【論述に強くなる!財表理論講座】第13回:繰延資産



全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる! 
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)

まずは問題にチャレンジ!

(1) 株式交付費
株式交付費(新株の発行又は( ① )に係る費用)は,原則として,支出時に( ② )(営業外費用)として処理する。ただし,企業規模の拡大のためにする資金調達などの財務活動(組織再編の対価として株式を交付する場合を含む。)に係る株式交付費については,( ③ )に計上することができる。
(2) 社債発行費
社債発行費は,原則として,支出時に( ② )(営業外費用)として処理する。ただし,社債発行費を( ③ )に計上することができる。この場合には,社債の償還までの期間にわたり( ④ )により償却をしなければならない。
(3) 創立費
創立費は,原則として,支出時に( ② )(営業外費用)として処理する。ただし,創立費を( ③ )に計上することができる。この場合には,( ⑤ )のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって,( ⑥ )により償却をしなければならない。
(4) 開業費
開業費は,原則として,支出時に( ② )(営業外費用)として処理する。ただし,開業費を( ③ )に計上することができる。この場合には,( ⑦ )のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって,( ⑥ )により償却をしなければならない。
(5) 開発費
開発費は,原則として,支出時に( ② )(売上原価又は販売費及び一般管理費)として処理する。ただし,開発費を( ③ )に計上することができる。この場合には,( ⑧ )のときから5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって,( ⑥ )その他の合理的な方法により規則的に償却しなければならない。

問題1
文中の空欄( ① )から( ⑧ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。

問題2
株式交付費を繰延資産として計上した場合の償却について,簡潔に説明しなさい。

解答

問題1

① 自己株式の処分
② 費用
③ 繰延資産
④ 利息法
⑤ 会社の成立
⑥ 定額法
⑦ 開業
⑧ 支出

問題2

株式交付のときから3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却をしなければならない。

基本的な考え方

・「将来の期間に影響する特定の費用」とは、すでに対価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用をいう。

・これらの費用は、その効果が及ぶ数期間に合理的に配分するため、経過的に貸借対照表上繰延資産として計上することができる。

論述問題にチャレンジ!

社債発行費を繰延資産に計上した場合,なぜ利息法により償却するのか?

社債発行者にとっては、社債利息や従来の社債発行差金に相当する額のみならず、社債発行費も含めて資金調達費と考えることができること、また、国際的な会計基準における償却方法との整合性を考慮すると、社債の償還までの期間にわたり、利息法(又は継続適用を条件として定額法)により償却することが合理的と考えられるから。

〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。

〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①
第7回:棚卸資産会計②
第8回:収益認識会計
第9回:固定資産会計①
第10回:固定資産会計②
第11回:ソフトウェア会計
第12回:研究開発費会計


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