有事の今だからこそ「日常」を大事に


木山泰嗣

いま,多くの方が,困惑・混乱のなかにあるかと思います。
 
私事ですが,緊急事態宣言により大学が閉鎖され,春休み中も毎日通っていた大学の研究室に行くことができなくなりました。しかし,大学には,教育サービスを維持・提供する責務があります。

現在は,勤務校で開始される予定の5月1日(前期開始)に向け,オンラインでの授業の準備を,自宅のPCで進めています。そのために,対応すべきあらたなシステムの取り入れなども事務的に発生しました。それらも自宅で,日々更新される文書を読みながら,進めています。

ここで申し上げたいのは,個人の日常でも,大変さでもありません。

◆ 突然のオンライン授業への対応

緊急事態宣言の発令時には,とつぜん慣れない大量の業務を自宅でやることになり,困惑しました。業務とは,オンライン対応のための諸々です。正直,中学時代か,高校時代か忘れましたが,全く意味がわからず,参考書を自宅の部屋でビリビリに破いた電気か何かの勉強(理科)を思い出すほどでした。
 
しかし,大学の同僚とDMやLINEなどで,あるいはオンライン会議などで情報交換を進めるうちに,みな試行錯誤で,この困難な状況に自宅で立ち向かっているのだとわかりました。「それなら,やるしかないだろう!」と,心を強くすることに決めました。
 
その後の数日で,オンライン対応には,すっかり慣れました。昨日は院生に,今日はゼミ生(2学年それぞれ)に,オンライン会議を招待し,やり方を教えました。つい数日前まで絶望していたわたしが,自宅にいるだけで,数日の練習と試行錯誤を経て,人に教えられるようになったのです。
 
その後,ゼミ生や院生に共有できるように,オンラインシステムの使い方なども,自分で動画撮影をし,LINEで共有を始めています。特に,入学したばかりの院生には,不安も多いと思うため,LINEのグループを使って,入学時(4月1日)から,ネットで検索できる文献や判例の見方などを,ふだんはやらないのですが,パソコンの画面を映しながら動画撮影をするなどし,提供をしています。

その後も,演習系のクラス(プレゼミ,ゼミ,大学院と,合計5学年分の担当があります)を少人数のグループに分けたりしながら,ミーティング(オンライン会議)を予約し,オンラインで使い方を教えながら,学生とコミュニケーションをとる毎日です。

新しい環境への対応は,とにかく丸ごとそれを受入れ,毎日コツコツと取り組むことで,慣れていくことが大事なようです。

◆ 今、著者として想う「本」の命

さて,この記事は,3月下旬に刊行された『入門 課税要件論』(中央経済社)の担当編集者から,本日メールをいただき,すぐに(1,500字程度)ということなので,その晩に執筆しています(といっても,日付けを超えた真夜中ですが……。そして,書いてみたら3,500字になってしまいましたが……)。

個人的には,この新刊がAmazonで売れ続けていることに(消費税込みで3,500円以上もするのに,です)嬉しさを感じながらも,ネットで検索したところ,ふだんよく行く都内の書店がほとんど閉店されていることを知りました。

この本の命や,他の本の命,書店の方や,出版社の方,著者の方の想いを考えると,言葉が出ません。
 
ちょうど,緊急事態宣言の前日に三校ゲラを編集者にお渡しして,4月末の刊行を待つだけの別の出版社からの新刊エッセイも誕生を見守る段階なのですが,書店が開店されていなければ,「生まれたときに,毎日寝るベッドもない……」,という比喩になるでしょうか(あまり,上手なたとえではないかもしれません)。それは,おそらく,本にたずさわるすべての方たちの想いではないかと思います。
 
とりとめのない,個人的な事柄を述べました。さらに個人的なことを1つだけ言わせてください。


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