誰かに話したくなる税金喫茶~おしゃれオフィスに引っ越したいけれど


今年の個人的な目標は事務所の移転です。会計事務所が採用難である昨今、怪しい雑居ビルよりは、ちゃんとしたオフィスの方が若者を採用しやすそうというのが主な理由です。要は中身で勝負できない分は見た目で補おうという作戦。などと考えていたらこのコロナ。今年引っ越すべきか、情勢が落ち着くまでちょっと待つか、悩ましい。

弁護士VS税務署の真剣勝負

新宿二丁目内で引っ越そうと思い物件を探しているのですが、いやぁ、高い。物件情報を見ているだけで心が折れそうです。今の事務所は築50年ほどのマンションですので、いっそ取壊しが決まって立退料でももらえないものだろうか。そうすれば踏ん切りもつくし、懐にも優しい。

立退料というと「迷惑料」のようなイメージがありタダでもらえるような気がしますが、税法上は課税対象となる収入です。ちょっと世知辛い気はしますが、ルールはルールなのでやむなし。しかしその課税上の取扱いを巡って税務署と全面対決をした弁護士さんがいました。その弁護士さんは法律事務所のために賃借していた建物を明け渡したことで受け取った立退料を税負担の軽い一時所得として確定申告をしたのですが、税務署は本業の事業所得と合算されるものと判断。月額200万円ほどの物件でしたから動いた金額も相当に大きく、少しでも負担が軽くなるように戦いたくなる弁護士さんの気持ちは痛いほどわかります。

収入と経費の関連性は大事

弁護士さんは、事業所得とされるべきは本業に係るものであり、立退料はそうでないため本業と合算するのはおかしいと主張したのですが、この一件は税務署の勝利で決着がつきました。

根拠とされたのは「本業の経費を補填するためのもの=本業の収入」という対応関係でした。確かに引越し費用や新しい事務所の備品などは本業の経費としておきながら、それを補填するための立退料は本業の収入とはしないというのはバランス悪いですもんね。立ち退きという負担を和らげるためのお金であるにもかかわらず半額が税金で持っていかれてしまった弁護士さんは気の毒ですが、筋が通ったお話ではあります。

このご時世ですから困った方に対して色々な補助金や給付金が用意されています。そういったものの中にも、のちのち課税の対象とされるものもありますので、一応そういった点も気にしていただきたいところ。

と、こんなお話をしてきたものの今のマンションで立退料をもらえることなどはまったく考えられませんので、自力で物件探しもお金の工面もしなければなりません。この連載もあと2回(?)。それまでにどうにかなると良いのですが…

本稿は、『会計人コース』2020年6月号に掲載したコラムです。

髙橋 創(税理士)
税理士受験講座の所得税法講師、会計事務所勤務を経て、新宿で独立開業。新宿ゴールデン街のバー『無銘喫茶』(http://mumei.co.jp/)のオーナーでもある。『図解いちばん親切な税金の本19-20年版』『フリーランスの節税と申告 経費キャラ図鑑』が好評発売中。YouTubeで『二丁目税理士チャンネル』を運営中。

イラスト・レイアウト:ヨシムラヒロム


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