熊取谷貴志(ネットスクール講師)
【編集部より】
直前期になり、より本格的なアウトプットの機会が増えるこの時期、「なかなか点数に結びつかない…」とジレンマを感じている人もいるのではないでしょうか。これまで学習してきた知識を、どうすれば点数につなげられるのでしょうか。
そこで、今回はネットスクール講師の熊取谷貴志先生に、この時期によくある受験生の典型的な悩みを挙げながら、それらへの具体的なアドバイスを頂きました。本試験までの学習においてぜひ参考にしてください!
直前期によくある典型的なお悩みとは
8月の税理士試験に向けて、5月以降の約3ヵ月間は「直前期」という位置づけになります。4月まではテキスト等のインプット学習が中心であった受験生も、5月以降は答案練習や模擬試験など、本試験を想定したアウトプットの機会を増やしていく必要があります。
ただ、答案練習等を行っていても、「思うように点数が取れない!」というお悩みを持つ受験生も多いと思われます。そのような場合、どの点に注意して今後の答案練習等に取り組んでいけばよいのでしょうか。
受験生によくある典型的な【お悩み】について、いくつかアドバイスをしていきたいと思います。
【お悩み①】出題内容が分からないことばかり...
【お悩み②】解くのに時間がかかってしまう...
【お悩み③】ケアレスミスが多い...
【お悩み④】問題の取捨選択がうまくできない...
【お悩み①】出題内容が分からないことばかり...
答案練習等の問題を解こうと思っても、難しい内容ばかりでどこから手を付けたらよいのかが分からない!と感じる受験生もいるでしょう。
確かに簿記論では難しい内容も出題されていますし、また問題文のボリュームも非常に多いため、その分量を見ただけでも「すべて難しい!」と感じがちです。
解答可能な箇所を増やしていきましょう!
簿記論の「すべての出題内容が難しい」ということはあり得ません。必ず「基本的な内容」や「手間をかけずに解答できる内容」が出題されています。
出題されている問題は全部解こうと思わなくてよいのです。まずはその中でも「解答可能な箇所」に絞って、1つ1つ解答していくことができるようにしましょう。
基本的な内容を中心に再確認を!
そのためには、例えば現金預金、有価証券、固定資産、引当金など、繰り返し出題される基本的かつ重要な論点を中心に、(難しい出題内容でない限り)確実に解答できるような状態にしておくことです。
もしインプット学習が不足していることが原因で解けないのであれば、早急にその内容をしっかり再確認しましょう。
【お悩み②】解くのに時間がかかってしまう...
問題文のボリュームが多いため、どうしても解くのに時間がかかってしまう!と感じている受験生は多いと思われます。
下書きの方法を工夫してみましょう!
ある程度の下書きは当然に必要です。ただ、丁寧に下書きをすれば確実性は上がりますが、その代わり下書き自体に時間を要してしまうことも考えられます。下書きをしなくても解答できる箇所もあるはずなので、そのような箇所は直接解答したほうがよいです。
特に仕訳の下書きなどは最小限にとどめておきましょう。科目の集計量が多い場合には計算用紙のT字勘定を利用したほうがよいですが、それほどの集計量でなければ問題文の試算表の数値に直接「+-」するような記入をしたほうが時短につながります。
計算用紙ではなく、できる限り問題用紙の余白に最低限の下書きをすることをおススメします。
考え込んでいませんか?
出題内容の中には、どうしても判断に迷うような内容があるものです。しかし、そのような場合でも本試験の最中にあれこれ迷ったり、考え込んだりしている時間はありません。考え込む時間こそが最大の時間のロスとなります。
迷うような問題であれば、そもそも「難問」である可能性が高いです。「難問」であればいったん飛ばしてしまえばよいのです。または、できそうだけど少し迷うようなことがあれば、「最初に思った通りの方法で」解答するようにしてみてください。
【お悩み③】ケアレスミスが多い...
ケアレスミスは受験生共通の悩みどころ(課題)だと思います。できることならケアレスミスは完全になくしたいところですが、現実にはそのようにはいかないでしょう。本試験でも何らかのケアレスミスはしてしまうはずです。
また、ミスを恐れて慎重になり過ぎて、かえって手つかずの箇所が多くなってしまった!という失敗の経験はありませんか?
少々のミスなら許容範囲です!
ケアレスミスはおそらく完全にはなくなりません。少々のミスは付き物なのですから、そのミスは仕方がありません。ただし、そのミスは最小限にとどめるようにすることが大切です。
本試験の合格点が60点であれば、70点分の解答をしておきさえすれば、10点以内のミスは許されるのです(と考えましょう!)。
自分のミスの傾向をつかんでおきましょう!
問題文の読み間違い、電卓ミス、転記ミス等々、よくあるミスの傾向というものが思い当たるのであれば、その傾向をしっかりつかんでおいてください。
そのためには必ず、問題を解いた後に間違えた箇所を確認し、その間違えた原因をしっかり分析しておくことが大切です。この分析が疎かであると、同じようなミスを繰り返してしまうものです。解きっぱなしは絶対NGです。
【お悩み④】問題の取捨選択がうまくできない...
「簡単な問題から手をつける」「難しい問題は後回し」ということは頭では理解しているものの、その取捨選択がうまくできず、ついつい難しい問題に時間を割いてしまうという受験生もいるでしょう。
まずは問題全体にしっかり目を通すこと!
「問題に目を通す」ことにより、どの部分が簡単で、どの部分が難しいかを事前に把握しておくことが大切です。
また、税理士試験は問題文自体が「長文」ですので、日頃から「問題に目を通す」訓練をしておくことが有効です。読む訓練をして、必要な情報(難易度の把握、重要となる資料など)をスムーズに読み取れるようにしておきましょう。
取捨選択の判断は適切でしたか?
解き終えた後の見直しでは、出来なかった箇所のチェックをすることも当然に大切ですが、同時に「手を付けた箇所の判断は適切であったか?」「各内容に費やした時間の配分は適切であったか?」についても、必ず見直しを行うようにしてください。
「標準時間」を確認しよう!
また、必要な対策としては、例えば現金預金、固定資産、有価証券、引当金などの各論点の問題を集中して解いておくことにより、「通常レベルの出題内容」であればどれ位の時間を要するか、その「標準時間」を確認しておきましょう。
そうすることにより、特に総合問題の中で今回問われた内容が「通常レベル以上」の内容であると感じたら後回しにしたほうがよい場合があります。「通常レベル」をよく知っておくと、それを基準にして問題の取捨選択の判断ができるようになります。
<執筆者紹介>
熊取谷 貴志(ひしや・たかし)
中央大学商学部経営学科卒業。
平成11年度(第49回)税理士試験・簿記論合格、平成13年9月より簿記論講師を務める。
現在はネットスクール税理士講座にて主に簿記論講師を担当。簿記論・財務諸表論を中心に教科書等の教材開発および受験指導を行う。『税理士試験 簿記論 直前予想問題集』(中央経済社)の問題作成なども担当。
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