まずはココだけ押さえたい! 経理・財務の業務フロー【第5回】経費②(交際費・会議費・旅費交通費の管理)


菅 信浩

【編集部より】
「簿記や財務諸表論などの問題は解けるけれど、実際の業務はどう進むの?」、「監査のために、仕事の流れが知りたい」という方も少なくないはず。本連載では、受験勉強だけでは得られない現場の経理・財務の業務プロセスについて、『業務をまるごと見える化する 経理・財務のフローチャート40』の著者、菅信浩氏に解説してもらいます(全5回予定)。
本連載を読めば、まだ働いたことのない受験生や各試験合格者も、「入社前に知ることができてよかった」、「業務プロセスのイメージがついた」と自信がつくはず!
もちろん、すでに業務についていて、より理解を深めたい経理・財務パーソンにもおすすめです♪

交際費・会議費・旅費交通費の管理って何故別途ルールがあるの?

交際費、会議費および旅費交通費は、私的利用のリスクが高いため個別に注意が必要であり、別途ルールを制定するのが一般的です。
特に交際費(寄付を含む)は、その支出が贈収賄等のコンプライアンス上の問題となるリスクもあるため、従業員の個人的な横領等よりも会社に大きな損失を被らせる原因にもなります。

交際費の管理上の留意点

交際費は、本来経費とすべきでない個人的な支出の申請など不正な経費支出が行われるリスクが高いです。また、贈収賄に関与する交際費支出が行われるコンプライアンス上のリスクも高いです。

交際費は、以下の点に注意して管理する必要があります。

✓事前申請
✓ 法務部やコンプライアンス・オフィサーの事前承認(特に対公務員等)
✓交際費の一覧表管理・分析(同じ相手先に繰り返し接待は×など)
✓税務上の取り扱いのチェック(少額交際費にあたるか)
✓これらを定めたルールの整備

会議費の管理上の留意点

会議費は、交際費ほどではないにしても、本来経費とすべきでない個人的な支出の申請など不正な経費支出が行われるリスクが高いです。通常の金額であれば事前申請までは必要ないかもしれませんが、必要に応じてルール設定が必要な費目です。
会議費として認められるためには、一般に議事録など実際に会議が行われている事実を示すエビデンスを用意することが求められます。

旅費交通費の管理上の留意点

旅費交通費も、本来経費とすべきでない個人的な支出の申請といった不正な経費支出が行われるリスクが高いです。不必要に高額な支出、領収書の偽造等がないかをチェックし、必要に応じてルール設定が必要な費目です。

出張精算は「出張精算書」(図表1)により行い、一定の金額以上の出張には「出張報告書」の提出を義務付け、出張の実在性を確認するために領収書以外に航空チケットの半券のエビデンスをつけさせるなど、通常の経費よりも厳格な管理が必要です。

まとめ

今回の連載で紹介したプロセス以外にも「売掛金残高確認」「棚卸資産の実地棚卸」「固定資産」などなど経理部員や監査法人の新人に割り当てられがちな項目に関するプロセスはたくさんあります。

網羅的に会社の業務を学びたい方や、他のプロセスにもご興味がある方は、拙著『業務をまるごと見える化する 経理・財務のフローチャート40』(中央経済社)をお手に取っていただけるとうれしいです。

更に、もっと深く各業務に必要な内部統制を網羅的に把握したいという方は、拙著『チェックリストでリスクが見える 内部統制構築ガイド』(中央経済社)で抜け漏れなく内部統制を網羅することができます。

本連載と拙著が皆様の業務の参考となれば幸いです。

【執筆者紹介】
菅 信浩(すが・のぶひろ)
上場準備中の不動産デベロッパー(現在は東証プライム上場)にて営業経験を積んだのち、当該会社の上場を契機に公認会計士を目指す。合格後に朝日監査法人(現有限責任あずさ監査法人)へ入所し、100社超の監査業務、IPO支援、JSOXアドバイザリー等を担当。その後、大手総合商社へ転職後、数多くのM&AやPMI、内部統制構築に携わり、現在は台湾の海外子会社にCAOとして駐在。著書に、『チェックリストでリスクが見える 内部統制構築ガイド』『業務をまるごと見える化する 経理・財務のフローチャート40』(いずれも中央経済社刊)。

【バックナンバー】まずはココだけ押さえたい! 経理・財務の業務フロー
【第1回】業務フローを理解するのが大切なワケ
【第2回】現金預金の残高管理①
【第3回】現金預金の残高管理②
【第4回】経費①(全般的な管理)


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