②多くの数値例と仕訳を用いた解説
『財務会計講義』では、多くの数値例と仕訳を用いた解説がされており、財務会計の理論的知識と、実際の取引・事象に適用したときの会計処理(仕訳)や財務諸表への財務的影響を結びつけて理解することができます。
理論と計算をつなげて理解すれば、「計算はできるけれど、なぜその計算になるのか理論的には説明できない」といった状況になることはありません。
最近の公認会計士試験論文式試験では、理論と会計処理を結びつけた出題が多くなっていますので、これが苦手な人は『財務会計講義』に目を通してみるとよいでしょう。
たとえば、令和2年の会計学の第5問、経済的単一体説と親会社説を比較する問題は、『財務会計講義(第22版)』p.329-330、p.341-343、p.357を読んでいれば、実は容易に正答できるものでした。
③オーソドックスで、柔らかすぎず堅すぎない解説
『財務会計講義』は一般的な理論の本質をスパッと簡潔に説明しています。試験では特異な論説が問われることはありませんし、何を学ぶにしても、まずは一般的な理論を押さえることが肝要だと思います。この点でも『財務会計講義』は合理的です。
そして、文章の表現も、ちょうどいいバランスだと私は感じています。
「本当に頭のいい人は、難しい話をかんたんな言葉で説明できる人」といわれることがありますが、かんたんな言葉で言い換えられるなら、はじめから難しい概念が創出されることはありません。
会計基準の文言は、作成者が頭を捻りに捻って、吟味して作られたものです。ですから、これを変にかんたんな言葉や、かんたんな表現に置き換えると、重要なニュアンスがごっそりと抜け落ちていることがあります。
「自分の言葉でたくさん書いたのに、得点が思ったよりなかった」という受験生の悩みは、これが一因かもしれません。
言葉にはやはり、ニュアンスというものがあり、変に別のものに置き換えると、改悪されてしまうこともあります。もしかすると、予備校のテキストを読んでもわからなかったけれど、原文を読むとわかったという経験をされた方もいるのではないでしょうか。
この点、『財務会計講義』は当然に、このようなことはありません。少し硬い表現に思う箇所もあるかと思いますが、これは、本文をそのまま吸収する(試験で出題されれば、そのとおり書ける)ように努めるのがよいと思います。