
ボザイ(山本賢志朗)
【編集部より】
税理士試験直前期にどう過ごすか。独学と通信で税理士試験全科目に一発合格(簿財消法相)し、格闘2024年DEEPで総合格闘技にプロデビューをし、現在連勝中の格闘家税理士ボザイさんにアドバイスをいただきました。
第1回:合格を掴むためのメンタルの整え方
第2回:直前期に向けての食事の管理
第3回:夏場に2時間戦える体の作り方
はじめに
税理士試験の本番が目前に迫るこの時期、多くの受験生が大きなプレッシャーや焦りを感じていることでしょう。
「このままで本当に合格できるのだろうか」「あれもこれもやらなければ」と、不安が頭をよぎるのは、真剣に試験と向き合ってきた証拠です。
しかし、この直前期に大切なのは新たな知識を詰め込むことだけではありません。
これまで培ってきた実力を本番で100%発揮するために、「メンタルの安定」が非常に重要です。
今回は私自身が実践してきた、試験直前期におけるメンタルの整え方をご紹介します。
ぜひ一つでも取り入れて、万全の態勢で本試験に臨んでください!
なぜメンタルが重要なのか?
税理士試験は、膨大な試験範囲と高い競争率から精神的にも非常に過酷な試験です。
特に直前期は、これまでの努力が報われるかどうかが決まる大事な時期。
この時期は特に本番を意識してメンタルを安定させることが、当日のパフォーマンスに大きく影響します。
・焦りや不安は判断力を鈍らせる
ケアレスミスの誘発、問題文の読み間違い、時間配分の失敗など、焦りは実力発揮の大きな妨げとなります。
・ネガティブ思考は自信を奪う
「どうせ無理だ」という気持ちは、思考力や集中力の低下に直結します。
・心と体は連動している
精神的なストレスは、不眠や体調不良を引き起こし、最高のコンディションで試験に臨むことを難しくします。
つまり、税理士試験を制する者は知識の量だけでなく、精神的な強さを兼ね備えた者ともいえます。
直前期に実践したいメンタルの整え方5選
では、具体的にどうすればメンタルを整えることができるのでしょうか。私が意識していた明日からすぐに実践できる7つの方法をご紹介します。
①「完璧主義」を捨てる勇気を持つ
「テキストの隅から隅まで、全ての論点を完璧に…」その気持ちは素晴らしいですが、直前期においては最も危険な考え方の一つです。完璧を求めすぎるがあまり自分の勉強の進捗が悪いかのような錯覚を起こしてしまいます。
【具体的な対策方法】
・やらないことを決める
Cランク論点など出題の可能性が低いところは捨てましょう。「出題されたら仕方ない」と割り切る勇気を持つことが非常に重要です。もしそれが不安すぎてどうしてもできない場合は、理論マスターに掲載してある理論を作文して3行ぐらいに収めてそれを覚えましょう。この割り切りは非常に重要だと思います。
・基本に立ち返る
合否を分けるのは、多くの受験生が正解するA・Bランクの基本論点です。答練や模試で間違えた基本論点を確実に解けるように、何度も時直すことが非常に重要になってきます。
②他人と比較しすぎない
SNSを開けば、他の受験生の「〇〇時間勉強した!」「模試でS判定!」といった投稿が目に入り、焦りを感じてしまうかもしれません。しかし、勉強時間なんて人によって測り方も違いますし、模試の結果も標準をどこに置くかで全く違う結果になります。
SNSは刺激になってプラスに作用することもありますが、意識しすぎることはかえってマイナスに働いてしまうこともあると思うので注意が必要です。
【具体的な対策方法】
・他人とではなく過去の自分と比較する
他人と比べるのではなく、「過去の自分」をライバルにするのがおすすめです。
理論であれば、日々の積み重ねで覚えられた範囲が広がっていることで成長を感じられます。
計算であれば、総合問題を解く際に「前回の自分」と対決してみましょう。解く時間が早くなったり、点数が上がったりすることで自己肯定感が高まります。
自分自身の成長に目を向けると他人は気にならなくなります。
重要なことは自分に勝つこと。
これを繰り返していくことで自然と他人を超えていけるはずです。
③ポジティブな自己暗示をかける
「自分はできる」「ここまで頑張ってきたんだから大丈夫」。言葉の力は絶大です。意識的にポジティブな言葉を発することで、心まで変わってきます。私自身が昔はあまりポジティブ思考ができないタイプでしたが、言葉を発することでメンタルが高い位置で安定するようになった実体験があります。
一見バカらしく見えるかもしれませんが、非常に重要です。
【具体的な対策方法】
・SNSや周りの知人などに「絶対合格する」と言う
私は職場、知人に常に「合格する」と言い続けました。それによってほんとにそう思えるようになってきました。あなたの周りにはこのような発言を聞いて面白くないと思う方もいるかもしれませんが、そんな方はほっとけばいいです。圧倒的な結果を残せば認めざるを得ないですし、それでも認めないのであれば無理して付き合う必要のない方です。
SNSでも同様の効果があります。
これらの発言によって「絶対に合格しなければ」というプレッシャーもかかってきますが、それを跳ね返して本番にたどり着ければどんどんメンタルは強くなっていくはずです。
④生活リズムを崩さない
焦りから睡眠時間を削って勉強に充てている場合は注意が必要かもしれません。睡眠時間が低下するとパフォーマンスに悪影響が出る場合があります。
【具体的な対策方法】
・睡眠時間をまず第一に
最低でも6時間の睡眠を確保していました。人によって最適な睡眠時間があると思いますが、まずは睡眠時間を決めます。それ以上は寝ないしそれ以下にもしない。
さらに本番数週間前は本番の日のルーティンを意識して同じ時間に起き、同じ時間に寝るリズムを作るのが理想です。
・軽い運動を取り入れる
15分程度の筋トレは時間も節約しながら体力の維持に効果的です。税理士試験は一見頭だけ鍛えれば良いと思われがちかもしれませんが体力も非常に重要です。
また筋トレは気分転換にも非常に効果的なのでぜひ取り入れてみてください。
⑤試験当日のシミュレーションをする
本番で慌てないために、本番当日を想定した日々のトレーニングは非常に大事です。予備校に通学できない方は自宅でひとりで模試を解く機会が多く場慣れをする経験がなかなか積めないかと思いますので、今からご紹介する方法を試してみてください。
【具体的な対策方法】
・自宅以外の場所で解いてみる
自宅以外の場所で解いてみるとわかりますが、非常に注意力が下がります。
慣れない机に雑音の多い環境、それらは本番に近い環境とも言えます。環境を変えてみるといつもミスしない論点をミスしたり、解くのに時間がかかったりということが起きます。まさにこれが本番に近い状況です。環境を変えて模試を解いてみるのは大変効果的です。
・オンライン模試
私は朝勉部という勉強仲間がいたので、スマホでweb会議ツールをたちあげ手元を映しながら2時間の模試を解いていました。紙をめくる音、電卓をたたく音など聞こえてきて本番に近いような環境で解くことができたのでかなり効果的でした。
まとめ
今回は、税理士試験の直前期を万全の状態で乗り切るためのメンタルの整え方について、5つの具体的な方法をご紹介しました。
① 完璧主義を捨てる: 満点ではなく「合格点」を目指し、基本論点に集中する。
② 他人と比較しない: ライバルはSNSの誰かではなく「過去の自分」。自身の成長に目を向ける。
③ ポジティブな自己暗示: 「できる」「合格する」という言葉の力が、あなたを強くする。
④ 生活リズムを崩さない: 最高のパフォーマンスは、十分な睡眠と健康管理から生まれる。
⑤ 試験当日のシミュレーション: 本番で慌てないよう事前に準備し、「未知」の不安を解消しておく。
あなたの努力は、あなたが一番よく知っています。その積み重ねを信じて、最後の1秒まで、自分自身の力を最大限に発揮することだけを考えてください。
<執筆者紹介>
ボザイ(山本賢志朗)
学生時代はスポーツ一直線で20代は営業職のサラリーマンとしてキャリアを築く。30代に入ってから、資格の勉強をしようと考え独学で簿記の勉強を始める。簿記の勉強を進めていくうちにその面白さに気づき、経理、会計業界に転職することを夢見る。はじめての日商簿記1級受験で合格し、その合格をきっかけに事業会社経理、会計事務所とキャリアを積み、令和5年に働きながら4年で税理士試験官報合格を達成。現在は税理士法人に勤務。
著書に、『税理士試験全11科目のすごい勉強法』(共著、中央経済社)。