奥村武博
(公認会計士)
使う道具にこだわりを
道具にこだわり投資を惜しまない姿勢は、スポーツだけでなく試験においても同じです。自分に合った道具を選択し、いかに使いこなすかということがパフォーマンスに大きな影響を与えます。
会計系資格の受験生にとって最も重要な道具の1つといえば「電卓」です。知識はもちろん、この電卓をいかに使いこなせるかというスキルが試験の結果に差を生みます。
では、パフォーマンスの最大化をめざして電卓スキルを高めるためにはどうしたらよいでしょうか。私が重視するポイントは、①自分に合った電卓の選択、②処理スピードの最速化です。
電卓を選ぶときの確認ポイント
① 試験の規定
まず基本的には好きなものを選べばよいのですが、「試験で使用できる電卓の規定」は絶対に忘れずに確認してください。
大きさであったり、音の出るものやプログラム機能があるものは使用できないなど、それぞれの試験で使用できる電卓について決まりがあって、これに違反すると試験での使用が認められません。
実際、私の友人が公認会計士試験(短答式)で規定サイズをオーバーしているという理由で電卓を没収されました。普段の勉強で慣れ親しんだ電卓が、「いざ本番!」というときに使えなければまったく意味がありません。気になる電卓を見つけたら、購入前に必ず試験の規定を確認しましょう。
② キー配列
次に確認してほしいのがキー配列です。メーカーや機種によって、キー配列が微妙に異なる場合があります。下の写真は、私が迷った2つのメーカーの電卓です。
見比べてもらうと、キー配列が違うことが一目瞭然です。
私が実際に使っているのはSHARPですが、決め手はキー配列、特にクリアキー(C)の位置でした。試しにCASIOを使ってみると、左手で電卓を打つ際に、指が大きい私は「0」の上にある「C」を押してしまうことが何度かありました。本試験での致命的な計算ミスやタイムロスを回避するために、私はSHARPを選択しました。
ちなみに、そこに「C」があるほうがいいなど、CASIOを支持する人も多くいます。キー配列の他にも、ボタンの大きさや押したときの音、質感、キーの沈む深さなど、実際の感触も人によって大きく異なるでしょう。
購入の際は、試し打ちをすることをオススメします。
処理スピードを最速化しよう
自分に合った電卓を見つけたら、次はいかに処理スピードを最速化できるかです。
まず、電卓をどちらの手で打つかですが、字を書くほうと反対の手で打つことをオススメします。過去に両手打ちを駆使する異色の成績優秀者もいたのでマストではありませんが、筆記具の持ち替えといったタイムロスを減らせるメリットがあります。
普段と反対の手での電卓操作は、はじめは不慣れで違和感を覚える人も多いと思います、しかし、スポーツと同じように反復練習を続けることで次第に慣れてきます。最終的にはブラインドタッチもできるようになるので、継続して取り組んでみてください。
加えて知っておいたほうがいいのが電卓の機能です。詳細は説明書に譲りますが、電卓には実に様々な機能があります。
うまく使いこなせると計算が楽になるのが、「=」を使った「定数計算機能」と「グランドトータルボタン(GT)」です。簿記の学習が進むとよく出てくる割引率や現在価値合計の計算などで活躍してくれるはずです。
電卓の機能を知って使いこなせれば、1つの計算だけでもスピードに差をつけることができます。これが積み重なることで、本試験の限られた時間で解ける問題の量も増えていきます。知識を増やすと同時に、自分に合った電卓を選択し使いこなすことに時間を投資しましょう。道具にこだわる姿勢をもち、最高のパフォーマンスを発揮して合格をつかみとってください。
〈執筆者紹介〉
奥村 武博(おくむら・たけひろ)
公認会計士。株式会社スポカチ代表取締役、一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構代表理事、税理士法人・株式会社オフィス921スーパーバイザー、監査法人非常勤職員。1998年ドラフト6位で阪神タイガースに入団。2001年に現役引退後、公認会計士を目指すことを決意。2013年に合格。日本初、元プロ野球選手の公認会計士となる。著書に『高卒元プロ野球選手が公認会計士になった!』(2017年、洋泉社)がある。
※ 本記事は、会計人コース2019年10月号「計算が2倍速くなる! 電卓力アップ講座 Ⅰ選び方と便利な使い方」を再編集したものです。