光客もそれなりにいました。中国からの観光客をはじめとする外国人が大挙して街に繰り出し、観光に関わるお店や会社は人手不足が一番の悩みで、当時の相談は「どこかに働きたい人いない?」ばかりでした。

それが一変、数ヵ月もしないうちに観光客でごった返していた国際通りはゴーストタウンのように。クライアントからの相談も、資金繰りや人員の整理が中心になってしまいました。

何事も「日頃の積み重ね」が結果になる

コロナ禍で自主的に休業したり、感染防止で急きょ事業所が開けなくなったりする会社があるなかでも、私たちの仕事に休みはありません。むしろ大変なときに話を聞いてあげらあれるのは、自分たち税理士くらいだったのかもしれません。

どんどん世の中が不安になるなか、少しでも頑張っていこうとする人ほど、本当の気持ちを表に出せなくなるような感じでした。飲食業やホテル業のお客様は、本当に苦しい時間を過ごしていたと思います。

時には厳しい結果になるところにも遭遇しました。ただ、なんとなく追い込まれてしまったわけではなく、何事にも原因がありました。この1年を通して一番感じたのは、災害への備えや資格試験の勉強と一緒で、日頃の積み重ねがここ一番というときに「結果」として現れるということです。

今回の危機で大変な状況に追い込まれ、残念な結果になってしまった会社やお店は、やはり日頃からギリギリでやり過ごしていたところばかりであり、いざというときに手助けをしてくれる人が少なかったりもしました。

逆に、日頃から地道に頑張ってきた事業所は、「こういうときだから」と応援する人が現れたりして、大変な状況になっても、なんとか乗り切ることができていました。

こんなことに気がつけたのも、さまざまな仕事と関わることのできる税理士ならではだったのかなと感じています。

諦めずに頑張るお客様を支えられるように

極端に状況が変わってしまった沖縄で改めて思うのは、会社の生き残りや未来は誰かが与えてくれるものではなく、自分自身で築いていくものだということです。

人通りがなくなっても、飛行機に乗ってやってくる人が少なくなっても、地道にお客さんを待ち続けている経営者がいます。彼らはこう言います、「ここでやめてしまうのは簡単。でもまた沖縄を目指してやってくる人が来たときに何もなかったら本当に終わってしまう。だから頑張りたいのだ」と。

こうしたひたむきな人たちを支えられるように研鑽を続けなれば、と決意を新たにするとともに、税理士という仕事の大切さと誇りを感じています。

<執筆者紹介>
糸数 弘和(いとかず・ひろかず)
税理士法人タックスサポート・イトカズ那覇事務所所長
2002年3月名城大学大学院法学研究科修了。同年4月糸数哲夫税理士事務所入所。2005年12月税理士登録。2010年に税理士法人タックスサポート・イトカズに法人改組し、現在に至る。主に、個人および法人に関する税務一般、相続税を中心とした資産税に関する業務を行う。


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