つぶ問3-2(簿記論)―割引計算


【解答】
(問1)半年ごとにキャッシュ・フローが生じる場合には,年利率を半分にした半年利を用いて割引計算を行う。
(問2)364,100円
(問3)割引計算では,複数年のキャッシュ・フローの現在価値をそれぞれ計算すると,電卓への入力ミスや計算結果の転記ミスが起こりやすくなる。そこで電卓のメモリー機能(M+やM-ボタン)を使って割引計算の結果を電卓内に保存しておけば,それらのミスを防ぐことができる(また,現在価値総額も計算しやすい)。

【解説】
割引計算を行う際の,計算上の注意点をまとめた問題です。特に,リース取引の問題では割引計算に用いる諸条件が多様化しやすいですので,様々なタイプの割引計算に対応できるようにしておきましょう。

(問1)キャッシュ・フローが半年ごとに生じる場合,「年〇%」を半分にした半年利を用いて割引計算をします。問題によっては,半年利をそのまま与えている場合もありますが,年利が与えられた場合には,半年利に置き換える必要があります。たとえば,年4%で100,000円の預金を半年だけ行った場合を考えてみます。預入期間が半年ということは,利息も半年分の2,000円しか生じないはずですから,半年後の預金残高は102,000円となります。この場合,102,000円を現在価値に置き換えるには(1+0.04)ではなく,(1+0.04÷2)=(1.02)で除算しなければなりません。また,割引計算についても半年ごとのキャッシュ・フローを割引くことになりますので,1年後に生じるキャッシュ・フローは,(1+半年利)によって除算することになります。

ちなみに,「毎月」キャッシュ・フローが生じるような場合には,年利を12分割した月利を計算する必要があります。計算の考え方は半年利の場合と同じですので,様々なケースを想定しておきましょう(3か月に1回=四半期など)。

(問2)本問ではリース料が前払されています。前払されているケースの注意点はおおむね次のとおりです。試験問題で出題された際に引っかかりやすいポイントであり,出だしでつまずくことでその後の設問にも影響しますので,注意しましょう!

①契約と同時にキャッシュ・フローが生じるため,初回支払分のリース料は割り引かない。

②①に関連して,初回リース料の中には利息部分が存在せず,全額が元本減少部分になる。

③利息部分については,決算整理において見越しが必要になる。

③について,たとえば下記の返済スケジュールにおけるX2年度の利息部分23,100円は,X1年度を通じて生じた利息ですから,X1年度の支払利息として計上する必要があります。しかし,リース料の支払いはX2年度の期首に行われるため,決算において未払費用を用いた見越し計上が必要になるわけです。

・リース債務の返済スケジュール

ちなみに前払のケースは,企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」の設例で示されていることから,リースの計算問題での出題実績がありますが,もちろんリースだけの論点とは限りませんので,他の分野で出題されても対応できるようにしておきましょう。

(問3)計算力を向上させるには反復的に問題を解く必要がありますが,同じ問題を解くにしても,常に「次はどのように解けば,より正確かつスピーディに解けるか」を考えなければなりません。割引計算は,計算ミスがつきまとう論点ですので,いかにして計算ミスを少なくする(究極的には無くす)かが重要です。その第一歩となるのは,「自分はどのようなタイプの間違えをしているのか」を知ることです。これは単なる答えあわせでは明らかにできない問題ですので,普段の学習においてもそのような意識を持って問題演習に取り組んで欲しい,という趣旨で出題しました。解答はあくまでも例であって,皆さんにとっての正解はそれぞれに異なるでしょう。

つぶ問は、2018年9月号~2019年8月号までの連載「独学合格プロジェクト 簿記論・財務諸表論」(中村英敏・中央大学准教授/小阪敬志・日本大学准教授)に連動した問題です。つぶ問の出題に関係するバックナンバーはこちらから購入することができます。


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