この連載講座では、「日商簿記では学ばないけれど、税理士試験の簿記論・財務諸表論では必要になる論点」を学習します。
簿記論・財務諸表論の学習は広範囲にわたるため、日商簿記では深く学んでいない論点も対策しなければなりません。
税理士を目指して簿記論・財務諸表論の学習を始めた方、「いずれは税理士に」と考えている方は、この連載講座を使って効率的に学習を進めていきましょう。
千葉商科大学基盤教育機構専任講師 渡邉 圭
―商品売買編―
1 学習済項目と未学習項目の整理
日商2級までの学習項目 | 分記法・三分法・売上原価対立法 |
未学習項目 | 総記法・小売棚卸法・売価還元法 |
2 本試験の出題傾向
毎年、本試験で問われています。
仕訳、総勘定元帳から金額の推定問題、総合問題など日商簿記検定よりも出題形式が多様です。
本問以外の問題集などを使い、簿記論の論点を中心に学習することで、財務諸表論もカバーすることができます。
第6回 上級編2:売価還元法
(1)売価還元法による期末商品の評価
売価による期末商品棚卸高をどのようにして原価額に修正するかという問題が生じます。
この時に、期末商品棚卸高(売価額)に原価率を乗じて原価額を算定します。
この期末商品の評価方法を売価還元法といいます。
また、期末商品棚卸高(売価額)に含まれる利益額は未実現利益のため、次期に繰り延べる必要があります。
日商簿記検定や税理士試験では、期中は三分法を用いて商品売買取引を記帳し、期末商品の評価を売価還元平均原価法により計算させる問題が出題されています。
昭和37年(1962年)8月に公表された「連続意見書四 棚卸資産の評価について」に売価還元平均原価法原価率の算定方法が次のように示されています。
分母に記載されている原始値入額は、購入した商品の利益額を意味します。
(当期受入原価総額+原始値入額)=当期受入売価総額
=売価還元平均原価法原価率
<設 例>
当社は、商品売買を小売棚卸法により記帳しており、期末商品の評価に売価還元原価法(売価還元低価法:商品評価損を計上する方法)を採用している。なお、会計期間はX4年4月1日からX5年3月31日である。<資料>の内容から損益計算書(一部)を答えなさい。
<資 料>
項 目 | 原価額 | 売価額 |
期首商品棚卸高 | 15,750円 | 18,550円 |
当期商品仕入高 | 152,250円 | 194,530円 |
当期商品値上げ額 | ― | 11,820円 |
当期商品値上取消し額 | ― | 900円 |
当期商品値下げ額 | ― | 16,420円 |
当期商品値下取消し額 | ― | 2,420円 |
当期商品売上高 | ― | 190,720円 |
期末商品実地棚卸高 | ― | 15,000円 |
次ページ→解答、解説