後藤元哉
【編集部より】
国税庁公表の「令和5年度(第73回)税理士試験結果表(学歴別・年齢別)」によると、大学在学中の5科目達成者数は4名(実人員)とのこと。会計人コースWebに掲載した「税理士試験合格体験記2023」にも大学在学中合格者による体験談が掲載され、現役受験生に多くの刺激を与えています。
そこで、今回はそのうちのお一人である後藤元哉さんに、直前期の勉強法についてより詳しく教えていただきました(全2回)。学生受験生はもちろん、社会人受験生にとっても参考になるやり方が満載です!
・前編:効果的な「模試の解き直し」と「過去問演習」の方法とは?
・後編:効果的な「理論暗記」の方法とは?
はじめに
今年2月に、大学在学中の官報合格者として【税理士試験合格体験記】「間違いを恐れずアウトプットを重ね、大学在学中に2年で官報合格‼」を執筆した後藤です。現在は、4月から税理士法人に新卒で入社して社会人になりました。合格体験記を読んでくださった方、本当にありがとうございます。今回は合格体験記の第2弾として、「直前期のおすすめの勉強方法」を紹介したいと思います。
内容は、前編が「模試の解き直しと過去問演習」、後編が「直前期の理論暗記」です。
私が受験生だったら他の人に教えたくないほど効果的な方法を紹介するので、ぜひ試してみてください。
受験生時代の成績
気になる方もいると思うので、はじめに私の受験生時代の模試の成績を公開したいと思います。これは、5月以降の模試の結果をExcelに記録していたので、そのデータから各科目の最高・最低・平均を算出したものです。
なお、「%」は上位から何%に位置していたかを表しています。
■受験生時代の模試の成績■
<2022年度受験>
簿 記 論:最高 1.56% 最低 16.84% 平均 7.18%
財務諸表論:最高 0.60% 最低 11.88% 平均 6.11%
国税徴収法:最高 11.32% 最低 14.34% 平均 13.00%
<2023年度受験>
法 人 税 法:最高 1.39% 最低 18.34% 平均 6.57%
消 費 税 法:最高 0.79% 最低 9.30% 平均 6.29%
この成績についてどう思うかは、皆さんのご判断にお任せします。
模試の解き直しと過去問演習の重要性
税理士試験の合格に必要なものは何でしょうか。私は、「知識」と「テクニック」だと思います。受験経験のある方を除いて、これまでの期間では知識をつけるための勉強がほとんどだったのではないでしょうか。
しかし、税理士試験は知識だけでは合格することはできません。なぜなら、どんなに知識があったとしても、それが答案に反映されていなければ意味がないからです。私は、「知識」を答案に反映させるスキルこそが「テクニック」だと考えています。
受験勉強において、テクニックを鍛えることができるのは、模擬試験と過去問演習のみです。
模擬試験や過去問演習なくして、税理士試験に合格することはできないので、解き直しは必ず行うことをオススメします。
何回解き直すべきか?
「何回解き直すべきか」について、理論と計算に分けて説明します。
まず、「理論の解き直し」はいらないです。ベタ書き理論は、覚えているか覚えていないかだけなので、できなかった場合は該当理論を暗記したほうがよいです。また、事例問題は、私の合格体験記でご紹介したとおり、「1日1題の事例問題」で練習していました。
次に、「計算の解き直し」についてです。計算は、時間内に8割取れるまで何回でも解き直しましょう。予備校の模試は、すべての回を解けば全論点をおおよそ網羅できるように作られています。難易度も本試験レベルなので、すべての模試で8割以上をとることができれば、計算の完成度を大幅にアップすることができます。
受験生の中には模試の問題に全く歯が立たないという方もいると思いますが、あきらめずに5回でも10回でも解き直してください。
このとき注意していただきたいのは、必ず「時間を測る」ということです。また、初見で8割取れたとしても、一度は解き直したほうがよいと思います。
おすすめの勉強法
模試はただ解き直す以外にも実力を向上させるためによい方法があるので、それをご紹介します。2つの勉強方法がありますが、どちらも解き直しよりも時間がかからないので、忙しい方にも実践しやすいものになっています。
ただ、模試の問題の意味を理解して一通り答えが出せる状態のほうが効果的なので、解き直しが終わってから始めることをオススメします。
方法① 解答解説の読み込み
合格体験記でも、テキストの読み込みをオススメしましたが、それと同じ要領で、「模試の解答解説の読み込み」をオススメします。
やり方はシンプルで、解答解説を1ページずつ読むだけです。解答解説の読み込みにより、解答のプロセスを吸収することができます。これは、テキストや問題集などで知識をつけるよりも効果的で、知識を答案に反映させるテクニックも同時に身につけることができます。
解答解説の読み込みを継続することで、一度見た問題は反射的に解答できるようになり、解答プロセスの引き出しが増えるので、初見の問題に対しても解き方を推測できるようになっていきます。
また、予備校の解答解説には、問われた論点の周辺知識も掲載されているので、解答解説を読み込むことで、周辺知識を補強することもできます。
私は各模試について最低3回は解答解説を読むようにしていました。
方法② 解答根拠となる問題文に線を引く
次にオススメする方法は、解答根拠となる問題文に線を引くということです。
ここでの「線を引く」目的は、問題を解きながら重要な部分を見落とさないように線を引くことではなく、解き直しまで終わった段階で、線を引く作業のみを行うことです。
やり方としては、問題用紙を用意して、問題を読みながら解答根拠となる部分のみに線を引き、その後解答と照らし合わせて、線を引いた部分のみで解答が出せるかを評価します。
模試や本試験の問題は、問題文がかなり長いので読むのに時間がかかり、重要な部分を拾うことが難しいです。この方法を行うことで、どこに線を引こうか(どこが重要な部分か)を考える習慣ができて、問題文から重要な情報を拾うことができ、線を引く過程で問題文と接触する機会も増えるので、問題文を読むスピードが上がります。
問題文を正確に早く読むスキルは、税理士試験の合格に必要なテックニックだと思うので、この方法を通じて習得することができました。
過去問でボーダーラインを下回っても落ち込まない
そろそろ過去問を解き始める時期だと思います。過去問演習をするとボーダーラインを超えたか下回ったかで一喜一憂する受験生が多いです。ボーダーラインを超えることは素晴らしいことなので自信を持ってほしいですが、ボーダーラインを下回っても落ち込まないでください。
予備校では、年によって出題の可能性が高い項目は重点的に、逆に近年出題された項目は軽く対策する傾向があります。つまり、過去問のボーダーラインを作り出したのは、その年の受験対策をした受験生といえます。
皆さんは、今年の受験対策をしているので過去の問題でボーダーラインを越えられなくても何も問題ありません。
過去問で何点取れたかを気にするのではなく、ここで紹介した模試の解き直し方法と同様に、事例問題は1日1題の練習に組み込み、計算は時間内に8割取れるまで解き直し、解答解説の読み込み、問題文に線を引くことを実践してください! 落ち込んでいる時間はありません。
(後編へつづく)
<執筆者紹介>
後藤元哉(ごとう・もとや)
2024年3月愛知学院大学商学部卒業、現在は税理士法人に勤務。
大学在学中に2年で税理士試験官報合格。合格科目は、簿記論、財務諸表論、国税徴収法(2022年度合格)、法人税法、消費税法(2023年合格)。受験回数は全科目1回。
簿記論、財務諸表論は1月から資格の大原の通学講座「初学者短期合格コース」を受講し、国税徴収法は3月から資格の大原の通信講座「初学者短期合格コース(1月開講)」を受講。法人税法、消費税法は9月から資格の大原の通学講座「初学者一発合格コース」を受講。
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