
新山高一(東京CPA会計学院講師)
【編集部より】
さる11月28日(金)、令和7年度税理士試験の合格発表が行われました。合格発表をうけて、受験戦略を再検討する人、同じ科目の受験に再挑戦する人などさまざまだと思います。
来年の本試験まで、どのように学習計画を立てればよいかなどについて、主要科目ごとにアドバイスを頂きます。本記事を参考に、合格に向けてよりよいスタートを切りましょう!
1 今年度の合格率について
今年の本試験は、昨年の本試験の合格率がやや高かったこともあって、昨年の本試験の合格率に比べて合格率は下がってはいるものの、過去10年間の合格率の平均とほぼ同水準でした。
今年の本試験は、簡単そうに見えて、全体的に細かい取扱いが出題されていたことから、細かい取扱いでいかに点数が取れたかが合否の分かれ目となったと思えました。
2 次回の受験に向けたアドバイス
合格発表を受けて、令和8年度(第76回)税理士試験に向けて再スタートをする人もいるかと思いますが、来年の本試験までの学習をどのように取り組めば良いかをまとめていきます。
① 理論の精度をしっかりと高める
理論問題に関しては、ここ最近の本試験では、基本的な取扱いを解答させる問題や事例形式の問題の取扱いが出題されています。また、事例形式の問題は、
イ 取扱いは分かるものの、どのように解答すれば良いのか分からない問題
ロ 何の規定を解答すれば良いのかは分かるけど、取扱いが分からない問題
ハ 取扱い自体が難しく、何を解答すれば良いのかも分からない問題
のいずれかに分類されます。
この場合に、合格点を取るには、前提として皆が解答できるところで、しっかりと解答出来るかになります。
そのため、「基本的な取扱いを解答させる問題」、イの「取扱い」、ロの「解答する規定」は、解答できることが前提となります。
その上で、さらに点数に差をつけるとしたら、根拠となる規定を、いかに正確に書けているかになるかと思います。一言一句間違えずに理論を押さえろという訳ではありませんが、できる限り理論の精度を高める学習をすることが重要になります。
② 年内で学習する計算項目を再確認する
計算に関しては、難解な取扱いの取引やいろいろな項目の取扱いを問う問題が出題されることはだいぶ減りました。逆に、出題する項目を絞って、その項目の基本的な取扱いから細かい取扱いを出題する傾向になっています。
ただ、出題される項目は、減価償却や交際費、租税公課、寄附金、受取配当金といった、法人税法の中でも基本的な論点を出題する傾向にあります。年度によっては、年内の学習内容だけで、ほぼ全部解けそうな問題もあります。そうなると、年内で学習する内容も今の試験においては非常に重要となっています。
結果待ちだった受験生は、年内で学習する内容は、おろそかになりやすいので、時間がある今のうちに、個別問題集などで再度確認するようにしてください。
また、出題される項目は基本的なところでも、細かい取扱い(今回の本試験では、保険差益の代替資産の要件等)を出題する傾向にもなっていることから、単に数字を合わせるだけでなく、しっかりと要件や対象資産といったところもしっかりと確認するようにしてください。
③ 問題文を素早く、しっかりと正確に読む
ここ最近の本試験の計算問題では、思い込みで解答すると間違えてしまう項目が多く出題されています。
第74回までの本試験の場合、法人の事業年度が9ヶ月しかなかったり、5月末決算の法人だったり、資本金5億円以上の法人によって完全支配されている法人であったりと、やや特殊な法人の取扱いが出題されています。これに関しては、問題をたくさん解いても対策しようがないため、常日頃から思い込みで解かない意識をすることが大事です。
また、第75回の本試験では、圧縮記帳の細かい要件が問われています。こちらも思い込みで解答すると間違えてしまうのですが、上記と異なり、問題文をしっかりと読まないと間違えてしまう箇所でした。
問題文をじっくりと読めればいいのですが、本番は、時間制限があるため、じっくりと読む時間はありません。いかに素早く正確に問題文が読めるかもポイントになるため、普段の問題でもその点を意識して解いていくようにしましょう。
④ 条件によって取扱いが変わる論点をしっかりと確認する
法人税法では、条件によって、取扱いが異なる取引が多々あります。(例えば、寄附金、給与、交際費など)
どんなときに寄附金になるのか、給与になるのか、交際費になるのかといったその条件の違いをしっかりと確認しましょう。
このあたりの論点は、分かっているつもりが分かっていないことが十分にあります。また、問題を解いて間違えても、分岐点となる要件の確認がおろそかになって、再度解いたときにまた間違えてしまいます。しっかりと、取扱いの分岐点となる要件をしっかりと確認しましょう。
⑤ 近年の税制改正をしっかりと確認する
理論にしても計算にしても、ここ最近の改正論点が出題されています。受験予備校の講義では、5月くらいに最新の税制改正は取扱いますが、年末ぐらいに税制改正の大綱の概要は公表されるため、前もって一通り確認しておけば、改正の講義も余裕が出て、他のことに時間を充てることが出来ます。時間があれば、目を通しておくと良いでしょう。
また、近年行われた税制改正も要注意の論点です。インターネット上で改正のポイントや解説を公開している会計事務所等があったり、経済産業省でも税制改正に関する資料を公表しているため、それも併せて確認するようにしてください。(財務省が公表している解説は、図が少ないため、あまりおすすめはしません。)
3 おわりに
ここ最近の本試験は、基本的な論点から特殊な論点まで幅広い論点から出題されていますが、合否の分かれ目は、基本的な論点でしっかりと点数を取ることです。毎年のように言われていますが、基本的な取扱いをまずはしっかりと押さえることが非常に大事になっています。基本を忘れずに学習していくことが大事であることを念頭に置いて、来年の本試験に向けて頑張っていってください。
【プロフィール】
新山 高一(にいやま・こういち)
東京CPA会計学院卒業。卒業年の翌年に税理士試験に合格し、その後、同校の講師として、主に法人税法を中心に指導を行っている。初学者でも法人税法がわかりやすく理解できるように、日々奮闘している。
★東京CPA会計学院 税理士講座ホームページ

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