担当編集者が教える!『財務会計講義』の読み方・使い方①


① 財務会計の全体像を420頁弱という通読できる分量を単著でまとめていること

皆さんご承知のように、近年の財務会計は新しい会計基準等が次々と設定・改訂されており、そのボリュームが膨大になっています。

読者、特に受験生はこの会計基準等の細かい知識に意識がいきがちですが、試験委員の先生方は、細かい知識を知っているかよりも、幹となる考え方を本当に理解しているかを念頭に出題しているハズ。

ですので、全体像を体系的に理解する必要があるのです。
本書は、本文を財務会計の本質的な内容(幹の部分)に絞って420頁弱におさえられており、通読可能な分量にバランスよくまとまっています。

なお、ぜひ注目していただきたいのが、各論点のボリューム。
上記のように、本書は財務会計の本質的な理解をすることを重視しているため、全体像と会計基準等の論点のバランスが非常によくとれています。
つまり、財務会計全体の中での各論点のウェートがどの程度かはぜひ把握してほしいですね。

専門学校のテキストは、網羅することに重点が置かれているため、本質的な部分や各論点のウェートが見えにくくなっていると思います。
ここに、本書を読む大きな意義があるのです!

ちなみに、裏話。
本書は、次々と会計基準等が新設・改訂されても、本文のページ数はずっと変わっていません。
これは、通読するには、一定の限度があるとのことから、桜井先生は新設・改訂された会計基準等で分量が増えたら、その分重要性の低い内容を圧縮して、頁数を調整されているんです!
ここまで、読者ファーストな著者はいませんよ、ホント。

また、本書が単著である点も大きな特徴。
このレベルの財務会計の書籍はほぼ共著ですが、やはり内容にバラツキがでてしまいます。
その点、本書は桜井先生お一人で執筆されているので、内容が首尾一貫している点も、非常にすぐれた点といえるでしょう。

② 文章で説明するだけでなく、取引・事象を数値例と仕訳で考えることで、その取引・事象の財務的影響を明確に認識できるとともに、その会計基準への理解が深まること

本書では、解説のなかで、設例による数値例や仕訳が多数示されています。

これは、この取引・事象の場合、どのような仕訳になるかを理解するためだけではなく、それがB/SやP/Lなどにどう影響するかまで考えてほしいとの桜井先生のお考えによるものだと思います。
それをもっともシンプルに表現する方法が仕訳(および数値例)ということですね。

またも余談ですが、私、一度桜井先生の「財務会計」の授業にお邪魔したことがあります。
その際、実際の財務諸表の事例を多数紹介されながら解説されていたのが非常に印象的でした。
個々の会計処理はすべて財務諸表に影響する。
当たり前過ぎる話ですが、ともすると忘れがちかもしれませんね。

ぜひ、仕訳を仕訳として捉えるのではなく、財務への影響も考えながら読んでみましょう。
これが、財務会計全体の理解や、会計センスを鍛えることにもつながりますよ。


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