【修了考査合格体験記】独立・世界一周を経て2回目の挑戦。合格・不合格を分けた勉強法とは!?


山田智博

【編集部より】
公認会計士に登録するための最終試験である「修了考査」。令和5年度(2023年度)修了考査の合格発表によると、受験者数1,958人、合格者数1,495人(合格率76.4%)とのことでした。
働きながら受験勉強で、また繁忙期もあり思うように勉強時間をさけないこともあるかもしれません。また、受験者数自体が多くないので、情報が限られているという声も聞きます。
では、合格者の方々はどのように学習を進めたのでしょうか。環境の異なるさまざまな合格者の方々に合格体験記をお寄せいただきました(随時掲載)。ぜひ参考にしてください!

はじめに

皆さん、こんにちは。2023年9月まで1年間の世界一周旅をしていました山田智博と申します。

私は、2017年度の公認会計士論文式試験に合格後、2019年より監査法人に入所し、2021年7月に独立、2022年8月から世界一周旅が始まり、帰国後2023年12月の修了考査を受験しました。何とも破天荒な経歴に見えますね(笑)。

ちなみに、帰国後に受けた修了考査は2回目となっており、1回目は2020年12月に受験し、見事に不合格…。そこから独立や世界一周を経て受けた今回の修了考査は、監査から既に2年以上離れていたことや働きながらの挑戦となったため、受験すること自体が非常に億劫でしたが、終わってみれば挑戦することを選んで良かったと心から感じています。

さて、本日の記事では、そんな「一度、修了考査の不合格を体験」し、その後「監査現場から2年以上離れて」、「2回目は試験休みもなく、働きながら」、かつ、「帰国後すぐに試験だったため、準備期間が短い中」で修了考査を無事乗り越えることができた、私なりの経験と知見を共有できたらと考えています。

具体的には、①合格・不合格を分けた勉強法、②時間のやりくり・スケジュールの2本柱で綴ります。

注意になりますが、私の合格体験記は、あくまで、「時間が無くなってしまった方」に特化した内容になります。本来は陥ってはいけない姿ですので、試験まで余裕のある時期にこの記事に出会った方は、私の書く内容よりも予備校のガイダンス講義等で講師が説明している方法に準じて勉強に取り組んでくださいね!

この内容が修了考査をこれから受験する誰かの助けになり、誰かの勇気・やる気に少しでも繋がったらそれほど嬉しいことはありません。

合格・不合格を分けた勉強法

早速、私の合否を分けた勉強方法の違いを紹介します。

まず、結論から。1つ目はズバリ、全科目のテキストを1周以上読んだか、読んでいないか。
2つ目は、試験の感覚を取り戻す時間を設けたか、設けていないか。

全ての科目のテキストを1周しっかり目を通して例題を解いたこと、そして、時間内に問題を解き終われるように答練で練習したこと、これが不合格時と合格時の決定的な違いでした。

当たり前ではあるものの、大事なことなので敢えて書きますが、修了考査の試験では答案に空白を作らないことが最も大切になります。何かしらを書くことで、問いに関連しさえすれば、お情けの配点がもらえるからです。

しかし、流石に問いに全く関係ないことを書いて埋めても、残念ながら1点も貰うことはできません。空欄は言わずもがなです。

テキストに目を通し、例題を解くこと

この空欄を埋める行為に際して、最も役立ったのは、修了考査に向けてテキストに目を通した時間だったと私は認識しています。

というのも、1回目の試験では、「答練を解いていれば受かる」という、都市伝説を信じていた私はひたすら答練だけを周回して本試験を迎えるという愚かな行為をしました。その結果、分からない問題にぶち当たった時に、何も書きようがないという現象に陥ってしまったんです…。

書きたいけど、何も書けない。でも何かしらは埋めないといけないという焦りから、記憶の奥底を刺激して、振り絞って何とかペンを走らせるものの、このやり方では時間が全く足りなくなります。

実は、1回目の試験の時、経営のIT部分と職業倫理は論文の試験範囲外だったため、この2科目はテキストに目を通していました。結果、この2科目に関しては空欄を作らずに答案を作成でき、かつ、返ってきた成績も合格素点以上のBとAだったんです。

やはり、テキストに目を通しておくことで、しっかり答えられるように準備していなかった論点だったとしても、初手は分からないと感じるかもしれませんが、何かを書くための要素が頭の片隅に残っていたりするんですよね。

2回目の試験では、全ての科目のテキストに目を通していたことから、分からないと感じることは多々ありましたが、ほぼ全ての答案を埋めることができ、無事合格できました。

試験の感覚を取り戻す

もう1つ大きな違いとなったのは、修了考査本番前に試験の感覚を取り戻すことです。1回目の試験で空欄が多かったのは、試験慣れが全くなく、時間配分が最悪だったことも大きな要因の1つです。

1回目の試験の際には、答練を周回したと上述していますが、時間は計らずに、問いと解答を読み、電卓を叩くだけでした。

実際に時間を計って、制限時間内に解く、という感覚を少なくとも全科目1回以上ずつ、合計で5回はした方がよいのではないでしょうか。計算がある租税と会計はもちろんのこと、監査も実は時間足りなくなりがちなんですよ。

時間が足りなくなると、空欄が多くなりますし、分からない問題をとりあえず埋めようとしても時間がないことへの焦りで、何かしら書くための要素が舞い降りて来づらくなってしまいます。

とにかく空欄を作らない努力をすることを2回目の試験では意識しました。そのために、テキストに目を通すこと(解答を何かしら書くための要素をストックする)、試験感覚を取り戻すこと(時間内に答案用紙を埋めきるスキル)を短い時間の中で重点的に鍛えました。

私のように、実務経験から離れており、知識に不安があるものの、試験勉強の時間をうまく確保できず、試験直前を迎えてしまった方、ぜひご参考にしてみてください。

時間のやりくり・スケジュール

まず、私が修了考査に向けて本腰を入れ始めた時期は、11月18日です。

そのため、重ねてになりますが、私の時間のやりくり・スケジュールは本試験前に本当に時間がない方が参考にしてください。私のやり方は正直、邪道だと思います。同じような状況の方でない限り、予備校の先生が語る王道のやり方で学習を進めた方が絶対によいです。

さて、修了考査を目前に控えた際ですが、「やばい、1ヵ月しかないし、仕事もあるのか。。。」とかなり焦ったのを覚えています。その中でも、まずは、テキストを読み切るところから始めました。

上述した通り、知識がなければ解答が作れません。ただ、テキストを読んだだけで受かる試験では当然ないため、いつまでにテキストを一通り読み終えるのか、どのタイミングで答練を解いて実際の試験感覚を取り戻すのか、暗記が必要な科目の詰め込みをいつから始めるのか、これらの計画をまずは立てました。

科目ごとにどれくらい時間を費やすかの配分を決定することも大事です。特に、私は諸先輩方の不合格エピソードで、租税法で足切りになるケースをよく耳にしたため、法人税・消費税・所得税の計算は重点的にやろうと決めていました。

私はとりあえず、12月3日(本試験2週間前)までにテキスト(C論点は飛ばし)を読み切る(C論点以外の例題も解く)と決め、テキストを読んでいく中で、よくわからなかったり、理解が薄いと感じたりした分野は講義も視聴しています。そのため、移動時間はひたすらテキストを読んでいましたし、気分転換で行くトレーニングの際には、講義を流して耳で聞くようにしていました。

テキストが読み終わるにつれて、答練が解けるようになったら、早い段階から答練への挑戦もしていました。具体的には、例えば租税法であれば、法人税を一通り読み終えたら、時間を計って答練を解く感じです。監査論であれば、会計上の見積りの監査の章を読み終えたらその内容の答練を探して問題を解くような感じです。

答練を解くことによって、読んだテキストの内容の復習になるように進めたかったからこの方法で進めました。間違えたらもちろん再度テキストの内容を例題を含めて振り返ります。このように進めた結果、いつの間にか試験3日前を迎えていました。

そこから暗記が必要な科目の詰め込みを優先でやりました。具体的には、経営や職業倫理、答練の内容がメインで、そのほか、会計や監査、租税でも一部暗記が必要な個所があります。答練を解き、分からなかった箇所を講義で確認する作業を繰り返していくと、暗記が必要な個所がどんどん分かってきます。その内容に印をつけていたため、3日間の中でひたすら覚えるように心がけました。

そして、予備校の出している答練の内容は、皆が解けるはずだからこそ落とすわけにはいかないと考えていたため、試験前日はひたすら翌日の試験の科目の答練の内容を覚える作業をしました。

まとめると、私の1ヵ月の流れは以下の通りです。

①試験2週間前までにテキストの読み切り&例題を解くことをひとまずの目標設定とする。

②実際には、答練の範囲を読み切れたら答練を解くことを組み込んで、復習がてら答練を解き、試験感覚の取り戻しも行った。

③その結果、テキストの読み切り&例題を解く&答練を解くが終わったのが試験3日前

④残りの2日間は、ひたすら暗記が必要な内容を覚える作業

⑤1日目試験日を含め試験前日は翌日の科目の答練をひたすら覚える作業

試験1ヵ月前~1週間前は、予定はあっても移動時間などはテキストを読む&講義の視聴をし、机に向かう時間が取れたら、答練を解く生活でした。

試験1週間前になると、仕事以外の時間は勉強に全て費やす生活をしました。

最後に

いかがだったでしょうか。

一度修了考査不合格を味わった私だからこそ、合格時と不合格時の勉強の違いにフォーカスして今回の記事を書かせていただきました。

そのため、記事の分量の都合上、割愛している部分も多いですが、修了考査の合格を目指すにあたって何より重要なのは、時間を確保することです。修了考査に関しては、たくさん時間を割いて、用意したにもかかわらず、結果に裏切られたというケースは全く聞きません。時間に余裕のある方は、しっかりコンスタントに試験日まで時間を作って勉強してください。

しかし、私のように何らかの事情で時間が足りなくなってしまって、1分1秒が惜しいとなってしまっている方は、私の記載した内容を参考にしてみてください。

時間がないとテキストに立ち戻るのは時間の無駄に感じてしまうかもしれませんが、そういう時こそ、逆に非常に大事になるのだということを忘れないでください。

修了考査から解放されれば、晴れて今後一生公認会計士を名乗る権利を得ることになります。人生最後の踏ん張りどころ。頑張ってください!
皆さんの合格を心よりお祈り申し上げます!

<執筆者紹介>

山田智博(やまだ ともひろ)

株式会社DKKT 取締役
その他、ESネクスト有限責任監査法人、海成貿易株式会社所属
大学在学中に公認会計士試験合格後、KPMGあずさ監査法人入所。大手商社をメインに監査業務に従事し、法人内の採用プロジェクトでは、各種イベントの企画・講演を担当。2021年より独立、キャピタリスト・キャリア支援・上場支援などに従事し、複数社に関与。2022年に株式会社DKKTを共同設立。その後、1年間の世界一周旅を経て、2023年9月に帰国。世界一周中に食の重要性・日本海産物の魅力を再認識し、帰国後は水産物専門商社にジョイン。


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