
渡邉圭(千葉商科大学商経学部准教授)
第75回簿記論は受験者数18,466名、合格者2,058名(合格率11.1%)でした。この結果を踏まえて点数別に今後の学習計画についてアドバイスをします。
2025年11月28日時点では、各専門学校で公表されている解答速報で計算した自己採点平均で55点~59点以上の学生から合格の報告を受けています。
国税庁HP
https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/shikenkekka/75/pdf/0025011-071-15.pdf
1.合格者または科目合格者の方
合格おめでとうございます!!!
官報合格の方へ
全科目の合格が揃った方は、長い税理士試験がようやく終わりましたね。
受験勉強をはじめたときと現在では家庭、学校、職場の環境に変化もあったのではないでしょうか。
税理士として、顧客や社会へ貢献ができるように、改めて実務的な視点から租税法、財政学を学び理論を深めてください。
科目合格の方へ
科目合格者の方は、これから財務諸表論または税法の学習に入ることになります。
今年の9月からすでに学習をはじめている方も多いと思います。
専門学校の講座を選ぶときは、学習しやすい受講形態(通学・通信)なども合わせて検討しましょう。
財務諸表論の学習をはじめる方へ
資料通信などを利用して独学を中心に財務諸表論を学習される方は、図表1の学習計画を参考に、自身の生活スケジュールに合わせて計画してください。

*2 計算問題集・理論問題集は市販されているものを購入して学習を進めてください。模試に関しては専門学校が開講している資料通信講座、公開模試を使い学習しましょう。
(出所) 筆者作成。
税法にステップアップする方へ
税法にステップアップする方は、科目の選択と理論の学習に悩まされると思います。
千葉商科大学では、会計科目2科目合格後、消費税法または相続税法のいずれかを学習するように指導をしています。
最近、学部生の税法学習者または合格者が年々増加傾向です。
そこで、私自身も、9月から東京の専門学校に通学し、学生(卒業生も含む)と一緒に、改めて消費税法の受験勉強をしています(消費税法に合格した学生にアドバイスを受けながら、学習を進めています)。
消費税法の例になりますが、合格した学生と私の受験勉強の経験を踏まえて、図表2の勉強の向き合い方で学習方法を検討してください。

2.本試験結果が50点台のケース
財務諸表論と並行して学習または簿記論集中!?
簿記論が再受験となった場合、簿記論と並行して他の科目も学習を進めていきましょう。
他の科目が財務諸表論の場合、上記の図表1の学習計画をベースに、4月のゴールデンウィーク前から簿記論の学習も合わせて復習を開始してください。
簿記論の学習は総合問題集(応用)からスタートして、正答できなかった論点を確認し、再度問題を解いて復習を積み重ねていきましょう。
税法科目を並行して学習計画を検討されている方は、次の点にご注意ください。
所得税法・法人税法・相続税法・消費税法の学習を1月から開始した場合、8月の本試験までに勉強(特に理論のインプット)が間に合わなくなる可能性があります。
また、酒税法・固定資産税・国税徴収法・事業税・住民税のいわゆるミニ税法は、勉強が間に合う可能性は高いものの、合格ラインが高いため、1つのケアレスミスで不合格になるリスクがあります。
この点を踏まえて、税法学習は慎重に計画しながら学習を進めてください。
財務諸表論であれば、簿記論と学習の範囲が重複する論点もあります。
一方、税法科目はゼロベースから学習を開始することになります。
自身の学習環境・仕事の負担・生活を見直して、税法科目との並行受験は慎重に検討ください。
3.本試験結果が50点未満のケース
簿記論1科目に集中して学習!財務諸表論の計算問題も活用しよう!
受験結果が50点未満の場合は、1月から簿記論の学習に集中して学習計画を練りましょう。
具体的には、12月中に昨年の学習計画を見直して合格ラインに近づくための学習方法を検討します。
専門学校の資料通信を中心に独学で再受験を検討されている場合、図表3の簿記論の学習計画を参考に自身の生活スケジュールに合わせて計画を修正しましょう。
財務諸表論の総合問題集(基礎)も有効です。
財務諸表論の内容が簿記論で出題されることもあります。

*2 計算問題集は市販されているものを購入して学習を進めてください。模試に関しては専門学校が開講している資料通信講座や公開模試を使い学習しましょう。
(出所) 筆者作成。
4.まとめ
税理士試験は合格までに長期間を要する試験です。
模擬試験などの点数で一喜一憂せず、課題となる部分の見える化のために模擬試験を演習すると考えて挑みましょう。
「点数が高いから良い」「点数が低いからダメ」というような考え方ではなく、「点数が取れていない部分は復習が必要な論点が見える化された」など問題の発見という考え方に変えることで、復習する学習意欲が変化します。
学習が計画どおり行えず、焦って勉強をすることにならないよう、学習計画は1週間から2週間程度で区切り、予備日を3日程度設けて作成することをオススメします。
本記事が皆さん学習計画の参考になれば幸いです。
プロフィール
渡邉 圭(わたなべ・けい)
千葉商科大学大学院 政策研究科 博士課程 修了(政策博士)
千葉商科大学准教授(商経学部所属)
【指導実績】千葉商科大学商経学部准教授,博士(政策研究)。2012年4月から会計教育研究所(現・会計教育センター「瑞穂会」)に所属し,日商簿記検定対策3級〜1級講座,税理士試験講座(簿記論・財務諸表論)を担当。2019年4月からは基盤教育機構に所属し,上記の対策講座も兼務。2025年4月に商経学部に所属して現在に至る。これまでに,日商簿記1級合格者200名,簿記論70名,財務諸表論45名以上(いずれも所属期間の累計者数)の合格者輩出に貢献している。
| 千葉商科大学 商経学部 商経学部では,伝統と実績を重んじつつ,変化の激しい社会に柔軟に対応する学びにより,実学の真の楽しさ・面白さを追求する。商経学部において,高い倫理観,専門的な知識・技能,幅広い教養を身につけ,所定の単位を修得した学生に学位を授与する。実学は,座学と実践の融合によって体現される。商経学部では,社会人として生きていくために必要な知識,技能,問題発見と分析・解決能力に加え,ビジネス・経済・社会に関する幅広い専門的知識を身につけ,社会の発展に主体的・組織的に貢献する人材の育成に努める。 日商簿記検定や公認会計士,税理士等の専門職に直結する資格取得に向けたサポートが充実。学生一人ひとりの希望に合った支援を行っている。 (HP:https://www.cuc.ac.jp/dpt_grad_sch/fcb/licence/index.html) |











