渡邉 圭
(千葉商科大学基盤教育機構准教授)
この連載講座では、「日商簿記では学ばないけれど、税理士試験の簿記論・財務諸表論では必要になる論点」を学習します。
簿記論・財務諸表論の学習は広範囲にわたるため、日商簿記では深く学んでいない論点も対策しなければなりません。
税理士を目指して簿記論・財務諸表論の学習を始めた方、「いずれは税理士に」と考えている方は、この連載講座を使って効率的に学習を進めていきましょう。
前回は、「当座借越(一勘定制・二勘定制)」と「当座預金」について学習しました。
今回は、「固定資産(建物)」と「ソフトウェア」について解説していきます。
固定資産(建物)
次の資料のもとづいて、建物と土地の取得原価を答えなさい。
<資 料>
当社は営業拠点を新たに設置するため、建物(以下「旧建物」という。)付き土地を購入し、旧建物を取り壊した後に当該土地に営業所を建設した。建物付土地購入及び倉庫建設に関する支出額を建設仮勘定に計上している。なお、消費税及び地方消費税等(以下「消費税等」という。)に関しては建設仮勘定から適切な勘定に振替済みである。
建設仮勘定残高内訳
営業所はX7年10月1日から使用開始し、耐用年数は25年である。
解答
建物の取得原価:2,000,000円
土地の取得原価:1,950,000円
解 説
本問は、建物付き土地を購入し、この建物を取壊して新たに倉庫を建設したという問題です。そこで、建物と土地の取得原価をそれぞれ評価します。
建設仮勘定のうち、営業所完成記念費用は、その他販売費で処理していると指示がありますので、当期の費用として処理します。
土地の取得原価ですが、事業に利用できるまでの支出と収入を計算して、取得原価を評価します。
土地の取得原価:
1,625,000円(購入原価)+250,000円(撤去費用)-75,000円(売却収入)+150,000円(整地費用)=1,950,000円
建物は資料の営業所建設費2,000,000円が取得原価となります。こちらを仕訳すると次のようになります。
(借) 土地 19,500,000
建物 20,000,000
その他の販売費 500,000
(貸) 建設仮勘定 40,000,000
ソフトウェア
次の資料に基づいて、決算整理後残高試算表に表示されるソフトウェアの金額を答えなさい。なお、会計期間はX8年4月1日からX9年3月31日である。
<資 料>
当社は新しく営業支援システムのソフトウェアを外部から購入し、X8年10月1日により利用を開始している。このシステム導入に伴う費用は、ソフトウェア仮勘定に計上している。新システムもその利用により将来の費用削減が確実に認められ、償却年数は5年である。なお、ソフトウェア仮勘定の内訳は次のとおりである。
上記のうち、当期の費用とする項目は「その他営業費」として処理をする。
解答
ソフトウェア:28,500円
解 説
本問はソフトウェアに関する支出額のうち、取得原価に算入する項目と当期の費用になる項目を確認するための問題です。
ソフトウェアの取得
(借) ソフトウェア 285,000 ※1
その他営業費 62,500 ※2
(貸) ソフトウェア仮勘定 347,500
※1 225,000(購入代金)+60,000円(当社仕様)=285,000円
※2 37,500円(変換費用)+25,000円(教育訓練費用)=62,500円
ソフトウェア償却(営業用)
(借) ソフトウェア償却 28,500 ※1
(貸) ソフトウェア 28,500
※1 285,000円×6ヵ月/60ヵ月=28,500円