この記事は、『会計人コース』7月号の特集「出題の可能性「大」!? 得点源にする要チェック4論点」のなかから、編集部が再構成して紹介しています。
1.リース取引に関して
リース契約はその内容によりファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引とに区別される。このうちのファイナンス・リース取引は、解約不能でありフルペイアウトのリース取引とされている。
さらにファイナンス・リース取引は、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められる所有権移転ファイナンス・リース取引と、それ以外の所有権移転外ファイナンス・リース取引に分類される。
一方、オペレーティング・リース取引はファイナンス・リース取引に該当しない契約によるものとされている。
本稿では、出題頻度の高い所有権移転ファイナンス・リース取引を中心に説明する。
2.ファイナンス・リース取引の判定
リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかについては、解約不能でありフルペイアウトの要件を満たす必要があり、その経済的実質に基づいて判断すべきものである。
次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リース取引と判定される。
(1) 現在価値基準
解約不能のリース期間中のリース料総額の割引現在価値が、当該リース物件を借手が現金で購入するものと仮定した場合の合理的見積金額(見積現金購入価額)の概ね 90 %以上であること。
リース料総額の割引現在価値/ リース資産の見積現金購入価額 ≧ 90%
(2) 経済的耐用年数基準
解約不能のリース期間が、当該リース物件の経済的耐用年数の概ね75 %以上であること。
リース期間/ リース資産の経済的耐用年数 ≧ 75%
3.ファイナンス・リース取引の処理方法
ファイナンス・リース取引を処理する場合には売買処理による方法が行われる。これによればリース契約時、リース料支払時、決算時でそれぞれ下記の処理が行われる。
(1) リース契約時
所有権移転ファイナンス・リース会社の場合には貸手側(リース会社)の見積現金購入額を取得原価とみなして下記の計上を行う。
(リース資産) ×××*
(リース債務) ×××
* 貸手側の見積現金購入価額が判明しない場合 … リース料総額に年金現価係数を用いて計算した金額を取得原価とみなす。
(2) リース料支払時
リース料の支払時には元金と利息部分を区別して処理*しなければならない。
(リース債務) ××× (現金預金) ×××
(支払利息) ×××
* 内訳金額が不明の場合 … 下記のより年金現価係数を用いてリース債務と支払利息の金額を計算する。
リース債務:リース料×(前年分の年金現価係数-当年分の年金現価係数)
支払利息:リース料-上記で計算したリース債務
(3)決算時
リース契約が所有権移転ファイナンス・リース取引の場合、減価償却費は耐用年数を経済的耐用年数を用いて、また残存価額を取得原価とみなした金額の10%により計算する。
(減価償却費)×××
(減価償却累計額)×××
* 償却年数…所有権移転外ファイナンス・リース取引の場合にはリース契約期間を耐用年数、残存価額をゼロとみなして減価償却を行う。
【編集部より】
本誌では本試験で出題が予想される問題を取り上げて解説しているので、ぜひご覧になっていただきたい。
【プロフィール】
堀川洋(ほりかわ・よう)
大学卒業後、税理士試験に合格。その後、専門学校において税理士講座の指導を約40年担当し、2010年に会計に関連する資格試験の受験を専門にした堀川塾を設立。受験指導を中心に、書籍の執筆や大学での講師など、幅広い経験を持つ。著書に『電卓操作最短・最速攻略法〈第2版〉』 など。