この記事は『会計人コース』2020年4月号の特集「税理士試験 「過去問」から学ぶ 試験攻略のカギ」を編集部にて再構成したものです。
はじめに
ここでは,本誌で税理士試験簿記論の模範解答を10年間担当してきた経験をふまえ,過去問演習の重要性と本試験(過去問)を解く際にチェックしておくべきポイントについて,実際の本試験問題を元に解説していきます。
最近の本試験の特徴
まず,最近の簿記論の特徴を確認しておきましょう。
全体の特徴
・2時間ですべてを解答するのが困難な問題量が出題される。
・ここ2年ほどは問題の難易度が落ち着いている。
第一問・第二問の特徴
・第一問・第二問ともに個別問題の形式で固定されている。
・一般商品売買の記帳方法の問題がほぼ毎年出題されているが,それを除けば定番論点はない。
第三問の特徴
・決算整理後残高試算表を作成させる総合問題の形式で固定されている。
・商品売買絡みなど資料が多く難解な箇所が毎年ある。
・有価証券,固定資産,賞与引当金など複数の定番論点がある。
・実務的な論点が出題される。
過去問の重要性
本試験のような総合問題でも個別論点の集合体ですから,まずは個別論点の解答力が重要となります。しかし,本試験は制限時間内にすべてを解答することが困難な問題量が出題されることから,合格するために必要なのは,その時間内に解答しやすい箇所を見つけそれに正答しボーダーラインを超えることです。
そしてそのためには,問題文に目を通した際に,どの論点で,どういう処理が必要か,自分の知識で解けそうか,どれくらい時間がかかりそうか等を把握し,それをふまえて取捨選択や時間配分を決める判断力が重要となります。
これは過去問演習や答練でしかトレーニングできませんので,何度も演習を行い,ポイントをつかんでおきましょう。
本試験問題の見るポイント
(第一問・第二問)
第一問と第二問については,個別問題の形式で出題されていることから,問題に目を通しながら,①各小問の論点チェックと②設問の取捨選択の判断をすることが重要になります。
(第三問)
第三問については,後T/B(ないしB/S・P/L)の作成問題が定着していることから,前文・前T/B・後T/Bの見るべきポイントはほぼ固定であり,また前文・前T/Bを見ればどういう論点が出題されるかある程度予測することができます。問題文の前文と前T/Bを見て,頭の中で論点の想定をして問題を一読し,取捨選択・時間配分の判断をしましょう。
【編集部より】
本誌では、実際の過去問(2019年度)を使用して、解く順や時間配分をどう考えていけばよいかをレクチャーしています。本誌のご購入はこちらから。
2019年度の税理士試験の過去問は、こちらから見ることができます。
浦山剛史(うらやま・たけし)
兵庫県立大学国際商経学部准教授
平成18年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程後期課程修了,博士(経営学)を取得(神戸大学)。平成18年4月姫路獨協大学経済学部専任講師,平成20年4月同准教授を経て,平成31年4月より兵庫県立大学国際商経学部准教授。第58回(平成20年度)より本誌において税理士試験簿記論の模範解答を担当。
て税理士試験簿記騙の撮範解答を担当。