事業会社に勤めながら、「副業」で税理士開業する働き方


事業税好き税理士Akko

【編集部より】
士業を問わず、働き方が多様化するなか、大手企業に勤めながら、副業で税理士として開業するという道を選ぶ、事業税好き税理士Akkoさん。
なぜ、副業で開業したのか、そのメリットは何か、逆に大変なことはあるかなどを教えていただきました! 「税理士登録したらどんな働き方がしたいか」を考えるきっかけに、ぜひご覧ください。

なぜ「副業税理士」の道を選んだのか?

皆さんこんにちは。事業税好き税理士のAkkoです。
私は現在、上場企業の税務担当としてフルタイムで勤務しつつ個人で税理士として開業しています。いわゆる副業税理士として、忙しくも楽しい毎日を過ごしています。

なぜ副業税理士として働いているかというと、特に大それた理由はなく、偶然すべての条件がそろったためです。
もともと開業するつもりはなかったのですが、会計事務所から事業会社へ転職するタイミングで税理士試験に合格したこと、転職先は副業が許可されている会社であること、転職先の上司が副業税理士として開業していることなど、環境が整ったので一度開業税理士としてチャレンジしてみようと考えました。

ちなみに、「独立一本(ここでは専業税理士と呼びます)にしないの?」と聞かれることもよくありますが、私がやりたい事はあくまで企業のバックオフィス業務なので、今のところ専業税理士として働くことは考えていません。もちろん将来のことはわかりませんが。

副業税理士として働く理由

専業税理士でなく副業税理士である理由は、今の勤務先での仕事が面白いというのが一番にあります。業務としては会社の税金計算や申告業務、事業部からの税務相談がメインとなるのですが、自分の好きな業界の税務業務を行っているのでとても楽しいです。

特にスピード感のある業界なので新しいサービスが日々生まれており、それらの税務上の取り扱いを検討したりしています。前例がなく、正解があるものではないため、仕事自体はとても大変ですが、新しいサービスが生まれる瞬間に立ち会えるのはやはり事業会社の面白いところです。

また、私の勤務先の資本金は1億円を超えているため、大企業ならではの税務論点が出てきます。冒頭に記載した通り、私は「事業税」という税金が好きなのですが、事業税の知識は会社が大きければ大きいほど使う機会が増えます。

自分が必死に勉強して得た知識を発揮できる環境はとても楽しいですし、それだけでなく組織再編や海外取引など高度な税務に触れる機会も多くあります。どちらかというと、手を動かすことより頭を使うことのほうが多いので、仕事としては大変ですが、とても充実した日々を送っています。

副業税理士のメリット

さて、副業税理士のメリットはなんでしょうか。

それはやはり事業会社勤めと開業税理士のいいとこ取りができるところだと思います。それぞれ良いところはたくさんありますが、具体例を挙げると以下のような感じでしょうか。

「事業会社勤め」の良いところ
・自社の成長や、サービス開発などに関われる。
・福利厚生がきちんとあり、毎月お給料がもらえる。
・多少の失敗は許されるので、ある程度チャレンジができる。

「開業税理士」の良いところ
・経営者との距離が近く、自分自身が経営者として判断する機会も多い。
・自分の頑張りと売上が直結する。
・顧客や仕事を選べる。

上記に挙げたものは、本来であればトレードオフになってしまうものばかりです。勤め人はある程度会社に守られていますが、開業税理士のような自由度はありません。開業税理士はある程度自由に仕事ができますが、毎月の安定した収入は確約されていません。

その点、副業税理士であれば、安定した収入を得ながら自分の実力でさらに収入を増やしてみるのもよいでしょう。会社員として社内でチャレンジしつつ、経営者としての視点を学ぶのもよいでしょう。

事業会社で得る知識と税理士業で得る知識は直結するものも多くありますが、直結しないものもあります。ですが、その直結しないものにより視野が広がり考え方に奥行が出て、人として税理士として少し深みが出るように思えます。

また、将来の選択肢が増えるというのも大きいなメリットです。副業とは言え開業税理士ですので、専業税理士として働くハードルが格段に下がります。環境を変えたいと思ったとき、今までは転職するしか方法がなかったわけですが、それに加え、専業税理士という道を選択することができます。

このように選択肢が1つ増えるだけで、心にゆとりが出ます。どうしても会社では周りの目や評価を気にする部分ありますが、「無理なら税理士業でやっていけばいいや」という割り切りが生まれ、随分働きやすくなりました。

副業税理士のデメリット

デメリットというより、一番大変なこととしてはシンプルに時間が足りないことです。フルタイムで勤務している場合、税理士業は終業後や土日を使って行うため、時間的な制約はどうしても発生します。

また、税理士という仕事は業務をこなすだけではなく、知識のアップデートも必要です。副業税理士の場合、勤め先では使わないような中小企業や個人の税金についての知識もしっかり拾っていかなければいけません。そのため、個人から大企業まで、常に広範囲の税務トピックに対してアンテナを張っておかなければなりません。

あとは、収入面でしょうか。私自身、勤務先からいただくお給料に対して不満はありませんが、労働時間を加味するとやはり専業税理士として働く方が稼ぎは良いと思います。ですので、「稼ぎたい!」が目標の方は開業一本でゴリゴリ稼いでいただくのがよさそうです。

副業税理士に向いていない人・向いている人

ここは賛否両論あるかもしれませんが、「将来的に専業税理士でやっていきたい」と思っている方には、私は副業税理士をおすすめしません。
なぜなら、専業税理士と副業税理士では成長速度が圧倒的に違うからです。

「退路を断つ」ではないですが、やはり専業税理士の先生方は私のような副業税理士に比べて覚悟が違います。私の周りに同時期に開業した仲間たちがいるのですが、短期間でいろんな仕事を受けてどんどん成長しています。

それに対して副業税理士は、やはり勤務先の仕事がありますので、ある程度、税理士業の仕事はセーブすることになります。この世界では「数をこなすこと」が何よりも成長につながりますので、ここで税理士としての実力の差が大きく出てくるように感じます。

なので、私個人の考えとしては、将来的に専業税理士でやっていきたいのであれば、1日でも早く専業税理士として独立開業し速やかに軌道に乗せてしまうべきだと思います。もちろん人それぞれいろいろな事情があると思うので一概には言えませんが。

逆に、「勤務先の仕事を大切にしたい」と思っている人こそ、副業税理士を始めてみてほしいと思っています。大変なことも多いのですが、会社の看板ではなく自分の名前で仕事をすることにより責任感が生まれ、視野も広がります。

自分の署名で申告書を提出するときの緊張感は企業勤めだけでは実感できませんし、これを経験することにより税理士として1つ成長できるように感じています。

副業税理士のすゝめ

企業に勤めて働くことも、開業して働いていくことも、副業として働くことも。人それぞれ向き不向きがあります。なので、どれか1つと限定せずに、いろいろ試して人生の選択肢を増やしていただくというのも良いのではないでしょうか。

副業の環境が整っている方や今後のキャリアを検討されている方、ぜひ副業税理士にチャレンジしてみてくださいね!

【執筆者紹介】

Akko

税理士
高校卒業後紆余曲折あるも、たまたま拾ってくれたIT企業に勤めている中で会計に興味を持つ。日商簿記2級を取得後会計事務所に転職。いくつかの職場を転々としながら試験勉強を続け2021年官報合格。現在は事業税の知識を活かすため上場企業で税務担当として勤務しつつ副業で税理士として開業中。天性のジョブホッパーでありファーストキャリアは宅配ドライバー。
アイコンのキャラクター名は「じぎょるんじゅ」
・Xアカウント(@Akko_natsudazei

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