有事の今だからこそ「日常」を大事に


◆ 有事の今は心を磨く絶好の機会

長くなりましたが,わたしは,いま得るべきものは,よくわからない意見よりも,「情報」だと思います。
 
答えがない,先がみえないものを「有事」において,断じてくれる「平時」にはありそうな「心地よいもの」は,残念ながらないでしょう。「思考の力」を信じ,情報を得て,できることをやっていくほかないと思うのです。

それから,最初にテレワーク(オンライン対応)のことなどを書いたのは,テレビは「家にいよう」と,命という重いワードもつなげて叫び続けていますが―そして,その意味はもちろん,よくわかりますが,多くの勤め人は,家にいれば済むわけではありません。

慣れないリモートワークを突然自宅でやらざるを得なくなったり,それによってふだんよりも業務量が増え,パンク寸前になっている組織に属する方たちも,報道されませんが,たくさんいるのではないかと思ったからです(なお,すでに報道されていることには触れません)。

いまある世界は,未知の混沌です。毎日,目が覚めると,夢ではなかったのかと,ふだんなら夢の方が大概わるいのですが,起きたあとの方がカオスな世界という現実です。これを受け入れて,心を強くし,心を磨く機会と考えていきたいと,わたしは思っています。
 
でも,心が強くない方もいますし,強くても,これまでになかった出来事の連続に,疲弊した心で日々を過ごす人も多いと思います。接触もできず,メールやオンラインでのやりとりが続きますが,少々の困惑や混乱やそういったものが,相手の文面から伝わってきたときこそ,「この人も辛いのだな(みんな同じなんだ)」と思いやれる想像力と,心の広さを持ちたいと思っています。

◆ 受験生の皆さんへ

最後になりますが,わたしは会計士・税理士の試験を受けたこともないですし,会計事務所で働いたこともないので,そういったプロパーのことには触れることができませんでした。そのため,与えられたお題から離れていたかもしれません。
 
ただ,わたしも,種類は異なりますが,司法試験を受けました。合格率2%の旧司法試験を,大学卒業後に,無職で勉強しながら,合計4回受けました。その後,法律事務所で約12年間,弁護士の仕事をしてきました。試験は涙が枯れるほど過酷でしたし,弁護士時代には事務所で打ち合わせをしているときに東日本大震災がありました。

皆様がいまやられていることが,うまくいくことを願っております。
 
最後までお読みいただき,ありがとうございました。ともに,がんばりましょう。

<執筆者紹介>
木山 泰嗣
 (きやま・ひろつぐ)
青山学院大学法学部教授・同大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻主任・鳥飼総合法律事務所客員弁護士
1998年に上智大学法学部を卒業後,2001年に旧司法試験に合格し,2003年に弁護士登録。ストック・オプション訴訟などの大型案件を中心に,実務家として税務訴訟(行政訴訟)・税務に関する法律問題を取り扱ってきた。2011年に『税務訴訟の法律実務』(弘文堂)で第34回日税研究賞(奨励賞)を受賞。2015年4月から現職に就き,税法研究及び法学教育に専念する。大学のゼミ及び大学院の演習では,ディベートなどを中心に税法を法的観点から捉える教育を徹底している。
著書に,『小説で読む民事訴訟法』 (法学書院),『反論する技術』 (ディスカヴァー?トゥエンティワン),『法律に強い税理士になる』(大蔵財務協会),『税法読書術』(同),「新・センスのよい法律文章の書き方」(中央経済社),『超入門コンパクト租税法』(同),『分かりやすい「所得税法」の授業』(光文社新書),『教養としての「税法」入門』(日本実業出版社),『教養としての「所得税法」入門』(同),『分かりやすい「法人税法」の教科書』(光文社)など,単著の合計は,現在56冊。2020年を取り巻く状況についての想いを綴った箇所もあるエッセイ『税法思考術』(大蔵財務協会)が,4月下旬発売予定(57冊目の単著)。


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