私の独立開業日誌~税理士 瀬口 徹


自己紹介

はじめまして。税理士の瀬口徹です。令和元年6月に東京都府中市で独立・開業しました。「個人に寄り添いながら人生を応援したい」という思いから、フリーランスの方や副業をされている方など、個人の確定申告業務に特化した税理士として活動しています。今後はセミナーや出版に関する仕事も積極的に行い、業務の幅を広げていきたいと考えています。

私は農業大学を卒業後、一般企業(食品会社)へ就職し10年以上税金とはまったく関係のない仕事をしてきました。35歳になる年、日商簿記1級に合格できたことをきっかけとして一念発起し税務・会計業界へ転職。同時に税理士試験への挑戦を決めました。いわば人生遠回り組です。アラフォーになってから本気で勉強に取り組んだ私でも、今となっては資格を取得し一端の税理士として社会のお役に立つことができています。私の経験をお話することが、少しでもみなさんの参考になれば幸いです。

なぜ税理士を目指したのか?

私が最初に就職した食品会社は東証一部上場の典型的な大企業でした。この会社では生産管理や物流、営業サポートなど様々な業務に携わり良い経験を積ませてもらいました。それなりに充実した日々ではありましたが、お客様の顔が見えず、どこを向いて働いているのかわからなくなるという大企業ならではの悩みに直面してしまいました。

「もっとお客様の笑顔につながる仕事がしたい」「もっと直接的にお客様に貢献したい」少しずつそんな思いが芽生えてきました。いつか来るその日のために資格を取得しておこうと、もともと数字が得意だった私は簿記の勉強を地道に続けていました。

そんなこんなで思い切って受験した日商簿記1級に幸運にも合格。

「次は何を目指そう?」と考えたときに、なぜか「税理士」の3文字が頭に浮かんだのです。「数字に強い自分の強みを生かし、お客様に直接貢献するためには税理士になるしかない!」と考えてしまいました(その後、大変な苦労をすることになりますが…)。

この年、思い切って食品会社を退職。会計事務所へ転職すると同時に受験勉強をスタートさせました。当時の年齢が35歳。後戻りできない覚悟での新たな挑戦でした。

会計事務所での仕事と受験勉強の両立

転職後は会計事務所の正職員として働きながらの受験でしたので、欲張らずに1年1科目ずつの合格を目指しました。2年をかけて財務諸表論に合格、その後同じく2年をかけて消費税法に合格した後、簿記論や所得税法を受験してみたものの、なかなか合格に至らず苦しい時期を過ごしました。

不合格の通知が届いた年はやはりつらかったですね。一年間を死に物狂いで努力したところで結果がすべてです。悔しくて涙が止まらない夜もありました。今になって振り返れば、それだけ必死に努力してきたからこその涙だったんだろうと思います。

大学院への進学を決意

働きながら残り科目を合格することに先が見えない中、周りのアドバイスもあり大学院に進学して税法免除を目指すことを決めました。入学後2年間におよぶ大学院生活でしたが、指導教授や同級生のサポートもあり「連結納税制度に関する一考察」というテーマで論文を書き上げることができました。

また、税理士試験で残っていた簿記論も在学中に合格することができ、ようやく税理士としてのスタートラインに立つことができました。税理士バッジが届いたときの喜びは一生忘れることができません。

独立、開業のこと

その後、引き続き会計事務所に留まって働き続ける道もありました。ただ当時勤めていた事務所が拡大路線を敷いており、とにかく多くのお客様を担当するよう求められることに違和感とやりづらさを感じていました。いかに数多くのお客様をこなすかという点に評価の軸が置かれていたのです。そんな事務所の方針を否定できるはずもありませんが、私自身はもっと一人一人のお客様とじっくり向き合いたいと強く希望していました。数をこなして大きく稼ぐよりも、さほど稼げなくても限られたお客様としっかりコミュニケーションを取り、強く手を携えながらサポートしていきたい。そんな自分の求めるスタイルを実現するためには、「自分でやるのが手っ取り早い!」と考え、すぐに独立・開業を決意しました。そこに迷いはありませんでした。

今は独立・開業して本当に良かったと思っています。自分の看板を背負って働くことにとてもやりがいを感じています。お客様は他の誰でもなく、私を信頼し、私という個人にお金を払ってくれるのです。大きな責任を感じると同時に、毎日が刺激に満ち溢れ、やりたいことやアイデアが次から次へと湧き出てきます。お客様と誠実に向き合って関係性を築いていくことの大切さを日々実感しているところです。

受験生のみなさんへ

最後に受験生のみなさんへお伝えしたいこと。それは周りの方への感謝を忘れずにいてほしいということです。税理士試験は長期間にわたる負担の大きなチャレンジです。犠牲にすることもたくさんあります。家族や友人、恋人、専門学校の先生や仲間、職場のメンバーなど、周りのサポートがあってはじめて勉強できる立場にいられることを忘れないでください。世の中には様々な理由(経済的な理由、健康上の理由、家庭的な理由など)によって税理士試験にチャレンジすることさえ許されない人もたくさんいるのです。このことは絶対に忘れてはいけません。

もちろん、一番がんばっているのはみなさん自身ですね。そんな自分を労わってあげることも大切です。時には息抜きをして、趣味や好きなことに没頭する時間も必要だと思います。長丁場の税理士試験を乗り切るためにも、がんばり過ぎないことは常に意識しておいてください。

周りに感謝をしましょう。受験できる環境にいられることに感謝をしましょう。そして何よりも努力している自分自身に感謝をしましょう。税理士試験は諦めずにチャレンジし続ければ必ず合格できる試験だと思います。ぜひみなさんも資格取得を目指して受験生としての大変な時期を乗り越えてください。みなさんが税理士となって活躍される日が来ることを心から願っています。

私の事務所
瀬口徹税理士事務所
所在地:東京都府中市宮町1-33-40
HP(ブログ):https://www.seguchi-blog.com/

私の略歴
1975年 三重県津市生まれ
1998年 一般企業(食品会社)に就職
2010年 税理士業界へ転職
2018年 税理士登録
2019年 独立・開業

本稿は、『会計人コース』2020年8月号に掲載したコラムです。

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