【論述に強くなる!財表理論講座】第18回:自己株式


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)


全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる! 
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。


まずは問題にチャレンジ!

取得した自己株式は,( ① )をもって純資産の部の( ② )から控除する。
期末に保有する自己株式は,純資産の部の( ② )の末尾に( ③ )として一括して控除する形式で表示する。
自己株式の処分又は消却をした結果,その他資本剰余金の残高が( ④ )となった場合には,会計期間末において,その他資本剰余金を( ⑤ )とし,当該( ④ )をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から( ⑥ )する。

問題1
文中の空欄( ① )から( ⑥ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。

問題2
純資産の部を下線部「一括して控除する形式」で表示しなさい。

解答

問題1

① 取得原価
② 株主資本
③ 自己株式
④ 負の値
⑤ 零
⑥ 減額

問題2

純資産の部
Ⅰ 株主資本
 1 資本金 ×××
 2 資本剰余金 ×××
 3 利益剰余金 ×××
 4 自己株式 △×××
Ⅱ 評価・換算差額等
 その他有価証券評価差額金 ×××
Ⅲ 新株予約権 ×××

基本的な考え方

・自己株式の取得、処分及び消却に関する付随費用は、損益計算書の営業外費用に計上する。

論述問題にチャレンジ!

自己株式の扱いについての論拠は?

資産説
自己株式を取得したのみでは株式は失効しておらず、他の有価証券と同様に換金性のある会社財産とみられるという考え。

資本控除説
自己株式の取得は株主との間の資本取引であり、会社所有者に対する会社財産の払戻しの性格を有するという考え。

自己株式の取得に関する付随費用はなぜ財務費用なのか?

自己株式の取得の付随費用は、株主との間の資本取引でない点に着目し会社の、業績に関係する項目であるとの見方に基づく。また、新株発行費用を株主資本から減額していない処理との整合性からも損益計算書の営業外費用に計上する。

自己株式処分差益はなぜ資本剰余金として処理されるか?

自己株式処分差益は、自己株式の処分が新株の発行と同様の経済的実態を有する点を考慮すると、その処分差額も株主からの払込資本と同様の経済的実態を有すると考えられるため。ただし、資本剰余金のうち、資本準備金は会社法において分配可能額からの控除項目とされ、その他資本剰余金は控除項目とされていないため、自己株式処分差益はその他資本剰余金に計上する。

その他資本剰余金の残高を超える自己株式処分差損をその他利益剰余金から減額することは、資本剰余金と利益剰余金の混同にあたらないか?

その他資本剰余金は、払込資本から配当規制の対象となる資本金及び資本準備金を控除した残額であり、払込資本の残高が負の値となることはあり得ない以上、払込資本の一項目として表示するその他資本剰余金について、負の残高を認めることは適当ではない。よって、負の残高を利益剰余金で補てんするほかないと考えられる。

〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。

〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①
第7回:棚卸資産会計②
第8回:収益認識会計
第9回:固定資産会計①
第10回:固定資産会計②
第11回:ソフトウェア会計
第12回:研究開発費会計
第13回:繰延資産
第14回:退職給付会計
第15回:資産除去債務
第16回:税効果会計
第17回:ストック・オプション会計


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