
吉松 加雄(CFOサポート代表取締役CEO)
【編集部より】
4月になり、新入社員が入社する季節となりました。
会計人コースwebでは、フレッシャーズ企画として、大先輩方からエールをいただきました!
これからの新社会人生活のヒントになれば幸いです!
新社会人へ贈りたい2つの言葉
CFOを目指す新社会人の皆さん、新たなスタートおめでとうございます!!
期待と不安が入り混じりながらも、持続的(サステナブル)な企業価値向上の重要な役割を担う自身のCFO像を描き、活躍している姿を思い浮かべ、胸を躍らせている方も多いのではないでしょうか。
新社会人になられて希望に燃える皆さんに、2つの言葉をお贈りします。それは、「あおいくま」と「守破離」です。
「青い熊」!?
「あおいくま」は、40数年前、私自身の新卒の入社式で、人事担当役員からいただいた言葉です。
最初は「あおいくま」を「青い熊」と連想して違和感を覚えましたが、実は「あせるな、おこるな、いばるな、くさるな、まけるな」の頭文字をとった言葉でした。
それは、その人事担当役員自身も入社式で贈られた言葉で、社会人として挫折や失敗に直面したときに助けられてきた言葉として、ご自身の体験を交えた話とともにストンと腹落ちするものでした。
首尾よくいかないときこそ思い出そう
後に複数の大企業でCFOを務めた私も、新卒入社当時は海外志向が強くグローバルに活躍する営業マンを志し、希望にそぐわず長期の職能従事が求められる経理配属となり挫折感から始まる苦難の新社会人のスタートでした。
そのようなこともあり、「あおいくま」には新入社員時代から幾度ともなく助けられ、励まされてきました。
皆さんにとっても、新社会人として会社や職場になじめず疎外感を味わうときや、困難に直面したときなどに思い出すと、きっと鼓舞され元気の出る言葉になると思います。
3年での「守破離」を意識する
もう1つは、能楽師の世阿弥の言葉として伝えられる「守破離」(しゅはり)です。
超一流の能楽師となるための3ステップのプロセス、すなわち「守で芸の基本型をきっちりと修得し」、「破で芸の型を打ち破り」、「離で自分の新たな境地を切り開いていく」を表わします。
時代とビジネスのスピードがいちだんと速まる現代では、1つの仕事の守破離プロセスは各1年の計3年間で完了して、ジョブローテーションしていくのが標準的なキャリア形成に求められるスピードとなってきています。
「守破離」は仕事にこそ活かせる
この守破離を仕事に当てはめて考えてみましょう。
守
最初の守(実務修得)の段階では、経理財務において重要なコンプライアンス遵守の観点から抜け漏れを生じぬよう、上司や先輩の指導のもとで現状の実務修得と課題把握に努めます。
同時にOFF-JT(Off-the-job-training)にも取り組み、ベンチマーク(業務の品質と効率の他社比較)やベストプラクティス(業界の最善事例)調査を行い、次の破の業務改革(BPR:Business Process Reengineering)に備えて業務プロセスのあるべき姿や目標を描きます。
破
2年目の破の段階では、守の段階で描いたBPRプランに沿って、積極果敢に業務革新をもたらすBPRを断行して、その成果を評価します。
離
3年目の離の段階は、BPR完了後の革新的な業務を自身の属人的なノウハウに留めないように標準化、形式知化、マニュアル化を行い、後任者への引き継ぎもスムーズにします。
このような守破離のプロセスを通じてBPRと業務の標準化や、ノウハウの共有ができますので、組織と会社にとっては業務の効率化や高度化が進みますし、個人としては効率的で効果的なキャリアパス形成がWin-Winで進みます。
何が良い方向に転ぶかはわからない
ところで、私が当時この守破離プロセスの考え方を仕事に取り入れたのには、裏話があります。
実は入社前からの希望であった営業部門へ異動したい一心で、取り組んだのが発端でした。
・早く営業に異動できるように、担当の経理業務を速やかに修得してきちんとこなす。
・BPRによる業務効率化を実現して、それを標準化と形式知化するためマニュアル化する。
・その成果が評価され、営業への異動が実現して、守破離で作成した業務マニュアルを活用してスムーズな引継ぎを行う。
というストーリーを狙ったものだったのです。
結果として、異動先は営業ではなく、もう1つの希望であった海外(英国)の経理部門勤務が入社5年目に実現しました。そうした経緯を通じて、以後の加速的なキャリア形成につながっているのです。
おわりに
CFOを目指して新社会人のスタートを切られた皆さん、「あおいくま」と「守破離」も時々思い出し、がんばっていかれることを心からお祈りしています!
改めまして、新社会人おめでとうございます!!
◆メッセージをくれた先輩◆
吉松加雄(よしまつ ますお)
CFOサポート代表取締役CEO。
前ブリジストン執行役専務グローバルCFO、元日本電産(現ニデック)取締役専務執行役員兼CFO。慶應義塾大学経済学部卒業、スタンフォード大学経営大学院修了(経営学修士)。
日本電産(現ニデック)とブリヂストンの兆円企業2社や外資系日本法人複数社、三菱電機の欧米亜の現地法人のCFOを務め、日本におけるプロフェッショナルCFOの草分けの一人として知られる。
ダイヤモンドオンラインでの連載や、月刊『企業会計』等での執筆のほか、講演・セミナー等多数。