わたしの独立開業日誌 #税理士・西村真衣


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

「私が矢面に立つ!」代々続く税理士事務所とは別に独立開業

みなさんはじめまして。税理士の西村真衣と申します。
大阪船場で開業し、もうすぐ3年になります。
高校1年生の娘と、中学1年生の息子がいます。

私は、父も祖父も税理士という家系に生まれました。

祖父は元税務署職員で、税務署を早期退職して税理士事務所を大阪島之内で開業しました。
1970年の大阪万博の年に阪神高速を支える大阪の名物ビル、船場センタービルが建設されたのを機に移転し、その後父に代替わりを経て、約60年の歴史がある事務所です。

3代目税理士ではありましたが、「父の影に隠れるよりも、自分が矢面に立つ!」という覚悟があり、実家の事務所とは別に自分の事務所を立ち上げました。

現在、独立開業して2年目となります。
ここでは、私の独立開業について書かせていただきます。

プロフィール写真

大阪、繊維の街で社長や税理士に囲まれて成長

私は、3人姉妹の長女として生まれ、物心つく前からたくさんの社長さんや父や祖父の友人の税理士さん方に囲まれて育ちました。
生まれ育った環境からも、税理士を志す理由は存分にあったと思います。

私と父の事務所がある大阪船場は、繊維の町です。
呉服屋さんや、生地屋さん、アパレルショップの聖地で、多くの問屋さんが軒を連ねる船場の町は、物心ついた時から大好きな場所でした。
中でも、おばあちゃんと一緒に顧問先の呉服屋さんへ行くのが楽しみでした。
着物の生地が夢のように綺麗で、お店の方がそれぞれの着物の産地や特徴をお話しして下さるのを子供ながらに聞いて想像していました。

私の名前は「真衣」と言いますが、繊維の町にちなんで、衣服の衣という文字が入っています。
子どもの頃から今に至るまで、お着物もお洋服も大好きで、身に着けるものへの拘りが人一倍強いのは、名前に込められた思いもあるのではと分析しています。

大好きな着物での写真
ドレスを着て撮影することも!

税理士一家の長女であったこと、小さい頃から顧問先の社長さん方にお世話になっていて、恩返しがしたかったこと、船場の町が大好きでこの町で自分も事業がしたいと思ったことから、高校生の頃には将来は士業になりたいと思うようになりました。

税理士試験学習初期は落ちこぼれ。ある時から一気に成績UP!

高校生の頃から士業、できれば税理士になりたいと思っていたものの、数学が苦手でした(学校の勉強自体は苦手ではなかったのですが・・・)。

税理士試験は数字のイメージが強く、大学進学後もなかなか動きだせなかったのですが、資格の学校に相談に行ったところ「基本の四則計算が出来たら大丈夫」と言ってもらえました。
その言葉を信じ、大学4回生の時に簿記3級から勉強を開始し、大学院へ進学しました。

税理士試験勉強開始初期の私は、びっくりするほど落ちこぼれでした。
これまで、それほど勉強が苦手ではなかったのですが、勉強していない訳ではないのに、全く伸びない成績にあらゆる自信が打ち砕かれました。

正直なところ、「こんなに向いていないなら、もっと向いていることに時間を費やした方がいいのでは」と考えたこともありましたが、持ち前の粘り強さで努力を重ねました。

「向いていないなら、人の10倍努力して得意になろう」と決めました。
やはり何事も継続は力なりです。
徐々に成績が伸びるのではなく、ある時すべてが繋がった感覚を覚えた時に、一気に成績が急上昇しました。

途中で学生結婚。妊娠中に初合格するも、子育てとの両立に苦戦

そんな中、大学院2回生の卒業間際に、大学生の頃から付き合っていた今の夫と結婚することになります。翌年2人でお金を貯めて結婚式を挙げ、その5か月後、まさかの税理士試験1カ月前に妊娠が発覚しました。

初めての妊娠、身体の変化に戸惑いながらも、当時の勉強仲間や講師の先生方、家族のサポートのおかげで初合格(財務諸表論)することができました。

その後、第2子である息子妊娠中にも合格(簿記論)したのですが、子育てをしながらの税理士試験チャレンジは本当に過酷でした・・・。

当時は今より、子供を預けることのハードルがあらゆる面で高い社会でした。
専業主婦で外に働きにいっている訳ではなく、収入もない私に、保育園という選択肢はなく、24時間子供と生活をしながら、家事をしながら、隙間時間に勉強する日々でした。

2時間問題なんて、試験本番で初めて解いたわ、という有様でした。

コロナ禍に家族の協力のもと漸く最終合格!

なかなか税法に合格できずにいる中で、子供たちも大きくなり就学しました。
合格しても実務経験がないと税理士登録できないため、上の子が小学校2年生になり、2人とも幼稚園・小学校になじんたタイミングで仕事復帰しましたが、毎日のように習い事の送迎もあります。
育児と仕事に追われる中、勉強時間の捻出は常に課題でした。

そんな中、コロナ禍がありました。
子供たちの学校や習い事がすべてお休みになったのです。
仕事が忙しく、早朝出勤して帰宅も遅く、月の半分近くは出張に出かけていた夫も、週の半分は在宅勤務にシフトしました。
そして、家事や子供たちの勉強をみる役割を担って、私の勉強時間を確保することに注力してくれました。

こうして家族のフルサポートを得て、また、担当のお客様方にも勉強を応援してもらい、2020年、最後の科目消費税法に合格しました。

この時、税理士の勉強を始めて10年以上が経過していましたが、すべてのタイミングは必然なのだと感じました。
無駄なことなんて、本当にひとつもありませんでした。

女性が夢を叶えるハードルがわかるからこそ、その起業を支援したい

合格の翌年、実家の事務所とは別に自分の事務所を開業しました。
そして、開業当初から一貫して「女性の起業支援」に力を入れています。

税理士試験への挑戦を通して、女性が夢を持ち叶えようと行動すると、とんでもなく高い壁が立ちふさがるという事を骨身に染みて実感しました。
そんな私だからこそ、女性特に働くママの気持ちが誰よりもわかる私だからこそ、お手伝いできることが必ずあると思っています。

SNS活用で多くのチャンスをつかむ

女性の起業支援をしたいと考えたこと、子供がいるので毎日のように交流会に参加したりはできないことから、自分の生活の中でできる営業活動としてSNS活用を考えました。

平易な言葉で、税務会計の情報発信や飾らない等身大の姿を発信しました。
慌ただしい日常の中で、思わずクスッと笑える発信を心がけた結果、予想を超えて反響があり、集客という側面だけでなく、多くのチャンスをつかむことができました。

女性起業家さんや士業の集まりに行くと、私のSNSを見て知って下さっていた方がたくさんいらっしゃいます。
まだ開業して2年目にも関わらず、知名度が高いのはひとえにSNS発信をしているからだと思います。

これから

まだ小さな事務所ですが、ゆくゆくは増員して、私1人だけが活躍する事務所ではなく、チームで顧問先様の課題解決にあたれる事務所にしていきたいです。

祖父が始めて父が守ってきた事務所を、時代に合わせて少し形は変わるかもしれませんが、100年続く事務所にすることが目標です。

大手のチェーン店の安定感・安心感も素晴らしいですが、小さな家族経営のお店の温かさも素敵ですよね。

巨大資本のビジネスだけしかない世の中では面白くないと私は思いますので、日本の経済を支える中小企業や温かみのある家族経営の小規模なビジネスや個人事業を営む方々の一番近くでサポートできる税理士のお仕事は本当にやりがいがあるお仕事だと思います。

そして、税理士試験は、時間がかかります。
本当に難しい試験です。

けれど、諦めずに挑戦し続けた先には可能性が広がっていました。

是非皆さんも、諦めずに挑戦し続けて下さいね。

応援しています。

<プロフィール>
西村真衣(にしむら・まい)
西村税理士事務所代表。大阪在住。2児の母。

事務所ホームページ:https://nishimuramai.hp.peraichi.com/
Instagram:https://www.instagram.com/mai_zeirishi/?igsh=MWkwbDhyNWZtNzVwcQ%3D%3D&utm_source=qr
Twitter:https://x.com/zeirishimai

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