春からの会計系資格スタートガイド【税理士】後編


【編集部より】
新年度が目前のこの時期、「今春から資格取得を目指そう!」と考えている人も多いのではないでしょうか。とくに、就職や転職を念頭に会計系資格に興味を持つ人もいるはずです。
そこで、「税理士になりたい!」と考える人のために、「何」から始め、「どこ」を目指して学習スタートすればよいのか、資格の大原講師の野田朋代先生(簿記論・財務諸表論担当)にアドバイスを頂きました。
前編ではスケジュールと学習方法について、後編ではモチベーションについて伺います。

春から目指す場合のモチベーション管理はどうする?

編集部 前編ではスケジュールと学習方法について伺いましたが、春からスタートする場合、学習期間が長くなるがゆえに、モチベーションの維持は大変そうですね。

野田先生 そうなんです。そこは課題ですね。その分、「今どのくらいの位置に自分がいて、今後どうなっていくべきか」という道筋やビジョンをきちんと示して、学習スケジュールを組む必要があります。

専門学校であれば、ミニテストや答練が必ず実施されているので、そこを短期的な目標にして進めるといいですね。

編集部 他に、たとえば簿記1級の取得を途中の目標に設定するのも一つでしょうか。

野田先生 1の数字が好きで1級を取りたいという人もいますし、そのゴールも素晴らしいことです。けれども、最終目標が税理士であるなら、それよりも税理士試験に直結した対策をとったほうが近道だろうとは思います。

合格に近づく人の特徴は?

編集部 モチベーションとして、どんなペースで勉強する人がゴールまでたどりつきやすいという特徴はありますか。

野田先生 スタート時期に関わらず、「周りに流されない人」ですね。それと、「習慣化できる人」です。

5月開講の場合、9月スタートに比べて時間があるから、その分できることはいっぱいあります。しかし、いくら時間があっても、それをきちんと計画を立てて、実行していくことが重要ですね。

そのためには、学習を始める前の段階で、「勉強を習慣化」しておくことです。具体的には、1日、1週間、1ヵ月単位で自分の使える時間の管理をまずはしっかり確認しておくといいでしょう。

たとえば、働きながら受験勉強をする方であれば、朝に勉強する習慣をつけておくとか、学生であれば、学校の試験がいつあって、授業を何単位くらいとるのか、といったようなスケジュールや自分が使える時間を確認しておきます。

また、受験専念の方であれば、勉強に使える時間があるからこそ、逆に、ズルズルと甘くなりがちなので、どういうスケジュールで1日を過ごすのかを考えて、習慣化しておくといいですね。

「時間を管理する」という練習をしておくと、授業が開始してからも、スタートダッシュができ、よい勉強環境をつくれると思います。

本格的な授業が始まる前の「土台作り」

編集部 授業が始まってからではなく、先に習慣づけておくということですね。

野田先生 そうです。たとえば、朝早く起きて「本を読む」という習慣でもいいし、簿記3級を復習しておくというのも土台作りに役立つでしょう。

税理士試験の会計科目は、基本的に簿記3級の知識がとても重要なので、しっかり身についているとスタートが全然違ってきますし、ゆくゆく応用期にも差がついてきますね。

ただ、注意が必要なのは、「3級の問題が解ける」ということと、「理解できている」ということは違います。3級の検定に合格するために、「問題さえ解ければいいや」という勉強をしていると結構つまずきやすいんですよね。

なので、簿記3級にすでに合格している人であれば、問題演習よりも「教材の熟読」を何度か繰り返して、テキストに「参考」としてまとめられているような内容も合わせて読むことをお勧めします。

その時には理解ができなくても、本格的に税理士試験の勉強が始まった時に「あ、そういうことか!」とつながる瞬間が出てきたりすると思います。

編集部 テキストを何回か熟読することで、問題を解いているときとは違う知識が頭に入ってくるんですね。

野田先生 その通りです。財務諸表論の理論ではよく「暗記、暗記」と受験生は思ってしまいますが、やはり「理解」が重要なんです。そこで、理論テキストを熟読することが、理解につながってきますし、計算対策も同じことがいえますね。

編集部 簿記3級の勉強と比較すると、これから始める税理士試験の勉強は、「量」が全く違ってくると思います。「これくらいで合格できるだろう」という感覚は決して数値化できるような話ではありませんが、比べやすい例えとして、簿記3級の成功体験をもとにすると、税理士試験は何倍ほどの勉強量になるでしょうか。

野田先生 あえて言えば、5倍では少ないですね。「10倍以上」かもしれません。もちろん、個人差があるので、一概には言えませんが、それくらいの心づもりが必要です。

人それぞれいろいろな成功体験がありますが、簿記3級では単に問題量をこなして合格できたという成功体験であれば、それは一度捨てたほうがいいと思います。

そうではなく、これから始める税理士試験の勉強では、テキストの隅から隅までをじっくり読んで理解をするといった勉強が今後は必要になります。

つまり、今までは覚えて使っていた計算の算式が、次は「なぜその計算をしなければいけないのか」ということを財務諸表論の理論で勉強しますし、それが理解できていると簿記論の応用問題もスムーズに対応できるということになります。

編集部 当然、勉強の「質」も違いますね。

野田先生 なので、はっきり言うと、問題量をこなして合格したといった経験であれば、成功体験を引きずらないほうがいいかもしれませんね。それよりも、先ほどお話したような、勉強の習慣化を早めに初めて、ウォーミングアップをしておくほうがいいです。

もしこれまでの勉強で良かった習慣があるなら、その成功体験は捨てずに活かすといいですね。たとえば、私自身の経験では、「暗記カードを使って英単語を覚えたのがよかった」などですね。ほかにも、スマホに録音して覚える方法がよかった、という人もいるでしょう。そういう成功体験はどんどん活かすといいと思います。

春から始めるとゆとりがある分、習慣化などの事前準備をしてよいスタートを切っていただきたいです!

――ありがとうございました!

【お話を聞いた人】
野田 朋代(のだ・ともよ)

資格の大原 税理士講座講師
税理士の先生と一緒に仕事をしたことをきっかけに、税理士試験の勉強を開始。働きながらの勉強で挫折しそうになったときに、熱心に励ましてアドバイスしてくれた先生のおかげで合格。自分と同じように困っている受験生に、合格の喜びを感じていただきたいとの思いから、簿記論・財務諸表論の講座を担当。「解けるようになったよ!」「合格したよ!」の笑顔が見たくて、現在も大原簿記学校で勤務中。
資格の大原 税理士講座ホームページ


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