公認会計士・論文式試験1位合格者に聞く! トライ&エラーを繰り返して見つけた自分に合う勉強法(前編)


【編集部より】
令和5年公認会計士試験論文式試験の1位合格者はどのような勉強をしていたのか。なぜ、超優秀な成績で一発合格を達成できたのか。そもそもどのようなモチベーションで受験生活を送っていたのか。そんな素朴な疑問を、1位合格者の野村さんにお聞きしました! 小手先の勉強テクニックではなく、トライ&エラーを繰り返しながら勉強と向き合う姿勢は、資格試験受験生全般に参考になるはずです。

Interview
野村準さん(慶應義塾大学法学部政治学科3年)にCPA会計学院新宿校にてお話を伺いました!

目指していたのはボーダーラインより上の「確実な合格」

―公認会計士試験論文式試験の1位合格、誠におめでとうございます! 本試験の手応えと成績通知書を見た時のことを教えてください。

野村さん ありがとうございます! 本試験を終えた後の手応えが実はすごく良くて、合格発表までの3ヵ月の間、合格を確信して過ごしたかったという気持ちもあり、本試験後すぐに自己採点をしました。

すると、自己採点の結果もかなり良かったので、合格は確信しましたし、超上位合格も十分あり得るなとは思っていました。

とはいえ、成績通知書が実際に自宅に届いた時はさすがに緊張もあり、すぐに通知書を見るのは気が引けました。その時、家には母と2人だったのですが、「入ってこないでね」と声をかけて、いったん自室にこもりました。

通知書を机の上に裏向きに置いて一呼吸置き、総合順位とは逆側から徐々にめくっていったのですが、最初に「会計学1位」が目に入り、「あっ、これはいったかもしれない!」と思って、バンッと一気にめくりました。

―成績通知書を見た瞬間はどんな気持ちでしたか?

野村さん 正直、「1位を取ろう」、「上位で合格したい」という僕自身の気持ちよりも、周りからの期待のほうが圧倒的に大きく、本試験でもすごいプレッシャーだったので、「嬉しさ3割・安堵7割」という感じでした。

―1位合格だったことに対するSNSの反響などを見ていると、“とるべくしてとった1位”という印象を受けました。上位合格はいつ頃から意識し始めたのですか?

野村さん 模試で成績1位をとったことがすごく大きかったです。受講していたCPA会計学院では論文式の直前模試が2回行われるのですが、5月初旬の第1回模試で成績1位、7月初旬の第2回模試で成績3位という結果でした。

それまでは、「落ちるかどうかの心配をしたくない」という気持ちが強く、合格ラインが目標だと合格が危ぶまれることもあるかもしれないので、「絶対に何があっても受かるだろう」という確実な合格ライン、いわゆる偏差値で60くらいのラインを目指していて、上位合格までは全然求めてはいませんでした。

―普段の答練から成績もよかったと思いますが、勉強のモチベーションはどこに向けていましたか。

野村さん 「ここから成績が落ちてはダサいな」という気持ちは間違いなくありました。

周りの受験生は、12月短答が終わってから5月の第1回模試に向けて勉強を進めていましたが、自分は3月に行われる他校の論文模試に向けて勉強しました。

論文模試の中では3月の模試がダントツに早い実施なので、照準を1ヵ月以上前倒しすることになるのですが、そこで「受験経験者に勝とう」という目標をいったん置きました。

よく言われることでもありますが、12月短答の後、達成感でモチベーションが下がってしまい、1ヵ月くらいの間、勉強が停滞しがちになることがあるので、3月模試という周りの受験生よりも手前に照準を置いたことで、論文に向けて非常に良いスタートダッシュを切って、差をつけることができたと思います。

そこからは、「さすがに周りにも負けられないな」という気持ちも強くなりました。

野村さんが受講していたCPA会計学院のテキスト

講師が勧めた方法を素直に実践し、勧める理由まで考える

―勉強法についてnoteでも発信をされていますが、全体的な戦略はどの時点で、どういう情報をもとに考え始めたのですか?

野村さん 講師に言われたことはすごく忠実に取り組むほうだと思います。

たとえば、CPA会計学院のガイダンスで講師が「このように学習してください」と言ったら、「なるほどね」と思ってその方法でいったん取り組みます。

その上で、おそらく他の受験生と違った点は、「じゃあ、講師はなんでそれを勧めるのだろう」ということを、自分で考えて、「この科目にはこういう性質があるから、こういう勉強を勧めているんだな。じゃあ、こういう方法でもいいはずだよね」、「もっとこういう方法にしたほうがいいんじゃないか」というトライ&エラーをものすごく繰り返しました。

世間一般ではあまり推奨されないような方法、たとえば「書いて覚えるのは非効率だ」とよく言われますが、それも実際に自分でやってみて、「確かに効果がないことはないけど、やっぱり非効率ではあるな」とわかったうえで、「じゃあ、自分にはこの方法がいいだろう」とか、答練を受けてみて、「この科目はこういう性質だからこういう勉強をするのがいいんだろうな」ということを常に考えて試して、また考えて、思いついたらまたすぐ試すということをしていました。これはかなり工夫した点だったと思います。

―トライする勉強方法として参考にしていたことは何ですか。

野村さん まず講師が紹介している方法が一つです。

それと、仲間うちで奇抜な勉強法を思いつく人がいるので、「なるほど、確かにそういうのもありだよね」とか、逆に「それはナシでしょ」といろいろ話したりしながら、「こういうのもできるんじゃないか」ということは自分で考えていました。

基本的に、楽をするためにいろいろな方法を探していました。

―楽をするためなのですね。もっとストイックな理由なのかなと勝手に想像していました。

野村さん 「1位合格だから、ずっと勉強していた」ということは全然ありません。でも、楽をするためにどうしたらいいかはよく考えていました。

―具体的にはどういうことでしょうか。

野村さん その方法で勉強しておけば他に考えなくていい、もっと言えば、「これさえやっておけばOK」というような方法です。完璧ではないにしろ、間違えていることはないでしょうという感覚のもので、その方法が自分なりに固まれば、そこからはひたすら実践するだけです。なので、楽をするためにというのは「考えなくていい」という意味に近いかもしれません。

公認会計士試験論文式試験1位合格者が実践していた勉強法

―自分なりの勉強法が固まるまでどれくらい時間がかかりましたか。

野村さん ものすごくかかりました。おそらく、1位を取れた第1回模試でも、正直まだ勉強法は固まってはいませんでした。その後、5月末か6月はじめ頃にようやく固まってきた気がします。それまではトライ&エラーをかなり繰り返していました。

―結構ギリギリまで調整するものなのですね。

野村さん そうですね。8月の論文式に向けて、3〜4月頃で大枠は固まってはいますが、そこから細かい調整を入れ、「この方法が意外と通用していないことがあるな」と思ったら変えることもありました。

―その中でも特に良かった勉強法は何ですか。

野村さん 「想起学習」です。アウトプットという表現だと少しざっくりすぎますが、テキストを読んでいるだけだと覚えた気になりがちなので、たとえば問題だけを見て、ちゃんと論証をアウトプットできるようになっているかだったり、友達と問題を出し合って、何も見ずに自分で答えを出せるかを確認していました。

あと、ありがたいことに友達から論点の質問を受けることも多かったので、その質問に答えることでアウトプットの機会を得られていたということもあります。

想起すること、具体的には「何の補助もない状態で学んだことを思い出せるようになること」が大事で、それができないと問題も解けないのでこれはやってよかったです。

公認会計士試験論文式試験位合格者が使っていたペンの色

野村さんが受講していたCPA会計学院のテキストへの書き込み

―他に、勉強ツールでいうと、マーカーペンは2本しか使わないそうですね。

野村さん そうですね。例外的に3本使う教科もありますが、基本的には2色で、オレンジ色と黄色を使っていました。

マーカーを引くことを目的にしたくなかったという面も1つにありますが、同系色のマーカーで見やすく、読んでいて違和感がないという理由が大きいです。

5色を推奨する講師の方もいるので、その科目では最初は5色を使いましたが、トライ&エラーを繰り返して最終的には自分に合っているなと感覚的に思った2色に絞りました。

―書き込みする時のペンにもこだわりはありますか?

野村さん はい、書き込みは最終的には「ブルーブラック」という色に決めました。

―青ペンにもこだわりがあるのですね!

野村さん そうですね。当初は黒色や普通の明るい青色のペンを試したのですが、いろいろと試した結果、青色でも暗めのこのブルーブラックが一番見やすくて、個人的にはこの色のチョイスは正解でした。

なので、学習初期のテキストのメモ書きと、後半のメモ書きでは、ペンの色が違うんです。

―試し書きも、文房具屋でちょっと試し書きする程度ではなく、実際のテキストに書き込んで、読み返して試すことをされていたのですね。

野村さん はい。フリクションを使っていたので、色を変えて書き直したこともあります。

フリクションはインクの減りが早いので、よくまとめ買いしていました。文房具屋にも仲間と誘いあって、散歩がてらに行っていました。

受験仲間がいなかったら今の自分はいない

―これまでのお話でも、受験仲間とも良い関係だったことが伝わってきます。

野村さん はい。CPA会計学院の日吉校に通っていて、受験仲間が20人ほどいるのですが、皆すごく仲良くて、切磋琢磨する雰囲気がありました。

特に今年の日吉校はすごく成績が良くて、刺激を受ける仲間が多かったので、負けないように、勉強は意識していました。

―どんなお話をされていたのですか。

野村さん 「どうやって論文式の勉強をしたらいいか」、「こうやってテキストを見ているよ」など、勉強法から問題の解き方まで本当にいろいろなことを仲間うちで話し合っていました。

そういう環境や仲間がいなかったら、今の自分はいないと思っています。自分の受験生活を通してもこの点は強調したいところです。

後編へつづく

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