2019年12月12日に公表された、与党税制改正大綱。2020年の受験にどう影響を与えるのか、出題されるとしたらどこがポイントになるかを、税理士・井上幹康氏に解説してもらいました。
法人税法関係
1.オープンイノベーションに係る措置の創設(大綱60-61項、68-69項)
企業の内部留保をベンチャー投資に充てることを促進する税制で、一定の要件を満たせば出資額の25%を所得控除できる制度が創設されます。
令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間におけるベンチャー投資が対象となる時限措置ですが、法人税関係の税制改正の中では社会的に注目を浴びているトピック項目だと思います。
適用要件や一定事由に該当した場合の戻入(益金算入)の取扱いが細かいので、税理士試験的にはシンプルに所得控除額を計算させる問題以外に、理論問題としての出題もあり得ると思います。
2.5G(第5世代移動通信システム)投資促進措置
特定高度情報通信用認定設備等を取得した場合に30%特別償却又は15%税額控除を選択適用できる制度が創設されます。
当該制度の適用を受ける業種が限られているため、税理士試験的にはやや重要性は落ちると思います。
3.大企業の接待飲食費50%損金算入特例の縮減(大綱62項)
資本金の額等が100億円超の法人が接待飲食費50%損金算入特例の適用対象から外されることになります。
資本の大きな上場企業にはインパクトがありそうですが、税理士試験的には計算問題対策として軽く押さえておけば十分かと思います。
4.連結納税制度の見直し~グループ通算制度へ移行~(大綱63-68項、105-117項)
法人税関係の改正項目の中で一番の目玉がこの連結納税制度の見直しだと思います。
見直し後のグループ通算制度は令和4年4月1日以後開始事業年度から適用とされているため、グループ通算制度自体が税理士試験で本格的に出題されるのは令和4年4月1日以後でしょうが、それまでに従来の連結納税制度の理解を問う問題の出題も考えられると思います。
具体的には、連結納税制度の手続き規定、開始・加入時の時価評価課税、繰越欠損金の切捨て等の基本論点について、理論対策として例年以上にしっかりと押さえておくと良いのではないかと思います。