【編集部より】
夏休み明けから秋にかけてのこの季節、公認会計士試験の受験に挑戦しようと考える高校生・学生も多いのではないでしょうか。
気合十分な今こそ知っておきたい、スタートの段階で大切にしておきたい姿勢とは?
そこで、CPA会計学院を運営する国見健介先生(CPAエクセレントパートナーズ・公認会計士)にお話を伺いました。
後編は、合格後のキャリアについてです。
公認会計士のキャリアは無限大!
―前編では受験勉強の「はじめの心構え」を伺いました。公認会計士試験は学生層の受験生が中心で、在学中合格を目指す人も多いですが、合格後のキャリアに特徴はありますか。
国見先生 極論を言うと、在学中に合格したとか、25歳で合格したということでキャリアの選択肢にはそこまで影響はありません。
ただ、30歳を超えてくると若干狭まる可能性は正直ありますが、それでもキャリアはその先に50年ありますよね。
たとえば、プロ10年目の野球選手とプロ12年目の野球選手を比べた時、2年程度の年数の違いはあまり関係ありません。
公認会計士試験の合格は、いわばプロ野球でいうドラフト会議で指名された状態。そこからどれだけ本気で仕事に取り組むかがプロとして大事なことです。
ただ、「在学中合格」はプロ野球のドラフト1位指名に似ていて、周りからも「優秀な人」と評価されるのでスタート時点でチャンスに恵まれやすいかもしれません。
しかし、チャンスが与えられても試合で活躍できなければ、その評価はすぐ下がってしまいます。逆に、ドラフト会議にギリギリで指名されも、結果を出せれば、評価は逆転できます。
むしろ在学中合格で注意してほしいのは、謙虚さを失って、横柄な態度をとってしまうことです。「ドラフト1位だったけどプロとしての努力も足りず輝けなかったね」という評価になりかねません。
公認会計士試験は、正しいやり方をすれば本来は誰でも受かる試験ではあります。しかし、「絶対に受かるという試験ではない」という不安に対して、在学中に合格することでメンタル的によい影響を与えられるという意味では素晴らしいものでしょう。
ただ、25歳でも受かれば何の問題もない試験なので、そこは誤解しないようにしていただきたいですね。
―合格後のキャリアのほうが長いということですね。
国見先生 国家資格のうち、公認会計士というのは良くも悪くも独占業務をしている人が半分もいない資格です。
たとえば、弁護士であれば弁護士業務、医者であれば医療行為のように、他のほとんどの士業も含めて、その多くがその資格の独占業務をします。
対して、公認会計士は監査のほかにも、CFOやコンサルをしたり、税理士登録をして税務をしたり、それ以外にもVC(ベンチャーキャピタル)、ファンド、金融機関、経理・財務の仕事といった形で、専門知識を活かして活躍するフィールドが圧倒的に広いんですね。
無限のキャリアが広がっているところが、公認会計士の一番の魅力だと思います。
いろいろなジャンルで活躍する会計士に会いに行こう!
―受験勉強中はなかなかそのキャリアの広がりに気づく機会は多くないかもしれません。
国見先生 変化する時代の中で、常に、公認会計士が活躍できるフィールドが残り続けたり、どんどん新しく出てきたりするでしょう。
だからこそ、公認会計士試験に受かった後で、一番にしてほしいことは、「いろいろな分野で活躍している公認会計士に一人でも多く会いに行く」ということですね。『会計人材のキャリア名鑑』を読んでいただくだけでも、キャリアの幅広さがわかるはずです。
実は、ほとんどの合格者が公認会計士のキャリアの世界観に気づいていません。まずは大手監査法人に入って、そこでプロとしての土台を築くというケースが大半ですが、ただそこで日々仕事だけを頑張っていると、公認会計士のキャリアの幅のイメージが広がりません。
―合格後を見据えると勉強のモチベーションも上がりますね。
国見先生 合格後は、目の前の仕事を本気で取り組みつつ、キャリアの世界観を広げて、自分が一番楽しいと思えるキャリア、そして自分の特徴や個性が活かせるキャリアをぜひ見つけていただきたいですね。
「正解のキャリア」なんてありません。
ただ、どの士業よりも「活躍の場が広い」ということは公認会計士の一番の魅力なので、そういった視点を大事にしていただきたいと思います。
【お話を聞いた人】
国見 健介(くにみ・けんすけ)
公認会計士/CPAエクセレントパートナーズ株式会社代表取締役
1978年東京都生まれ。1999年公認会計士試験合格、2001年慶應義塾大学経済学部卒業。2001年9月にCPAエクセレントパートナーズ株式会社を設立し、代表取締役就任。2003年1月公認会計士登録。CPAエクセレントパートナーズが運営するCPA会計学院は、2022年公認会計士試験において合格者数606名を輩出し、全合格者1,456名の内、合格者シェア41.6%を達成している。これまで20数年にわたり、1万人以上の会計士受験生から相談を受けた経験に基づいて確立されたメソッドとその実績には、多くの受験生から厚い信頼が寄せられている。
主な著書に『公認会計士の「お仕事」と「正体」がよ~くわかる本』(秀和システム)、『親子で目指す公認会計士受験ガイド』、『一生モノの「学ぶ力」を身につける』(ともに中央経済社)がある。