【修了考査合格体験記】前職は経理。実務補習の就業年限3年→1年短縮生はどのように対策したか?


じゅんし

【編集部より】
公認会計士に登録するための最終試験である「修了考査」。令和5年度(2023年度)修了考査の合格発表によると、受験者数1,958人、合格者数1,495人(合格率76.4%)とのことでした。
働きながら受験勉強で、また繁忙期もあり思うように勉強時間をさけないこともあるかもしれません。また、受験者数自体が多くないので、情報が限られているという声も聞きます。
では、合格者の方々はどのように学習を進めたのでしょうか。環境の異なるさまざまな合格者の方々に合格体験記をお寄せいただきました(随時掲載)。ぜひ参考にしてください!

こんにちは、じゅんしと申します。令和5年度の修了考査に合格し、合格体験記を書く機会をいただきました。

修了考査の結果は以下の通りです。受験した感覚としてはおそらく合格はできているだろうな、くらいだったのでこの結果は想定外でした。

総合会計監査経営倫理
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私は現在、監査法人に勤務していますが、経理の前職があり実務補習所を1年に短縮しており、大多数の修了考査受験生とは状況が異なります。
そのため、私の修了考査対策がそのまま活きる方は少ないと思います。一方、実際に受験してみて感じた注意すべきポイント、必要な対策等は共通する部分も多いはずですので、そういった内容を中心に書きました。少しでも参考にしていただけると嬉しいです。

勉強スケジュール

修了考査の勉強期間は人によって様々です。早い方は2、3月頃から開始していますし、夏頃からはじめる方(一番大多数だと思います)、試験の2週間前からはじめる方まで様々です。

もちろん早いに越したことはないのですが、2週間程度で合格してしまう方も一定数おり、実際のところ「いつからやればいいの?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

私の実感として、修了考査合格に必要な勉強期間は受験生のバックグラウンドにより大きく異なります。

例えば、会計士受験生時代に財務会計論と租税法が得意科目で、実務でも一通りの科目を経験しているという方であれば比較的短期間での合格が可能かもしれません。
一方、受験生時代は会計学、租税法は苦手だったが他科目でカバーして合格し、新卒で監査法人に入ったが税金まわりの科目を担当した経験はない、という方であれば相当期間の勉強が必要だと思います。
事業会社勤務等で監査の実務経験がないような場合も早めに勉強をはじめたほうが良いでしょう。

私が修了考査に向けて腰を据えて勉強したのは直前2週間の試験休暇のみでした。
ただ、私の場合は、経理時代にIFRSや税務実務の経験があり、会計士試験では財務会計論・租税法は得意科目で、補習所を1年に短縮していて会計士試験や補習所の考査の記憶が新しい、というバックグラウンドだったため、この勉強期間で合格できました(おそらく全受験生の中でもかなり有利な条件だったのではないかと思います)。
IFRS経験がない、あるいは普通に3年かけて補習所に通っていた、という場合であればこの勉強量では厳しかったはずです。

また、短縮だと1年で全てのカリキュラムをこなすことになりますし、補習所の考査は修了考査と密接にリンクしていますので、考えようによっては1月から勉強をはじめていたといえるかもしれません。

ということで、勉強計画を立てる際は自分の状況を把握するのが重要です。「あの先輩は2週間で合格したらしい」という話は全くあてになりません。

勉強方法

修了考査は配点にかなりの偏りがあります。会計・税・監査はそれぞれ300点、経営が200点、法規倫理が100点の計1200点満点ですが、つまり会計・税・監査で900点/1200点なので、この3科目で合否がほぼ決まります。

合格に必要なのは720点(60%)ですから、経営と法規倫理が足切りライン(40%)であったとしても会計・税・監査が200点(67%)ずつあれば合格できますし、逆にこの3科目を落としてしまうと経営・法規倫理での挽回はかなり厳しいです。

中でも会計や税は範囲が非常に広く、試験問題もそれなりに難しいことが多いです。したがって、この2科目の対策が重要で、特に会計士受験生時代に租税法が苦手だったという方は2、3月頃、遅くても夏頃には勉強をはじめることをお勧めします。

私の場合、短縮をしていたので夏までは補習所で手いっぱいで修了考査の勉強どころではありませんでした。お盆頃に予備校の申し込みをし(予備校はCPA会計学院です)、ガイダンスを一通り視聴して9月は答練のみ受験しました。答練の成績が悪くなかったことや、上述のバックグラウンドから「まあ大丈夫だろう…」と思ってしまい、10月以降は特に何もせず、再度勉強を開始したのは直前の2週間、12月の試験休暇に入ってからです。

勉強期間が2週間程度では、答練の回転と苦手分野の講義視聴ぐらいしかできず、試験範囲を網羅的に押さえるといったことは不可能です。そのため、「あそこから出たらどうしよう」という不安をかなり抱えながら受験することになりました。一通り試験範囲を押さえたいのであれば、遅くともお盆休み頃からコツコツと勉強をする必要があります。

また、予備校のガイダンス動画は非常に有用です。CPA会計学院の場合、試験勉強を開始した時期別の推奨勉強方法も案内されており非常に参考になったので、まずはガイダンスだけでも視聴することをお勧めします。

科目別の勉強方法

会計に関する理論及び実務

他の科目も同様ですが、答練を3周しました。また、IFRSや収益認識、税効果(特に回収可能性分類や税率差異)など、会計士試験時代の学習が薄く苦手意識がある部分はテキストに立ち戻り、必要に応じて講義を視聴しました。

会計は試験範囲が非常に広く、短答・論文の財務会計論にIFRSや税効果の回収可能性分類、開示論点が加わるようなイメージです(後者2つは一応会計士試験でも試験範囲ですが実際の出題はほぼないと思います)。2、3年前までは問題の難易度も高かったため、苦手意識がある方は早めに取り掛かった方が良い科目の一つです。

一方、昨年は問題がかなり易しく、試験会場で「勉強したことはなんだったんだ?」と感じた方も多かったのではないでしょうか。以前の難易度に戻らない保証はないですし、いくら簡単でも試験範囲が広いことには変わりないので力を入れて勉強することは必要ですが、出題が読めないので最適な学習プランを考えることが難しい科目です。

ただ、この科目を落としてしまうとダメージが大きいので、昨年の難易度に惑わされず、ある程度の難易度の問題が出ても解けるだけの力はつけたほうが良いでしょう。答練の論点と連結・組織再編、収益認識、税効果あたりを確実に押さえられれば合格水準は超えるはずです。

監査に関する理論及び実務

こちらも答練を3周し、理解が不十分な箇所はテキストや監基報に立ち戻っていました。監査は実務でありそうな状況を提示され、「この場合はどうするべきか?」といった問題が多く、実務経験がものをいいます。

また、答えのほとんどは監基報に載っているため、日頃から所属する法人のメソッドや監基報をしっかり参照しながら仕事をしていればあまり対策をしなくても合格水準を超えるのではないでしょうか。これがベストな学習法だと思います。

一方、なんとなく前期調書や法人ツールをなぞりながら仕事をしてしまっている場合や、事業会社勤務等で監査実務の経験がない場合はかなり腰を据えた勉強が必要ですので、夏頃には勉強をはじめたほうが良いでしょう。監基報は量が多く、また要求事項も非常に細かいので頻出箇所だけだとしても短期間で暗記するのは至難です。

学習にあたっては論文式試験で使用した『法令基準集』が便利でした。『会計監査六法』を自習室に持ち運ぶのは厳しいものがありますが、『法令基準集』であれば持ち運びが容易なので、マーカーを引いたり付箋をつけたりして勉強していました。
私は論文式試験から1年しか経っていなかったので受験時代のものをそのまま使いましたが、修了考査のために最新版を購入するのもありだと思います。

税に関する理論及び実務

こちらも答練を3周しました。また、事業税や相続税、グループ通算税制、組織再編税制、国際税務といった会計士試験で出題されない(あるいは出題が少ない)範囲は一通りの講義を視聴しました。

修了考査で一番の壁となるのはこの科目でしょう。安定して難易度が高く、試験範囲が非常に広いため、苦手な方は早くから対策をはじめないと足切りになりかねませんし、得意だった方でも監査法人では税金にがっつり触れる機会が少ない上に、会計士試験の範囲外の内容も多いということで、油断すると命取りになりかねません。「学習時間の6~7割程度を税に使った」という話も聞きますが、適正な勉強量だと思います。

法人税、消費税は論文式試験並みの問題が出ることが多いので、まずはそのレベルまで戻すイメージで学習を進めましょう。組織再編税制も複雑ですし、理論でも暗記すべきことが多いので早くから対策をはじめたほうが良いです。

事業税・相続税は、難易度自体はそれほど高くないので試験休暇期間から学習をはじめても十分間に合うとは思いますが、特に相続税はほぼ毎年出題されていますので一通り講義を視聴して答練の問題は解けるようにしたほうが良いでしょう(相続税を落とすと非常に辛いです)。

経営に関する理論及び実務

答練を2周しました。経営学はいわゆる経営学にあたる分野が100点、IT分野が100点と出題が明確に分かれており、これらは別科目と考えたほうが良いでしょう。

経営学分野は基本的に各種指標を計算させる問題やコーポレート・ガバナンスコード等が問われます。突飛なものは出題されないので、答練やテキストに記載されている指標の計算方法をしっかりと身につければ大怪我はしないはずです(ただこれも落とすとかなり辛いので、確実に押さえる必要はあります)。

一方、ITに関してはなじみがない方も多いでしょうから、講義を視聴してテキストも一通り見る、といった学習をするのが理想でしょう。配点が低いので試験対策上は答練に出る箇所だけ押さえて税や会計に時間を割り振る、といった戦略もありなのですが、とはいえ全くわからないのはさすがに厳しいので、頻出用語は単語と定義を書けるようにしたほうが良いと思います。

ちなみに、私は10月に応用情報技術者試験を受験しており、その知識がほぼそのまま使えたためIT分野の学習は答練を解く程度しかしていませんでした。確実に力はつきますが、修了考査対策という観点では、どう考えても応用情報の学習時間を他科目に回したほうが良いので全くお勧めしません。

公認会計士の業務に関する法規及び職業倫理

答練を3周し、倫理規則やテキストで頻出と思われる箇所を通読しました。

配点は低いですが意外と範囲が広く、この科目で足切りを食らってしまう人が毎年一定数いるようですので油断ならない科目です。以前は倫理規則を通読するという勉強法が有効だったようですが、改正により分量が大幅に増えとても通読できるような量ではなくなっています。主要部分を通読し頻出用語とその定義は確実に書けるようにする、といった対策が必須でしょう。

また、実は修了考査の問題は補習所の考査とリンクしていることも多いです。法規倫理分野の考査はおそらくJ1のはじめ頃だと思いますが、考査の問題を引っ張り出して解いてみるのも有用だと思います。

3年→1年短縮の短縮生の修了考査対策について

3年→1年短縮の短縮生の場合はお盆頃からの学習で十分間に合います。というより、補習所のカリキュラムをこなすだけでかなり負荷が高いですし、夏までは修了考査対策よりも補習所を無事修了することのほうが優先順位は上ですので、焦らず補習所の講義・課題や考査の勉強にしっかり取り組むことをお勧めします。

短縮生は学習意欲が高く、かなり早い段階から修了考査の対策を考えている方も多いですが(気持ちはとてもわかります)、修了考査の心配をする前に無事に短縮を成功させられるかどうかを心配したほうが良いでしょう。

また、補習所の考査は修了考査と密接にリンクしています。特に税務考査は1日で全範囲を網羅しなければならないため短縮生にとって鬼門ですが、この範囲がそのまま5ヵ月後の修了考査の試験範囲でもあるので、考査対策をしっかりやることがそのまま修了考査の対策につながります。

この点、早めに予備校の申し込みをして税務の講座だけ税務考査前に視聴してしまう、というのはありだと思います(補習所の講義視聴も必要ですので時間があればですが)。論文式受験時に所得税や消費税を切っている場合は、繁忙期前の2、3月頃から税務の勉強をはじめたほうが良いと思います。修了考査もそうですが、その前段階の税務考査が非常に厳しいはずです。

おわりに

以上が修了考査を受験した所感です。

修了考査は試験範囲が非常に広いにもかかわらず学習時間の十分な確保が難しく、また合格へのプレッシャーもともすると論文式試験よりも大きい試験です。「修了考査の勉強は二度としたくない」という話もよく聞きます(私もやりたくありません)。

私自身がそれほど勉強期間を取っていないタイプだったのであまり偉そうなことは言えないのですが、特に監査法人にいるとただでさえ仕事が忙しく勉強に時間を割く余裕がない上に「2週間で合格できた」、「自分もまだ手をつけていない」といった周囲の声を聞いてしまい、結局直前の学習のみになってしまう、ということもあるかもしれません。

とはいえ、公認会計士試験を突破し実務経験を積んだ人たちの3割程度が不合格になる試験なので、簡単なはずがありません。油断せず、ご自身の状況に合わせてしっかり勉強期間を取ることをお勧めします。

修了考査を受験できるということ自体が、短答式試験、論文式試験、補習所、実務と数年以上の長い道のりを全てこなしたということでもあります。今までの努力を誇りに思いつつ公認会計士になるために最後にもうひと踏ん張り、頑張ってください!

<執筆者紹介>
じゅんし

大手監査法人勤務。新卒で一般事業会社に入社し経理部門に配属され、公認会計士試験の学習をはじめる。専念期間を経て令和4年度公認会計士試験に合格し、実務補習所を短縮して令和5年度修了考査を受験・合格。
・twitter(@junshi_networth
・note(https://note.com/junshi_networth


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